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●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい

2016年01月03日 00時00分15秒 | Weblog


asahi.comの記事【裁判員裁判で判決の死刑囚、初の執行 法務省】(http://www.asahi.com/articles/ASHDL33XRHDLUTIL00L.html)と、
社説【裁判員裁判 死刑と向き合う機会に】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p)。
nikkan-gendaiの記事【映画「ふたりの死刑囚」で描かれた検察の“不都合な真実”】(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/172382)。


 《裁判員制度が始まって以来、初めて市民が判断した死刑囚に刑が執行された。死刑の執行は今年6月以来、約半年ぶり》。
 《くじ引きで選ばれた国民たちが下した選択によって、命が絶たれる。死刑をめぐる状況は新たな局面を迎えた》。
 《映画「ふたりの死刑囚」(東海テレビ放送製作、ポレポレ東中野など1月16日公開)は、冤罪を訴える2人の死刑囚と家族の半生を追ったドキュメンタリー…「袴田事件」の袴田巌死刑囚(79)…「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ、10月に獄中死した奥西勝死刑囚(享年89)》。

   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
   『●「裁判員制度」の下での「死刑制度」存置支持
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●裁判員制度下で少年死刑判決
   『●裁判員の心を慮る・・・
   『●そのスイッチを押せない
   『●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(1/2)
   『●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(2/2)
   『●裁判員制度: 被告にとっても憲法違反
   『●裁判員制度を即刻中止に
   『●「死刑のスイッチ」を押すこと: 裁判員のストレス障害
   『●裁判員制度という不始末に最高裁はどのような落し前を?
   『●死刑という制度: 
       「吊るせ、吊るせ」の合唱で何か状況は変わるのか?
   『●「彼を赦したわけではない。
      しかし死刑にして問題が解決するわけではない」

   『●「殺すなかれ・・・」
       ・・・「彼らを処刑することが「社会正義」なのだろうか」?
   『●「死刑のスイッチ」を強制する裁判員制度:
      「やった人でないと、この苦しみは分からない」

 「死刑のスイッチ」を押してしまった、としったなら……私ならトラウマ必至だな。ブログ主は、断固拒否。

   『●『つぶせ! 裁判員制度』読了
   『●『官僚とメディア』読了(3/3)
   『●『裁判員制度の正体』読了

 朝日の本音は《その一方で、裁判員が死刑求刑事件について判決を下すこともあるという仕組みから、私たち国民は逃れるべきではない》らしい。呆れたね。シロウト裁判官として、《人を裁くという経験を通じ、死刑と向き合い、是非を考える》……相当に酷い社説。『●死刑存置を目指して、市民の意識のハードルを下げさせる制度』にもろ手を上げる『朝日』。社を上げて、そんなに死刑存置したいものかね? 記者がやってみればいいし、社説の筆者がやってみればいい。8%(?)据え置きという有難~い軽減税率を「恵んでもらう」ためには、政権にシッポを振るわけです。

 死刑存置支持者がなんと8割を超えるニッポン。ましてや、裁判員裁判制度で「死刑のスイッチ」を押させられる時代だというのに、暢気すぎる。

   『●善良な市民には関係ない?? 
      死刑制度存置派驚異の8割の我国では全く揺るがず!?
   『●「死刑制度 国民的な議論を活発に」・・・
      「死刑制度存置派驚異の8割の我国」では全くそんな気配なし


 ましてや、もし冤罪死刑にでも関わってしまったら、トラウマどころではない。残酷な司法に、乗せられるニッポン国民。

   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・
   『●司法権力の〝執念〟:
           映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』

   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず

   『●名張毒ぶどう酒事件第八次再審請求審:  
         検証もせずに、今度は新証拠ではないとは!
   『●「触らぬ神にたたりなし、ということなのか」?  
      訴えることが出来なくなるのを待つ司法の残酷さ!

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http://www.asahi.com/articles/ASHDL33XRHDLUTIL00L.html】 

裁判員裁判で判決の死刑囚、初の執行 法務省
金子元希 2015年12月18日11時40分


     (死刑執行について会見する岩城光英法相
      =18日午前11時1分、東京・霞が関、川村直子撮影)

 法務省は18日、2人の死刑を執行した。1人は裁判員裁判で判決を受けた死刑囚。2009年5月に裁判員制度が始まって以来、初めて市民が判断した死刑囚に刑が執行された。死刑の執行は今年6月以来、約半年ぶり。昨年12月の第3次安倍政権発足以来、2度目で、12年12月の自民党への政権交代後では8度目計14人となった。

 法務省によると、死刑が執行された1人は、津田寿美年死刑囚(63)。09年5月30日、川崎市幸区の自宅アパートで大家の男性ら3人を包丁で刺して殺害した殺人の罪で、11年6月に横浜地裁の裁判員裁判で死刑が言い渡された。弁護人が控訴したが、同年7月に本人が取り下げ、裁判官のみで裁く高裁や最高裁の判断を経ずに確定した。東京拘置所で刑が執行された。

 もう1人は若林一行死刑囚(39)。06年7月19日、岩手県洋野町内の会社員女性(当時52)の自宅に侵入し、帰宅した女性とその次女(同24)を絞殺。現金約2万2千円などを奪って2人の遺体を町内の山林に遺棄したとして、強盗殺人や死体遺棄の罪で12年2月に死刑が確定した。仙台拘置支所で執行された。

 法務省によると、18日の時点で死刑が執行されていない確定死刑囚は、執行された2人を除いて127人(再審開始決定が出て釈放された袴田巌さんを含む)。

 今年10月に就任した岩城光英法相にとっては初の執行となった。執行後に記者会見した岩城法相は、「いずれも被害者や遺族にとって無念この上ない事件で、裁判所で十分審理され、死刑が確定したものだ。慎重な検討を加えた上で、大臣の職責として死刑の執行を命令した。裁判員裁判か否かにかかわらず、関係記録を十分に精査した」と話した。

 岩城法相は就任時、「裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対応すべきものと考えている」と述べ、執行に肯定的な考えを示していた。死刑制度については「国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えている。廃止は適当ではない」としていた。(金子元希)
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http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p

裁判員裁判 死刑と向き合う機会
2015年12月28日(月)付

 くじ引きで選ばれた国民たちが下した選択によって、命が絶たれる。死刑をめぐる状況は新たな局面を迎えた。

 川崎市で3人を殺害した津田寿美年・死刑囚の刑が執行された。市民が裁判員を務める制度のもとで死刑が確定した7人のうち、初のケースとなった。

 携わった裁判員の苦悩はいかばかりか、はかりしれない

 評議は6日間に及んだ。刑罰の意味、遺族の思い、本人の更生の可能性など、重い課題を考え抜いた末の結論だろう。4年前、判決後の会見で裁判員たちは「人を死に追いやる」「精神的につらい」と語っていた。

 同様の声が死刑判決に関わった各地の裁判員から聞こえてくる。心のケアをさらに充実させる取り組みが欠かせない。

 その一方で、裁判員が死刑求刑事件について判決を下すこともあるという仕組みから、私たち国民は逃れるべきではない

 そもそも国家権力が人を裁き、罰することができるのは、主権者である国民の負託を受けているからだ。刑罰のあり方を決めているのは国民であり、その究極の現れが死刑だ。

 だが、これまであまりに多くの手続きを、執行する刑務官ら専門職に負わせ、大多数の国民の認識から遠ざけてきた。

 内閣府が今年1月に公表した世論調査によれば、死刑をやむを得ないとする回答は約80%にのぼる。それでも裁判員たちが苦しむのは、「人の命を奪う」という死刑の本質に当事者として直面するからだ。

 人を裁くという経験を通じ、死刑と向き合い、是非を考える。裁判員制度をそうした機会にしていくことが大切だろう。

 そのためにも、裁判員の経験を市民ができるだけ共有できる仕組みが必要だ。加えて、国による情報公開が欠かせない。

 先進国の中で死刑を続けているのは米国と日本だけだが、米国では遺族やマスコミに執行を公開している。日本で立ち会うのは刑務官と検察官ら。プロの裁判官ですら実態を知らない。

 死刑囚はどんな日々を送るのか。執行の順番はどう決まるのか。裁判所の評議室に集まった誰もよく知らないまま、死刑判決にすべきか議論している。そんなことでいいのだろうか、と裁判員の経験者らが昨年、死刑に関する情報公開を法務省に求めた。まさに裁判員制度が掲げた「市民感覚」ゆえだろう。

 その求めに法務省は応じぬまま、今回の執行に踏み切った。「裁判員は与えられる事だけ知ればいいのか」との経験者たちの憤りを放置してはならない。
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http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/172382

映画「ふたりの死刑囚」で描かれた検察の“不都合な真実”
2015年12月26日

 第2次安倍政権以降、裁判員裁判対象の事件としては初となる津田寿美年死刑囚(当時63)を含む14人の刑が執行された。

 一方で、確定判決から半世紀もの間、再審の扉が開くのを待ち続けている死刑囚もいる。映画「ふたりの死刑囚」(東海テレビ放送製作、ポレポレ東中野など1月16日公開)は、冤罪を訴える2人の死刑囚と家族の半生を追ったドキュメンタリーだ。

