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木田元『哲学は人生の役に立つのか』PHP新書

2009-08-13 18:55:47 | 哲学・宗教
木田元は80歳を超えた。
哲学は人生の役に立つのか。
老齢の哲学者の答えは、役に立つかどうかという問いなら、多くの人にとっては「役に立たない」ということだ。確かに実利や功利を目的とするなら哲学に答を求めなくてもよいだろう。
しかし、哲学研究者の木田氏にとって、哲学はとても人生の役に立つものだったという。

木田氏は海軍兵学校で終戦を迎えるが、満州から引き上げる家族に会えず、闇市で活躍していたときもあるらしい。海軍兵学校に入るまでもひたすら柔道で鍛錬していたという。体を鍛えた闇屋出身の哲学者というのも珍しい。山形県立農林専門学校で哲学と出会い、それからハイデガーの『存在と時間』を読むために、ギリシア哲学からヘーゲル、ニーチェなどを原書で読んだ。このあたりは木田氏の著書にたびたび出てくるエピソードだが、そこからひたすら『存在と時間』を理解するために生きてきたというのには感心する。

ハイデガーはナチスに荷担してフライブルク大学の学長をしたことで有名だが、それまでも自分の思想を代えて大学で職を得ていたりしたらしい。ヤスパースとの友情の一方で、ハイデガーとハンナ・アレントととの不倫はスケールが大きいというか、よりによってというか、それでもハイデガーの思想の深さはすごいということになっている。恩師のフッサールとの決別やルカーチの「物象化」の借用、メルロ=ポンティへの影響など哲学の周辺のエピソードも面白い。

ニーチェの近親相姦の新たな事実など興味深いが、それがニーチェの哲学に本当に影響を与えたのかというところは、はてな?と思ってしまう。
ちょっと哲学版『週刊 女性自身』みたいな本である。

高史明『現代によみがえる歎異抄』

2007-12-27 23:37:43 | 哲学・宗教
高史明は自分の子どもが自殺したことにより、歎異抄をまた読むようになったという。
この本は宗教専門家でないが、不幸な運命を受け入れた著者による歎異抄の読み方である。そういう背景が実に説得力をもっている。
仏教は合理性だけでは説明できない現代の闇の部分を解き明かすのには向いている。いや、解き明かすというより、闇の部分がどうしてあるのか、それをいかに受け入れるのかを導いてくれるようだ。