 登場するのは、1966年に静岡・清水で4人が強殺された「袴田事件」の袴田巌死刑囚(79)、61年に三重で6人が中毒死した「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ、10月に獄中死した奥西勝死刑囚(享年89)とその家族だ。

 仲代達矢(83)主演で奥西死刑囚の生涯を描いた映画「約束」を手掛けた東海テレビの齊藤潤一報道部長(48)がプロデュースし、後輩で警察や司法を担当した鎌田麗香記者(30)が監督を務めた。

 奥西死刑囚との接触はかなわなかったが、昨年3月に釈放された袴田死刑囚に昨年7月から密着。およそ90時間分の取材テープを回したという。映し出される袴田死刑囚の姿は、正直言って不気味だ。自宅をただただ歩き回り、会話もままならず、“宇宙との交信”を繰り返す。47年7カ月に及んだ刑務所生活による拘禁反応だ。

   「怖いという感情よりも、驚きの方が強かった。袴田さんは
    死刑確定を境に精神を病んでしまい、自分が何者かも
    分からない状態。ショックに対する一種の防衛反応なんです」
    (鎌田麗香氏)

 刑事裁判の有罪率は99・9%とされ、再審はほぼ認められないと言っていい。請求権は本人あるいは法定代理人、直系親族、兄弟姉妹などにしかない。袴田事件では33年間、奥西死刑囚が死亡した名張事件では妹(86)が後を継ぎ、39年間も請求を続けている。

   「袴田さんの3歳年上のお姉さんも、奥西さんの妹さんも高齢。
    時間は少ない」(齊藤潤一氏)

 袴田事件では12年に弁護側が犯行着衣のDNA鑑定に踏み切ったことで流れが変わった。検察がひた隠しにしてきた証拠600点を開示したのだ。劇中で検察出身の市川寛弁護士は、はびこる「最良証拠主義」についてこう言っていた。

   「有罪と信じて起訴した以上、有罪を立証するに足りる必要
    かつ十分な証拠があれば、それ以外のものは一切出す
    必要はないという考え方」

 袴田事件は検察の即時抗告で再審開始をめぐる審理がいまも続いている。
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●奥西勝冤罪死刑囚が亡くなる: 訴えることが出来なくなるのを待った司法の残酷さ!

2015年10月06日 00時00分58秒 | Weblog


東京新聞の二つの記事【名張事件の奥西死刑囚が死亡 無実の訴え、半世紀以上】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015100401001283.html)と、
【名張毒ぶどう酒事件 奥西死刑囚が死亡 第9次再審請求中】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015100502000125.html)。
東京新聞の社説【名張・奥西死刑囚が獄死 日本の司法は敗北した】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015100502000128.html)と、
東京新聞のコラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015100502000127.html)。

 《「半世紀以上にわたり無実を訴え続けていた奥西勝死刑囚(89)が4日午後0時19分、収監されていた八王子医療刑務所(東京)で死亡した」》、《「無罪を訴えて第九次再審請求中だった奥西勝死刑囚が四日、収監先の八王子医療刑務所…で死亡した。八十九歳だった」》。
 《「裁判に翻弄されたまま、老死刑囚は獄死した。冤罪の疑いを消せぬまま閉じ込めておくばかりとなった長い年月は、司法の敗北と言わざるを得まい」》、《八十九歳の死刑囚の脳裏に、最後に浮かんだのは、どんな光景だったのか。名張毒ぶどう酒事件で無罪を訴え続けてきた奥西勝死刑囚の命がきのう、消えた▼あまりに多くの地獄を見てきた》。

 とうとう、奥西勝死刑囚が亡くなった。警察や検察、裁判所は「触らぬ神にたたりなし、ということなのか」?、訴えることが出来なくなるのを待った司法の残酷さ!、を痛切に感じる。のろのろと「死」を待っている様にしか見えない。特に、裁判所の酷さ。当時の《名古屋高裁刑事第2部(門野博裁判長)》、《名古屋高裁刑事第2部(下山保男裁判長)》、《名古屋高裁刑事一部(石山容示(ようじ)裁判長)》、《最高裁第1小法廷(櫻井龍子裁判長)》ら。《冤罪と同じほど罪深い司法の自殺的行為》。《「お父ちゃん、お父ちゃん」。わが子が何度も叫んでいたが、どうしてやることもできない▼…父の無実が証明される日を待ち続けてくれた子らへの思いが、生きる希望そのものだったのかもしれぬ》…無残の一言だ。

 asahi.comの記事【江川紹子さん「再審開こうとしない裁判所、罪深い」】(http://www.asahi.com/articles/ASHB46DGYHB4OIPE01S.html?iref=comtop_list_nat_n05)によると、「冤罪をはらさずに死ねないという強い思いが命を支えていたと思う。どれだけ無念だったか……再審開始決定が05年に出た時点で、裁判をやり直すべきだった。DNA型鑑定が絡む事件以外では、決して再審を開こうとしない日本の裁判所の姿勢は罪深い」。 

   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・
   『●司法権力の〝執念〟:
           映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』

   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず

   『●名張毒ぶどう酒事件第八次再審請求審:  
         検証もせずに、今度は新証拠ではないとは!
   『●「触らぬ神にたたりなし、ということなのか」?  
      訴えることが出来なくなるのを待つ司法の残酷さ!
    《「触らぬ神にたたりなし、ということなのか。検察側の倉庫に
     眠ったままの証拠は、今回も、調べられることがなかった。
     証拠開示への逃げ腰は、司法に対する国民の信頼を
     損ないはしないか」》

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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015100401001283.html

名張事件の奥西死刑囚が死亡 無実の訴え、半世紀以上
2015年10月4日 21時41分

 三重県名張市で1961年3月に女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で死刑が確定、半世紀以上にわたり無実を訴え続けていた奥西勝死刑囚(89)が4日午後0時19分、収監されていた八王子医療刑務所(東京)で死亡した。三重県出身。法務省によると、死因は肺炎だった。

 一審で無罪判決を受け、9度にわたった再審請求で1度は再審開始が認められたが、いずれも検察側の控訴や異議で覆り、司法判断に翻弄された死刑囚としての収監期間は43年に及んだ

 4日夜に医療刑務所を訪れ、遺体と対面した鈴木泉弁護団長は「誤った判断を正そうとしなかった裁判所に強い憤りを覚える」と話した。

(共同)
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015100502000125.html

名張毒ぶどう酒事件 奥西死刑囚が死亡 第9次再審請求中
2015年10月5日 朝刊

     (奥西勝死刑囚)

 三重県名張市で一九六一年三月、女性五人が毒殺された名張毒ぶどう酒事件で、殺人罪などで死刑が確定し、無罪を訴えて第九次再審請求中だった奥西勝死刑囚が四日、収監先の八王子医療刑務所(東京都八王子市)で死亡した。八十九歳だった。法務省によると、死因は肺炎だった。

 奥西死刑囚の再審請求は親族が引き継ぐとみられるが、第九次請求は本人の死亡で事実上終了する

 奥西死刑囚は二〇一二年に肺炎で体調を崩し、名古屋拘置所から八王子医療刑務所へ移送された。一三年には呼吸困難で二度、一時危篤状態となり、回復後も寝たきりの状態に。今年八月下旬以降は、意識が回復しない状況が続いていた。葬儀は六日に都内で親族や弁護団、支援者らの密葬で行う。

 七二年に死刑判決が確定した後、第七次再審請求で、名古屋高裁は二〇〇五年四月、犯行に使われた毒物はニッカリンTではないなどとする弁護側の新証拠を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と認め、再審開始を決定。しかし、〇六年十二月、名高裁の別の部が取り消し。最高裁の差し戻し、高裁の再度の取り消し決定を経て、最高裁は一三年十月に再審を認めない決定をした

 弁護団は同年十一月、八度目の再審請求をしたが、最高裁に特別抗告中の今年五月に取り下げた上で、毒物に関する別の「新証拠」を基に、第九次請求を申し立てた。

 <名張毒ぶどう酒事件> 1961(昭和36)年3月、三重県名張市の公民館で開かれた懇親会で、白ぶどう酒を飲んだ女性17人が中毒症状を訴え、うち5人が死亡。奥西死刑囚は妻、愛人との三角関係を清算するため、自宅から用意した農薬ニッカリンTをぶどう酒に入れたと自白し、殺人容疑などで逮捕されたが、起訴直前に否認に転じた。64年の津地裁判決は無罪、69年の名古屋高裁は逆転死刑。72年に死刑が確定したが、翌73年から再審請求を続けた。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015100502000128.html

名張・奥西死刑囚が獄死 日本の司法は敗北した
2015年10月5日

 裁判に翻弄(ほんろう)されたまま、老死刑囚は獄死した。冤罪(えんざい)の疑いを消せぬまま閉じ込めておくばかりとなった長い年月は、司法の敗北と言わざるを得まい

 冤罪が国家の罪であることは言うまでもない。

 冤罪の可能性を消せぬまま、二転三転する司法判断の末に八十九歳の奥西勝死刑囚を獄死させてしまった名張毒ぶどう酒事件は、冤罪と同じほど罪深い司法の自殺的行為ではないだろうか。

 「十人の真犯人を逃しても、一人の無辜(むこ)の人間を罰してはならない」という法格言の通り、一人の冤罪者も出さぬことが刑事司法に求められる最大の使命である


白鳥決定無視の過ち

 日本の司法は過去、死刑囚に冤罪を認めたことがある。つまり重大な誤判の歴史を持っている。その経験は生かされたのか。

 名張事件の運命の分かれ道ともいえる第七次再審請求は、十一年もの時を経て、二〇一三年に最高裁で最終的に退けられた。

 迷走した名張事件の最も大きな問題は「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が無視され続けてきたことだろう。最高裁が「白鳥決定」で、この鉄則は再審でも適用されることを確認したのではなかったか。

 そもそも、津地裁の一審が無罪だった。冤罪を訴える長い歳月を経て、一度は高裁が再審開始を認めもした。つまり、有罪の立証ができていないと判断した裁判官が少なからずいたわけである

 それなのに最高裁は、判決を見直す姿勢は見せなかった。

 逸した機会の第一は、第五次再審請求である。逆転死刑判決の根拠だったぶどう酒の王冠の歯形鑑定の信用性が崩れたのに、最高裁は再審請求を棄却した。

 第七次請求では、凶器とされた農薬が実際に使われたかどうか疑わしいとして名古屋高裁が再審開始を決めたにもかかわらず、検察の異議の後、最高裁は高裁に差し戻してしまった。まさに白鳥決定の無視である

 弁護団は「弁護団が判決の誤りを実証すると、裁判所は別の理屈を持ち出してくる。『疑わしきは被告人の利益にの原則の逆だ」と訴えていた。再審の扉を重くしてきた裁判官や検察官は、明快に反論できるであろうか。


◆誤判への真摯な恐れは

 特に高裁が一二年五月、再審を開始しないとした決定では、弁護側に本来必要ないはずの「無罪の証明」まで求めた

 刑事司法の基本的な考えは、こうである。つまり「被告人が有罪であることの立証責任は検察官の側にあるのだから、『合理的な疑いを超える程度の証明』がなされていないと思えば、無罪判決をすれば足りる」。

 こうした原理に照らせば、司法が原則を大きく踏み外していたように見えてしまうのである。

 高齢の死刑囚が最後の判断を仰いだ最高裁に、私たちは「自ら速やかに判示を」(一二年五月三十一日社説)と求めた。しかし、返ってきたものは、説得的理由のない棄却決定であった。

 再審無罪となった東京電力女性社員殺害事件や静岡地裁が再審開始を決定した袴田事件では、裁判所に促されて検察側が未開示証拠の開示に踏み切り、冤罪の疑いが深まる大きな要因となった。市民の常識を反映させようという裁判員裁判の時代となったのに、冤罪の疑いがぬぐえぬ名張の事件で、司法は一体、何をしてきたのだろう

 元最高裁判事の故・団藤重光氏は退官後、死刑廃止の立場を鮮明にし、「無実の人を処刑することがいかにひどい不正義であり、どんなことがあろうとも許されるべきでない不正義であるか」と指摘している。

 この碩学(せきがく)がなぜ、死刑廃止論に転じたのか。それは、法律家として、また一人の人間としての誤判への真摯(しんし)な恐れであろう。

 奥西死刑囚は冤罪だったのか、否か。迷走した司法判断は、いわば有罪を維持した状態で幕を引くことになったが、大方の国民の感覚に照らしてみると、どうであろう。彼の獄死は裁判の権威を守ったのか、それとも損ねたのか。


◆法の正義と言えるのか

 多くの謎が残ったままの事件である。その謎に迫る可能性を秘めた未開示証拠を検察側が独占したまま二転三転した死刑判決を維持し、冤罪を訴え続けた一人の人間を獄死に追い込んでしまったことは、果たして国民の目に、司法の正義と映るだろうか。

 いったんは開かれた重い再審の扉は、「疑わしき」を覆い隠すように閉ざされた。獄中で老いることを強いられた死刑囚には、どんな軋(きし)み音が聞こえただろう。

 その獄死の無念を、社会は胸に刻みつけねばならぬ。未来のために、日本の裁判史に汚点として、深く刻みつけねばなるまい。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015100502000127.html

【コラム】
筆洗
2015年10月5日

八十九歳の死刑囚の脳裏に、最後に浮かんだのは、どんな光景だったのか。名張毒ぶどう酒事件で無罪を訴え続けてきた奥西勝死刑囚の命がきのう、消えた▼あまりに多くの地獄を見てきた。妻を事件で失い、遺(のこ)された二人の子を抱き締めなくてはならぬ時、連日連夜調べを受けた。無実を訴えたが、憔悴(しょうすい)しきったところで警察官に迫られたという。「家族の者を救うためには、お前が犯人だと自白するよりほかにないのだ」▼逮捕され、家族が住む村で現場検証に立ち会った時、険しい目で見つめる村人の中から声がした。「お父ちゃん、お父ちゃん」。わが子が何度も叫んでいたが、どうしてやることもできない▼一審で無罪判決を勝ち取ったものの、事件から十一年後に死刑判決が確定してからは、刑執行の恐怖におびえる毎日だった。就寝時間となって布団に入ると、「このまま夜が明けてくれなければ…」との思いが頭をよぎったそうだ▼そんな日々が四十年余も続き、病んで声を失ってなお、冤罪(えんざい)を訴えることはやめなかった。父の無実が証明される日を待ち続けてくれた子らへの思いが、生きる希望そのものだったのかもしれぬ▼死刑判決の根拠とされた証拠には数々の矛盾があると指摘されていた。であるのに、最高裁は再審の扉を開けぬまま、奥西死刑囚をあの世に旅立たせてしまった取り返しのつかぬこと
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●「触らぬ神にたたりなし、ということなのか」? 訴えることが出来なくなるのを待つ司法の残酷さ!

2015年01月24日 00時00分31秒 | Weblog


東京新聞のコラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015011002000114.html)と、
社説【名張・再審認めず 証拠は検察のものか】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015011402000172.html)。

 「八十八歳のその人は病室のベッドで宙に文字を書いている。一九六一年、五人が殺された「名張毒ぶどう酒事件」で無罪を訴え続ける奥西勝死刑囚・・・・・・「ぶどう酒」を、誰も「ぶどう酒」と呼ぶことはなくなり、がっちりしていた男性を宙に文字を書く人に変える。長い歳月である▼弱々しい指で何という文字を書くのであろうか。それが「むじつ」という文字であるのならばさっと消すというわけにはいかない。十四日でもう一つ年を取る」。
 「触らぬ神にたたりなし、ということなのか。検察側の倉庫に眠ったままの証拠は、今回も、調べられることがなかった。証拠開示への逃げ腰は、司法に対する国民の信頼を損ないはしないか」。

 冷酷過ぎる司法・・・・・・奥西勝「冤罪」死刑囚が「無実」を訴えることが出来なくなるのを待っているとしか思えない。「年齢や体調を思えば、再審実現は絶望的かもしれない」・・・・・・それを待つ司法。「冤罪」を決して認めようとしない、司法の強い意志、「司法権力の強い執念」。

   ●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・
   『●司法権力の〝執念〟:
           映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
   『●名張毒ぶどう酒事件第八次再審請求審:  
         検証もせずに、今度は新証拠ではないとは!


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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015011002000114.html

【コラム】
筆洗
2015年1月10日

 空間に指で字を書くということがある。「お母さん、あの漢字、どう書くんだっけ」「よく見ていてよ」。母親が空中に書いて教える。こういう字の教え方も最近は見掛けない▼宙に書いた文字を解読するのはなかなか難しい。携帯電話などで字を探し、見せた方がよほど手間がない▼「柱ってどう書くんでしたかな」。聞かれた男が「こうですよ」と宙に書いた後、その字をさっと消す。「何だって消すんですか」。男、真面目な顔で「後で誰かが柱にぶつかるといけない」。こんな小話もやがて通用しなくなるか。宙に書いた字にも実体が宿る。日本人の空想のたくましさ▼八十八歳のその人は病室のベッドで宙に文字を書いている。一九六一年、五人が殺された「名張毒ぶどう酒事件」無罪を訴え続ける奥西勝死刑囚名古屋高裁はきのう再審開始を退けた年齢や体調を思えば、再審実現は絶望的かもしれない▼気管を切開し、会話ができない。昨年秋、指で宙に字を書いて、意思を伝えるようになったという。事件から五十四年。「ぶどう酒」を、誰も「ぶどう酒」と呼ぶことはなくなり、がっちりしていた男性を宙に文字を書く人に変える。長い歳月である▼弱々しい指で何という文字を書くのであろうか。それが「むじつ」という文字であるのならばさっと消すというわけにはいかない。十四日でもう一つ年を取る。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015011402000172.html

【社説】
名張・再審認めず 証拠は検察のものか
2015年1月14日

 触らぬ神にたたりなし、ということなのか。検察側の倉庫に眠ったままの証拠は、今回も、調べられることがなかった証拠開示への逃げ腰は、司法に対する国民の信頼を損ないはしないか。

 奥西勝死刑囚(89)の再審開始を認めなかった名古屋高裁の名張毒ぶどう酒事件異議審決定は、昨年五月の請求棄却決定と同様、弁護団が新証拠として提出した三通の意見書を「再審請求の要件を満たさない」と一蹴した。弁護団は「検察官の証拠隠しを許したまま非情な決定を出したことは許し難い」と高裁の対応を非難している。

 証拠隠し、とは、裁判所にも弁護側にも見せていない検察側の手持ち証拠の存在を指す。

 検察側はかつて、裁判所と弁護団との三者協議で「証拠はまだ膨大にある」と認めていた。弁護団は、その中に奥西死刑囚の無実を明らかにする手掛かりがある可能性が高いとみて証拠の開示を求めてきたが、裁判所も検察側も応じぬまま、異議審も終結した。

 近年、証拠開示が突破口になった再審開始が相次いでいる。

 二〇一二年に再審無罪となった東京電力女性社員殺害事件では、被害女性の爪に残された皮膚片などが開示され、DNA鑑定で真犯人が別にいる可能性を示した。昨年、再審開始決定が出た袴田事件も、血痕付き衣類のカラー写真など新たに開示された六百点が確定判決への疑問を深めた。

 裁判員制度導入に際し、公判前に争点を整理するため、検察側が段階的に証拠を開示する制度が施行されたが、再審請求審の証拠開示は制度化されておらず、裁判所と検察庁の裁量任せだ。

 東電、袴田両事件では、証拠を出し渋っていた検察側が裁判所に促されて開示を決断したが、今回の名張事件では、裁判所も消極的な対応に終始した。

 公権力が公費を使って集めた証拠は、一体、だれのものだろう

 一九六四年の一審判決は無罪、〇五年に一度は再審開始決定。未開示証拠を検察側が独占したまま二転三転した死刑判決を維持することは、国民の目に、司法の正義と映るだろうか

 弁護団は十四日、特別抗告し、舞台は最高裁に移る。「再審制度においても、疑わしきは被告人の利益に、という刑事裁判の鉄則が適用される」とは、その最高裁の白鳥決定である。扱いが分かれる証拠開示の問題でも、白鳥決定に即した対応を望みたい。
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●「資本主義に絶望せよ!? ピケティ」 『週刊金曜日』(1021号)についてのつぶやき

2014年12月21日 00時00分08秒 | Weblog


週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日合併号、1021号)について、最近のつぶやきから、AS@ActSludge。

 今週のブログ主のお薦めは、 横田一さんら【いつのまにか憲法改正、集団的自衛権まで「国民とお約束」 安倍首相「信任を得た」と豪語】と【佐々木実の経済私考/子どもに貧困を押しつける国・日本 病名は「再分配機能の不全」】。

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■①『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 「資本主義に絶望せよ!? ピケティ」。横田一さんら【いつのまにか憲法改正、集団的自衛権まで「国民とお約束」 安倍首相「信任を得た」と豪語】。自公政権に投票する、投票を棄権するとはそういうことだ(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/3a59428b47748c3b7a4de1958d2bd0b9

■②『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 横田一さん【嘉田由紀子・前滋賀県知事の言動を攻撃か 自民滋賀県連が「恫喝」文書】、「「公平中立な報道」といった言葉でメディアに圧力をかけた安倍政権は、教育関係者にも恫喝まがいの文書を」。(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/beaa36f5f1209df87ddcae28a2171984

■③『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 北村肇さん【新年、この国の景色が変わる】、「自分勝手な選挙が安倍政権の終わりの始まりとなり、市民が「ダメよ~ダメダメ」と突きつける。「最大の声は沈黙」であった年は去り、生まれ変わった市民がときの声をあげる」。「本当に、「「眠り猫」は眠っているように見えて実は起きている」のか?」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/bb6a3507df166d17dd60dde1e96367b4

■④『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 「編集員が考える衆院選 安倍政権にどう対抗するか」、雨宮処凛さん【くじけている暇はない】、石坂啓さん【平和憲法か戦争憲法か】、落合恵子さん【今日から再び「はじめの一歩」】、宇都宮健児さん【暴走許さない運動展開を】

■⑤『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 佐高信さん【冬の時代にこそ批判の花を】、田中優子さん【自民圧勝、対策が急務】、中島岳志【「もう一つの道がある」】、本多勝一さん【日本の人口減の〝風景〟】。「僕はもうあきらめた」とは言わない!(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/129b4c41abeebce673781ba4276701a9

■⑥『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 「政治時評 拡大版/「風なく民意」を読む」、大村アスカさん【メディアの無残な弱体化】、黒島美奈子さん【不条理と制度欠陥まざまざ】、西川伸一さん【「気づいたら」一党支配】、村岡和博さん【あきらめるにはまだ早い】

■⑦『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 大内裕和+竹信三恵子さん【「夢をもう一度」はあり得ない 世襲なき中流階級よ、目覚めよ!】、「ピケティ現象を読み解く・・若者の棄民化を放置していいのか」。格差社会を拡大する「トリクルダウン理論」: 「したたり落ちているのは、若い世代の悔し涙なのか」?http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/43faac32d2da8cd0dbc1a429f3c52f17

■⑧『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 【佐々木実の経済私考/子どもに貧困を押しつける国・日本 病名は「再分配機能の不全」】、「まさしく「政府のおかげで貧困率が増えている」状態だ」。「富裕層が富めば、その滴がしたたり落ちるというトリクルダウン効果はなく、庶民の暮らしはより厳しくなるばかりだ。所得の再分配機能を強化すべきだ」。(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/01c2d759e6bdee3c0a7834a5db0da01b

■⑨『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / ピーター・バラカン氏【「失敗から学べばいい。もう一度、夢を温め直そう」 ラジオ番組「打ち切り」騒動、放送規制、原発、そして日本の行方――】、「右派の中にいるごく少数の人たち。・・この国を批判するな!とかね。不健全だし・・」

■⑩『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 【金曜日から】「『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(監督・脚本:斎藤潤一、2012年)を見た・・・・・・安倍第一次・第二次政権は合わせて21人の死刑を執行。しかも・・・・・・谷垣法相によって執行された二人ともが再審請求の準備中・・・・・・」

■⑪『週刊金曜日』(2014年12月05日・1月2日、1021号) / 【金曜日から】「・・・・・・再審請求すると、その間は思考できないので狙われたという見方もある。間もなく新内閣発足。このような死刑制度のあり方を許してはならない・・」(吉田亮子氏)。冤罪事件、「門前払い」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/11e88f3128c34ea915f5f34eaf11890d
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●名張毒ぶどう酒事件第八次再審請求審: 検証もせずに、今度は新証拠ではないとは!

2014年06月03日 00時00分47秒 | Weblog


東京新聞の二つの記事【名張毒ぶどう酒事件 8回目再審請求を棄却 新証拠と認めず】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014052890140923.html)、
【名張・再審認めず “門前払い”でよいのか】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014052902000122.html)。

   『
●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず


 前回は何も検討もせずに、今度は新証拠に認めないとは卑怯だ・・・・・・「石山裁判長は決定理由で、「本件再審請求は七次請求で提出したのと同一の証拠関係に基づき、同一の主張をするものであり、許されない」と指摘」だってさ。不正義甚だしい。

   『●司法権力の〝執念〟:
           映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』


 本当に「司法権力の〝執念〟」だ。「弁護団が「存命中、最後になるかもしれない」として臨んだ名張毒ぶどう酒事件の第八次再審請求を、名古屋高裁はわずか半年で退けた。手続き論での棄却は、司法への信頼を損ねはしないか」・・・・・・本当に冷酷な裁判官。

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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014052890140923.html

名張毒ぶどう酒事件 8回目再審請求を棄却 新証拠と認めず
2014年5月28日 14時09分

 三重県名張市で一九六一(昭和三十六)年、農薬入りの白ぶどう酒を飲んだ女性五人が死亡した名張毒ぶどう酒事件の第八次再審請求審で、名古屋高裁刑事一部(石山容示(ようじ)裁判長)は二十八日、殺人罪などで死刑が確定した奥西勝死刑囚(88)=東京・八王子医療刑務所収監=の再審請求を棄却する決定をした。弁護側は決定を不服とし、今後、異議申し立てなどの対応を検討する。

 石山裁判長は決定理由で、「本件再審請求は七次請求で提出したのと同一の証拠関係に基づき、同一の主張をするものであり、許されない」と指摘。刑事訴訟法は、同一の理由で再審の請求をすることができないと定めているとして退けた。

 昨年十一月に申し立てた第八次請求で弁護団が新証拠として提出したのは、検察側の毒物鑑定に誤りがあるとする農薬化学専門の大学教授ら三人の意見書。第七次請求中の昨年九月三十日に提出したものだが、最高裁はそのわずか十六日後に棄却決定を出しており、弁護団は「最高裁で全く検討された形跡がなく、証拠の新規性を失っていない」と主張。検察側が三月、「すでに判断済みの証拠だ」として請求棄却を求める意見書を出していたが、弁護団は六月には毒物鑑定の再現実験結果を新証拠として追加提出する意向を示していた。

 刑事訴訟法は再審の開始理由を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」と定めており、証拠の新規性と明白性の二つが必要となる。

 第八次で弁護団は、第七次に続き、犯行に使われた毒物は奥西死刑囚が当初自白した農薬「ニッカリンT」ではなかったと主張。事件当時の鑑定で、現場の飲み残しのぶどう酒からニッカリンT特有の副生成物が検出されなかったことに着目し、「毒物は別の農薬で、自白が根底から崩れた」と訴えていた。

 名古屋高裁は第七次再審請求審の二〇〇五年、再審開始決定を出したが、〇六年に同じ高裁の別の部が取り消し。一〇年には最高裁が「科学的知見に基づく検討をしたとはいえない」として差し戻した。一二年五月の名古屋高裁は、独自鑑定の結果、「鑑定手法によっては副生成物は検出されない」として請求を棄却。一三年に最高裁が特別抗告を棄却して第七次請求は終了した。

 奥西死刑囚は一二年六月に肺炎が悪化し名古屋拘置所から東京都の八王子医療刑務所に移送された。昨年に二度、呼吸困難で一時危篤となり、現在は意識はあるが人工呼吸器を付けて寝たきりの状態が続いている。

 <名張毒ぶどう酒事件> 1961(昭和36)年3月28日夜、三重県名張市の公民館で開かれた地元の生活改善グループの懇親会で、白ぶどう酒を飲んだ女性17人が中毒症状を訴え、5人が死亡した。奥西死刑囚は農薬ニッカリンTをぶどう酒に入れたと自白し、殺人容疑で逮捕されたが、公判で否認に転じた。64年の津地裁判決は無罪、69年の名古屋高裁は逆転死刑。72年に死刑が確定したが、73年から再審請求を続けた。確定判決によると、奥西死刑囚は事件当日、会場で偶然1人になった10分間に、ぶどう酒の王冠を歯でかんで開け、竹筒に入れたニッカリンTを混入した。


裁判所ひどすぎる

 ジャーナリストの江川紹子さんの話 弁護団が新証拠を出すと予告していたのにその前に扉を閉ざすなんて、裁判所は最初からやる気がないと示しているようなもの。あまりにもひどく、裁判所の信頼が損なわれる対応だ。

(東京新聞)
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014052902000122.html

【社説】
名張・再審認めず “門前払い”でよいのか
2014年5月29日

 弁護団が「存命中、最後になるかもしれない」として臨んだ名張毒ぶどう酒事件の第八次再審請求を、名古屋高裁はわずか半年で退けた。手続き論での棄却は、司法への信頼を損ねはしないか。

 一九六一年に三重県名張市で女性五人が死亡した名張毒ぶどう酒事件をめぐり、裁判所の判断は二転三転してきた。六四年の一審・津地裁判決は無罪。二審の逆転死刑判決が七二年に最高裁で確定した後も、第七次再審請求で名古屋高裁が二〇〇五年にいったん再審開始決定を出している。

 こうした経過を見ただけでも、奥西勝死刑囚(88)を犯人と確信することは難しい事件である。本人の健康状態も、一時は危篤に陥るなど厳しい状況が続いている。

 今回の決定について、名古屋高裁は「請求人(奥西死刑囚)と面会するなどして確かめた加齢や健康状態の悪化の程度を踏まえ、判断を早期に示した」としている。

 速やかな審理ではあろうが、果たして、死刑を維持するに十分な審理と言えるのだろうか

 棄却理由は「本件請求は、第七次請求で提出したのと同一の証拠関係に基づき、同一の主張をするものであるから許されない」というものだ。中身に入らず、手続き論で訴えを退けた格好である。

 弁護側は、毒物鑑定の再現実験を行い、六月に新証拠として提出するとしていたが、裁判所は「そもそも再審請求の要件を欠いている」として取り合わなかった。

 今年三月に静岡地裁が再審開始を決定した袴田事件では、再審請求審の過程で、それまで検察側が提出していなかった約六百点の証拠が開示され、冤罪(えんざい)の疑いが深まる大きな要因となった。

 毒ぶどう酒事件でも、検察側には多数の証拠が残っているとみられており、弁護側は四月、実況見分のネガや供述調書、ぶどう酒瓶の指紋など未提出証拠の開示命令を出すよう裁判所に申し立てた。

 しかし、早々の棄却決定で、未提出証拠が日の目を見ることはなかった

 再審はあくまでも非常救済制度であり、裁判所や検察庁の立場で考えれば、簡単に認めれば三審制の司法制度が崩壊する、ということになろう。しかし、市民の良識を判決に反映させようという裁判員時代の今、制度の安定を優先して疑問点に目をつぶったともとられかねない“門前払い”でよかったのか。

 二転三転した死刑判決を死守することが正義とは言えまい
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●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず

2013年10月22日 00時00分07秒 | Weblog


東京新聞の記事【奥西死刑囚の再審認めず 名張毒ぶどう酒事件 7次請求】http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013101702000247.html)とコラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013101802000136.html。asahi.comの記事【再審の壁―手続きの整備が必要だ】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2、10月19日)とコラム【天声人語】http://www.asahi.com/paper/column.html?ref=com_top_tenjin10月19日)。最後に江川紹子氏のブログの記事【名張毒ぶどう酒事件・最高裁の棄却決定に思う】(http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20131019-00029050/)。

   『●冤罪死刑囚の死を待ち、責任を逃れようとする冷酷な人々

 またしても、最高裁は再審の扉を閉じた。上記ブログの通り。血の通わぬ冷たい国の冷たい司法。

   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●『創(2009年5月号)』
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●冤罪: 筋弛緩剤事件の守大助氏
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・
   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●「希望にすがるな 絶望せよ」/
          『週刊金曜日』(2013年2月22日、932号)についてのつぶやき

   『●愚挙: 検察の異議が認められて福島事件の再審開始が取り消しに
   『●「アベノミクスに騙されないための政治経済学」
   週刊金曜日』(2013年3月29日、937号)

   『●『自然と人間』(2013年5月号、Vol.203)についてのつぶやき

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013101702000247.html

奥西死刑囚の再審認めず 名張毒ぶどう酒事件 7次請求
2013年10月17日 夕刊

 三重県名張市で一九六一年、農薬入りの白ぶどう酒を飲んだ女性五人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第七次再審請求特別抗告審で、最高裁第一小法廷は、殺人罪などで死刑が確定した奥西勝(まさる)死刑囚(87)=八王子医療刑務所収監中=の再審開始を認めなかった昨年五月の名古屋高裁決定を支持し、弁護団の特別抗告を棄却する決定をした。十六日付。 

 奥西死刑囚の当初の自白通り、毒物が農薬「ニッカリンT」かどうかが争点だったが、桜井龍子(りゅうこ)裁判長は「毒物は自白通りのニッカリンTであっても矛盾はなく、自白の信用性に影響はない」と判断した。

 事件から半世紀余り。犯行を裏付ける直接証拠はなく、司法判断は無罪から死刑へと揺れた。奥西死刑囚は再審請求を繰り返し、第七次再審請求ではいったん再審開始が決まったが、その後覆され、今回の最高裁決定で再審を開始しないことが確定した。あらためて再審請求するにはさらなる新証拠の提出が求められる。

 弁護側は事件当時の鑑定で、現場に残されたぶどう酒からニッカリンT特有の副生成物が検出されなかった点に着目し、「毒物は別の農薬で、自白の信用性が根底から崩れた」と主張した。だが、昨年五月の名古屋高裁は独自鑑定の結果、「鑑定方法によっては副生成物が検出されない」と再審請求を棄却した。

 第一小法廷も「高裁の鑑定は科学的根拠を示している」と判断。事件当時、一般的だった方法で鑑定すると、副生成物が検出されるという弁護側の主張にも「弁護側の指摘する方法で当時の鑑定が行われた形跡はない」と結論づけた。

 第七次再審請求は、二〇〇五年に名古屋高裁が「ニッカリンTを入れたとの自白の信用性に疑問が残る」として再審開始と死刑の執行停止を決定したが、〇六年に同高裁の別の部が取り消し。最高裁は一〇年に「毒物の審理が尽くされていないとして審理を差し戻したが、同高裁は昨年五月、再審開始を認めなかった。奥西死刑囚は肺炎にかかり、昨年六月に名古屋拘置所(名古屋市)から八王子医療刑務所(東京都八王子市)に移送された。その後は寝たきりの状態が続き、今年に入り一時、呼吸困難で危篤状態に陥った。

 決定は、第一小法廷の四裁判官全員一致の意見。検察官出身の横田尤孝(ともゆき)判事は審理の参加を辞退した。

 <名張毒ぶどう酒事件> 1961年3月28日夜、三重県名張市葛尾の公民館で開かれた地元の生活改善グループ「三奈の会」の懇親会で、白ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を訴えた。奥西死刑囚は「妻、愛人との三角関係を清算するため」、自宅から用意した有機リン系の農薬ニッカリンTをぶどう酒に入れたと自白し、翌月3日、殺人容疑で逮捕された。64年の津地裁判決は無罪、69年の名古屋高裁は逆転死刑。72年に死刑が確定したが、翌73年から再審請求を続けた。確定判決によると、奥西死刑囚は事件当日、会場で偶然1人になった10分間に、ぶどう酒の王冠を歯でかんで開け、竹筒に入れたニッカリンTを混入した。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013101802000136.html

筆洗
2013年10月18日

 その映画は、三十五歳の男が川岸を家族と散策する場面で始まる。妻と二人の子と。男は上機嫌で歌いだす。♪母は来ました 今日も来た この岸壁に 今日も来た とどかぬ願いと 知りながら▼幸せな時。だが、それは夢だ。老いた男は、四十年以上すごしてきた三畳一間で目覚める。一九六一年に三重県名張市で起きた毒ぶどう酒事件で犯人とされた奥西勝死刑囚(87)は、拘置所の独房から冤罪(えんざい)だと訴え続けている▼その生涯を描いた東海テレビ製作の映画『約束』で、仲代達矢さん演じる死刑囚は、拘置所の屋上の運動場で叫ぶ。「死んでたまるか、生きてやる」。それは無実を信じ続けた家族の心の叫びでもある▼母タツノさんは、貧しい暮らしに耐えながら面会に通い、手紙で励まし続けた。「してない事はしたというな。しんでもしないというてけ」「ほしいものがあれば母ははだかになってもかってやるから手紙でおしえてくれ」▼タツノさんは一九八八年に世を去り、親類に引き取られ育った長男も六十二歳で病に倒れた。高齢の父を気遣い「おやじには、(無罪を勝ち取り)出てきてから知らせてくれ」と言い残して▼証拠の多くは弁護団の根気強い調査で突き崩されてきた。だが、最高裁は固い扉を開けようとせず、七度目の再審請求も棄却した。死刑囚の心の叫びが、ひときわ高く聞こえるようだ
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http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2、10月19日】

2013年10月19日(土)付
再審の壁―手続きの整備が必要だ

 裁判で有罪が確定したあとでも、その結論を覆すような新証拠が見つかれば、改めて審理する。それが再審である。

 三重県で52年前に起きた名張毒ブドウ酒事件で、最高裁は死刑囚の再審を認めなかった。

 もともと自白と状況証拠で有罪となった事件である。一審は無罪。名古屋高裁もいったんは再審の開始を認めた。複数の裁判官が有罪に疑いをもった。

 弁護側が出した新証拠は、犯行に使われた農薬は、死刑囚が自白したものとは別だった可能性がある、というものだった。

 だが、最高裁は、再審を開くほどの証拠ではないと判断した。一方で、農薬が別物だった可能性は依然残る。再審を始めるのに必要な新証拠のハードルはどこまで高くすべきなのか、すっきりしない結論だ。

 最高裁は1975年、「疑わしきは被告人の利益」とする原則が、再審開始の判断にも適用されるとの決定を出した。その理念に立ち返り、再審のあり方を再考すべきではないか。

 確定判決は尊重されるべきだが、誤りだった場合は救済されねばならない。まして死刑になれば、取り返しがつかない。

 そもそも再審を始めるかどうかの審理は事実上、有罪か無罪かの判断に結びついている。だが、その手続きには具体的な規定が乏しく、裁判所の裁量が大きい。証拠の取り扱いや被告人の権利をめぐる公判のようなルールがなく、非公開のなかで判断されている。

 刑事訴訟法ができた当時、再審は例外的と考えられていた。だが75年の決定をうけ80年代、4件の死刑確定事件が再審で無罪となった。近年も、足利事件布川事件東電社員殺害事件など、再審無罪が相次いでいる。再審の可否をめぐる手続きについて整備すべきだろう。

 さらに、再審の可能性を見すえた証拠の保存や開示のあり方についても議論が必要だ。

 今回は、重要な証拠だった毒ブドウ酒が保存されていなかったため再鑑定できず、当時の鑑定方法も分からなかった。

 事件から時間がたつほど新証拠を見つけるのは難しくなる。一方で、DNA鑑定など技術の進歩により、証拠の価値は時とともに重みを変える。

 重要な証拠が検察側の手に埋もれていることもある。これまでの再審請求審では、裁判所が検察側に促して出てきた証拠が大きな役割を果たした。

 とりわけ死刑事件については、求められた証拠を確実に開示しない限り、刑の執行への理解は得られまい。
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http://www.asahi.com/paper/column.html?ref=com_top_tenjin、10月19日】

2013年10月19日(土)付
天声人語

 事件につけられた名称が、その時代と、流れた歳月を物語ることがある。たとえば「徳島ラジオ商殺し事件」はテレビ時代の到来前に起きた。「名張毒ブドウ酒事件」もブドウ酒という言葉が時代がかって響く。どちらも戦後の事件・裁判史に太字で刻まれるできごとだ▼ラジオ商事件では、故・富士茂子さんが夫殺しの汚名を着せられて懲役刑に服した。無実を叫び、事件から32年後に再審無罪が言い渡されたのは、富士さんが69歳で他界した後だった▼毒ブドウ酒事件の奥西勝死刑囚は87歳になり、人工呼吸器をつけた病床から無実を訴えている。事件はガガーリンが人類初の宇宙飛行をした1961(昭和36)年に三重県名張市で起きた。一審無罪、二審有罪をへて、死刑確定後の収容は41年におよぶ▼ようやく開きかけた再審の扉も、16日の最高裁の棄却で、また固く閉じられた。後になって証言者の偽りが分かったラジオ商事件とは状況は違う。しかし自白を軸に状況証拠と心証で下された裁きは、冤罪(えんざい)を生んできた一つの「型」といえる▼裁判官には専門家としての判断があろう。とはいえ、確定判決を守り抜くことで裁判の威厳が保たれるとは思えない。「疑わしきは被告人の利益にに徹してこそ、司法の高潔は保たれるのではないか▼弁護団は8次となる再審請求をするという。残された時間との戦いにもなろう。真実を知る身ではないけれど、「遅れた正義は無いに等しい」という言葉が、胸に浮かんでは消える。
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20131019-00029050/

名張毒ぶどう酒事件・最高裁の棄却決定に思う
江川紹子
2013年10月19日 16時27分

なぜ?今?

名張毒ぶどう酒事件で、最高裁が棄却決定を出したとの速報を見て、頭の中に大きな疑問符が浮かんだ。弁護団が最高裁に書面を出した、と聞いたばかりだったからだ。

  (小池義夫弁護士が描いた元気な頃の奥西勝さんの似顔絵。よく似ている)

検察官の主張に対する反論と、科学者3人の意見書や資料など、合わせて100ページほどを弁護団が投函したのは、9月30日という。最高裁に届いたのは10月1日だろう。再審請求棄却の決定は10月16日付。時間的に、弁護団の書面を吟味したり、議論したうえで判断した、とは思えない。

決定の内容を読んで、あ然とした。

焦点となっている毒物に関して、弁護側主張を検討した形跡がまったくないのだ。単に、検察側意見書によれば再審不開始の名古屋高裁決定は正しい、と言っているだけで、弁護側主張のどこが、なぜ違うのか、という理由にまったく言及していない。

そして、弁護人から決定が出るまでの経緯を聞いて、今度は呆然とした。

弁護団は書面を送付する際、裁判官と調査官の面会を求める上申書を提出していた。調査官とは、最高裁裁判官の仕事を補佐する役割で、地裁などで裁判官として実務経験豊富な判事が務める。

ところが何の音沙汰もないので、弁護団長の鈴木泉弁護士が10月11日に最高裁の担当書記官に電話をした。「調査官と裁判官に聞いて連絡します」と言われ受話器を置くと、わずか15分後に電話がかかってきた。「調査官、裁判官とも面会しないとのことです」という断りだった。

第7次再審請求で1回目の特別抗告審(最高裁第3小法廷・堀籠幸男裁判長)の時には、調査官が何度も面会に応じ、弁護団は難しい科学鑑定の中身を口頭で補足説明する機会を得ていた。ところが、今回の第1小法廷(櫻井龍子裁判長)では、調査官の面会も、ただの一度も実現していない、という。


裁判所の都合が優先

しばし呆然とした後、ようやく働き始めた私の頭でこれらの事実を咀嚼し、冒頭の疑問に自ら出した答えは、次の2つだった。

(1)最高裁にとっては、とにかく奥西勝さんが生きているうちに裁判所の結論を出すことが最優先だった。

(2)その結論、すなわち再審を開始しないという結果は、あらかじめ決まっていた。

奥西さんは昨年5月に名古屋高裁刑事第2部(下山保男裁判長)で再審開始を取り消す決定が出されてから体調が急激に悪化。6月に八王子医療刑務所に移されたが、今年5月には2度も危篤状態に陥った。第7次再審請求審は、以下のような経過を経て、すでに11年以上が経過していた。


2002年4月 第7次再審請求
  ↓
2005年4月 名古屋高裁刑事第1部(小出ジュン一裁判長)の再審開始決定
          注:「ジュン」はかねへんに、つくりは亨
  ↓
2006年12月 同高裁刑事第2部(門野博裁判長)の再審開始取消決定
  ↓
2010年4月 最高裁第3小法廷(堀籠幸男裁判長)の差し戻し決定
  ↓
2012年5月 名古屋高裁刑事第2部(下山保男裁判長)で再度の再審開始取消決定
  ↓
最高裁第1小法廷(櫻井龍子裁判長)


最初に再審開始決定が出ており、最高裁第3小法廷の判断も「科学的知見」を重視するものだっただけに、本人や弁護団が期待しているだけでなく、マスメディアからも島田事件以来の死刑再審かと大いに注目されていた。最高裁の結論が出る前に、奥西さんが亡くなるようなことがあれば、裁判所が批判にさらされるのは必至だ。

そんな事態を防ぐため、とにかく生きているうちに、再審を開くつもりはないという結論を示して第7次再審請求審を終わらせるーー明示的か暗黙のうちかは分からないが、これが、最高裁第一小法廷の基本方針だったのではないか。それでも、検察側主張に対する弁護側反論を待たずに結論を出すわけにはいかない。なので、弁護側の書面が届くのを待って、(「これでよろしいですね」という形ばかりの確認くらいはしたかもしれないが)あらかじめ用意してあった決定文を印刷し、発送したのだろう。

つまり、事案の真相解明とか、人の命や尊厳などより、裁判所の都合が優先された、ということだ。


結論ありき、が「普通」

再審は開かせないーー名張毒ぶどう酒事件の再審請求は、こうした裁判所の結論ありきの姿勢との戦いだった。

  (2012年5月、名古屋高裁の差し戻し抗告審の「不当決定」に憤る鈴木弁護士に)

たとえば、第5次再審請求審で、唯一の物証であったぶどう酒の王冠についた傷が奥西さんの歯型と一致するという有罪判決の認定は、木っ端みじんに打ち砕かれた。それでも名古屋高裁は、王冠の傷は奥西さんの歯型に類似しているという旧鑑定にも「それなりの証明力が認められる」とか「自白の補強証拠の一つとなりえないとはいえない」などと有罪方向での評価を与え続けた。

そもそも、証拠とされた王冠が、本当に事件に使われたぶどう酒のものだったかどうかも、疑わしいところがある。事件の現場となった公民館からは、証拠として出されている王冠以外にも、たくさんの酒類の王冠がみつかり、警察が押収し、検察に保管されている。再審弁護団の初代弁護団長は、「(王冠が)ざくざくあった」と述べていた。だが、それは未だに開示されていない。

第7次請求審で再審開始決定を取り消した門野決定は、「…ではないかと考えられる」「…のようにも思われる」「…も無視できないように思われる」「…としてもおかしくないように思われる」などと想像や推理、推測、憶測を幾重にも重ねて、科学者の意見を退けた。そして、「当然極刑が予想される重大犯罪であり、そう易々とうその自白をするとは考えられない」と、「自白」に寄りかかって判断をした。無実の人の虚偽「自白」や目撃者が虚偽や誤解に基づいた「証言」によって、これまでたくさんの冤罪が作られてきた教訓は、そこでは全く忘れ去られていた。

どれだけ有罪の事実認定が疑わしくなっても、とにかく確定判決を死守するという結論は動かないのだ。これが、多くの裁判官の対応だった。私には異常に思えたが、裁判所の世界では、これが「普通」なのだろう。


「普通」につぶされる「まとも」な判断

それでも、時々まともな裁判官は現れる

ここで私が言う「まとも」とは、

1)再審請求審においても、「疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の鉄則が適用される、とした白鳥決定を意識する

2)自白などの供述に頼るより、客観的な証拠、とりわけ科学的知見を重視する

という姿勢を意味している。

第7次再審請求審で再審開始を決定した小出コートは、1)の意味で「まとも」だったし、科学的知見を重視して判断をやり直すように求めた最高裁第3小法廷は、2)の意味で「まとも」だった。もちろん、いずれも弁護側の主張を丸飲みしたわけではない。たとえば小出決定は、それぞれの証拠の意味するところを的確に把握し、事実認定のうえで新たな視点を提供しているかどうかで採用不採用をきっぱり分別。そのうえで、確定判決に合理的な疑問が生じている以上、再審を開くべき、という明解な論旨だった。

ところが、そういう「まとも」な判断が出るたびに、それを他の「普通の」裁判官たちが潰しにかかる。その繰り返しだった。門野コートは自白に依存し、下山コートに至っては、検察官が主張もしていない化学反応を自ら考え出して、せっかく開きかけた再審開始の扉を、再び閉ざした。

その挙げ句の果ての、今回の最高裁の決定だ。

再審は、過去の裁判を見直す作業でもある。裁判所の判断が誤っていたかもしれない。見逃した事実があるかもしれない。そんな謙虚な姿勢で証拠を見直し、様々な意見に耳を傾けるのでなければ、間違った裁判は正せない。

残念ながら、今回の最高裁にそうした謙虚さは欠片も見られなかった。無辜を救済する使命感も全く感じられなかった。伝わってきたのは、「裁判所は間違わない」との無謬神話を維持する強固な意志と、裁判所の対面や都合を優先する姿勢ばかりだ。


裁判官は選べない。ならば…

   (毒ぶどう酒事件被害者の霊を慰める観音像)

私が名張事件と関わって、もう20年以上になる。その間、他の再審請求事件についても、取材をしたり、関心を持って見てきた。

確かに、足利事件、氷見事件(富山強姦・同未遂事件)、東電OL殺害事件などで再審無罪判決は出ている。ただ、これらの事件は、DNA鑑定や真犯人の逮捕によって、犯人が別人であることが明らかになったケースだ。そうでもなければ再審が開かれないのでは、冤罪の犠牲者を救うことは難しい。実際、冤罪と思われる事件でも、再審の扉はなかなか開かれず、いったん開かれた扉も、すぐにまた閉じられてしまう。

圧倒的多くの「普通」の裁判官が過去の裁判所の判断を見直したがらない中、時折「まとも」な裁判官が現れたり、「まとも」な判断がなされたりする。それは他の事件でも同じだ。

けれども、被告人も再審請求人も、裁判官を選ぶことはできない。格別に幸運で、「まとも」な裁判官や「まとも」な判断に続けて出くわせば、雪冤を果たせるかもしれない。けれども、そうでない多くの場合は、救われない。これが今の日本の司法の現状だ。

その結果、奥西さんは名古屋高裁の逆転死刑判決以来、44年間も獄につながれている。

かといって、裁判所が自ら変わっていく、ということは全く期待できない。ならば、これ以上「運」に任せるのではなく、こんな事態がまかり通っている仕組みを変えていくべきだ。

そこで提案が3つある。

1)現在の裁判で認められている程度の証拠開示を認める

今なら、名張毒ぶどう酒事件は、裁判員裁判対象事件となり、公判前整理手続きの過程で検察側の証拠が幅広く開示される。過去の冤罪事件では、検察側はしばしば、自分たちの筋書きに反する証拠を隠していきた。たとえば、東電OL事件では、被害者の口や胸部にゴビンダさんとは異なる血液型の唾液が付着していたことを、検察側は長く伏せてきた。布川事件では、犯人とされた2人とは違う男を被害者宅付近で見たという女性の証言が、やはり長く隠されてきた。

名張毒ぶどう酒事件は、検察側が証拠提出した関係者の調書類だけでも、不自然極まりない変遷がある。それ以外の調書や王冠の”発見”過程などが明らかになれば、事件の真相に近づくことができるかもしれない。

最近は、証拠開示に前向きな裁判官も出てきている。しかし、そういう裁判官に当たるかどうかは運次第。それではいけない。どんな裁判官に当たってもいいように、現在、裁判を行うのであれば認められる程度の証拠開示は、再審請求審でも認められるよう、制度として定めるべきだ。


2)検察官による異議申し立ては認めない

今回の最高裁決定は否定したが、「疑わしきは被告人の利益に」の原則を再審請求審でも適用するとした「白鳥決定」は、維持すべきだと思う。

名張毒ぶどう酒事件については、一審の津地裁は明解な無罪判決を書いている。そして、第7次再審請求審の名古屋高裁小出コートは、いくつもの論点を検討して、有罪判決に「合理的疑い」を抱いた。少なくとも、6人の裁判官が関わった2つの裁判体で、奥西さんを犯人とする検察主張や有罪判決に対し、「合理的疑い」を抱いた事実は大きい。

ましてや、死刑判決である。「合理的疑い」をさしはさむ余地が少しもないほどに有罪立証が固められていなければならないはずだ。それに対し、再審請求審において、3人の裁判官が「合理的疑い」を抱いた。この時点で、検察側の異議申し立ては認めず、すぐに再審を開いたらどうか。

現状では、事実上「再審開始=無罪判決」となっているため、いったん再審開始決定が出ても、検察官は異議を申し立てて、それを阻止しようと努める。その発想を変え、「再審開始=起訴時に戻って裁判をやり直す」として、検察側の主張はそのやり直し審で十分主張すればよい。裁判のやり方も、事件当時の訴訟法ではなく、現在の法律に基づいて行う。法制度は「改正」、つまりよりよく改められてきたはずで、何も以前の悪い制度で行うことはないだろう。

このようにすると、再審で有罪判決が出されることもありうる。それを承知の上で、検察側異議申し立てを認めずに、再審開始のハードルを少し下げることが必要だと思う。


3)再審請求審に市民が参加する

前述したように、「普通」の裁判官たちは、過去の裁判所、すなわち先輩たちがなした判断の間違いを正すことに、非常に消極的である。間違いを認めると、裁判所の権威に関わるとでも思っているらしい。

そうであるならば、過去の裁判所の間違いを正す機会を作る役割を、職業裁判官たちに任せたままにしておくことは、間違いなのではないか。

裁判をやり直すかどうかの判断には、過去の裁判所に何のしがらみもない市民が関わるべきだ、と私は思う。市民だけで判断をする検察審査会方式にするのか、裁判官により多くの市民が加わる裁判員方式がいいのかは議論すればよい。いずれにしても、再審の扉を開く鍵を、裁判所だけに託しておくことは、人の道に反している、とすら思う。


大きくうなずいた奥西さん

奥西さんには、17日のうちに弁護士2人が結果を伝えた。気管を切開していて、言葉を語ることはできないが、この日の意識は清明で、右手をやや上げて弁護士を迎えた、という。2弁護士によると、状況は次のようなものだった。

伊藤和子弁護士が、奥西さんの右手を握った。野嶋真人弁護士が、こう切り出した。

「最高裁の決定が届きました」「僕らの力が及ばず、ごめんなさい」

これで全てを察した奥西さんは、石のように固まって、うつろな表情で天上を見つめた。「僕らは絶対諦めません」「弁護団はこれからも今まで以上にがんばる」「次の準備をしています」…

2弁護士がそう繰り返し呼びかけると、奥西さんはうなずいた。

「8次(再審請求)をやりますよね」

野嶋弁護士の声に、2度、うなずく奥西さん。

   (八王子医療刑務所に移ってからの奥西さんの似顔絵。小池義夫弁護士が描いた)

「僕らを選任してくれますか」

さらに大きなうなずきが返ってきた。そして、必死に何か喋ろうと口を動かす。しかし、声にはならない。野嶋弁護士が口元に耳を寄せたが、聞きとることはできなかった。

以前は、面会のたびに、「皆さん、ありがとう。がんばります」と言葉が返ってきた。野嶋弁護士が「『ありがとう。がんばります』と言ってくれているのですか?」と聞いた。奥西さんは、やはり大きくうなずいた。

裁判所や法務当局は、奥西さんの獄中死を待っているのかもしれない。それに抗うかのように、奥西さんは懸命に命の灯火をともし続けている。

制度を変えるには時間がかかるだろう。

だが、奥西さんの命の時間はそう長くない。

本当に、なんとかならないものだろうか。

弁護団は、急ピッチで第8次再審請求の準備を進めている、という。
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●冤罪死刑囚の死を待ち、責任を逃れようとする冷酷な人々

2013年05月16日 07時35分26秒 | Weblog


東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013050901001921.html)。

 自らの責任を回避するために、検察は奥西勝さんという冤罪死刑囚の死を持っているとしか思えない。裁判所がそれに加担しているのだから、全く冷酷な人たちである。

   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●『創(2009年5月号)』
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●冤罪: 筋弛緩剤事件の守大助氏
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・
   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●「希望にすがるな 絶望せよ」/
          『週刊金曜日』(2013年2月22日、932号)についてのつぶやき

   『●愚挙: 検察の異議が認められて福島事件の再審開始が取り消しに
   『●「アベノミクスに騙されないための政治経済学」
   『週刊金曜日』(2013年3月29日、937号)

   『●『自然と人間』(2013年5月号、Vol.203)についてのつぶやき

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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013050901001921.html

奥西勝元被告が一時危篤に 名張毒ぶどう酒事件
2013年5月9日 22時12分

 1961年3月に農薬入りのぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した名張毒ぶどう酒事件で死刑が確定し、再審開始を求めている奥西勝元被告(87)の鈴木泉弁護団長らが9日、名古屋市で記者会見し、奥西元被告が収容先の八王子医療刑務所(東京)で今月2日に一時危篤となっていたと明らかにした。現在は人工呼吸器などを装着し、小康状態という。

 鈴木弁護団長によると、元被告は昨年6月に名古屋拘置所から八王子医療刑務所に移送された後、肺炎を繰り返すなどしていた。

(共同)
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●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』

2013年02月14日 00時00分26秒 | Weblog


綿井健陽さんの『逆視逆考PRESS』(http://watai.blog.so-net.ne.jp/2013-02-10)で、映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(http://yakusoku-nabari.jp/introduction/http://yakusoku-nabari.jp/story/)のことを知りました。

   『●『創(2009年5月号)』
   『●高い冤罪の可能性: 名張毒ブドウ酒事件
   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・

 名張毒ぶどう酒事件について、昨年5月末、第7次再審請求差戻審で名古屋高裁が再審の求めを却下している。綿井さんの言うように、正に「別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”」である。

   「名古屋高裁刑事二部(下山保男裁判長)は二十五日午前、
    弁護側が提出した新証拠は「毒物がニッカリンTではないことを
    示すほどの証明力はなく、確定判決に合理的な疑いは生じない」として、
    検察側の異議を認め奥西勝死刑囚(86)の再審を開始しない
    と決定した。いったんは再審を開始すると判断した名古屋高裁刑事
    一部の決定(二〇〇五年)を取り消した。」
    (http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012052502000260.html
      (『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・』) 

 警察、検察、裁判所・・・・・・なぜここまで頑なに再審を拒むのか?

   「名張毒ぶどう酒冤罪事件の第7次再審請求差戻審で、またしても、
    名古屋高裁は開きかけた扉をあっさりと閉じてしまった。
    本当にまじめに新証拠の審査を行っているのか? 奥西勝死刑囚は
    無実の罪で囚われ、すでに86歳だそうだ。警察や裁判所の罪を
    糊塗したままで、冤罪は続いていく」

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http://watai.blog.so-net.ne.jp/2013-02-10

Twitterまとめ投稿 2013/02/10

wataitakeharu 
NHK放送文化研究所のシリーズ、『制作者研究』はどれも興味深い。ネット上でも全文がPDF閲覧できる。http://t.co/jbF8tvpO 個人的には、現代センター代表・吉永春子さんの登場を期待している。吉永さん、お元気だろうか?02/10 05:52

wataitakeharu 東海テレビの司法ドキュメンタリーの中でも、名張毒ぶどう酒シリーズは、どれも秀作だが、今回の『約束』(2月16日から劇場公開)はその中でも最高傑作だった。 http://t.co/75pUkmi9 恐るべし東海テレビの執念、そして、別の意味で恐るべし、司法権力の“執念”!02/10 05:22

wataitakeharu 昨日(9日・土)のTBS「報道特集」で放送された死刑執行の実態。http://t.co/2yA4BR8t 巡田忠彦記者による3回目の死刑リポートは、この番組の名物シリーズ企画となりつつある。東海テレビの司法ドキュメンタリー番組・映画と同じく、僕はこれからも必ず観ると思う。02/10 05:10

wataitakeharu 先日の高円寺ドキュメンタリー祭で、森口豁さん取材の沖縄ドキュメンタリー番組を観た人は、ぜひ以下のテキスト(PDFで全文閲覧可能)も読んでほしい。http://t.co/gIuIIc3Z あのETV特集放射能汚染地図」の七沢潔ディレクターが丹念に調べた森口豁さんの足跡。02/10 04:53
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http://yakusoku-nabari.jp/introduction/

何度裏切られても、彼が信じ続ける。
裁判所が事実と良心に従って、
無実を認めてくれると。

獄中から無実を訴え続けている死刑囚がいます。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡しました。「名張毒ぶどう酒事件」です。奥西は一度は犯行を自白しますが、逮捕後、一貫して「警察に自白を強要された」と主張、1審は無罪。しかし、2審で死刑判決。昭和47年、最高裁で死刑が確定しました。戦後唯一、無罪からの逆転死刑判決です。
事件から51年――際限なく繰り返される再審請求と棄却。その間、奥西は2桁を越える囚人が処刑台に行くのを見送りました。いつ自分に訪れるか分からない処刑に怯えながら
あなたは、その恐怖を、その孤独を、その人生を、想像することができますか?


これは、冤罪ではないか。
司法は、獄中死を望んでいるのか?

事件発生当初から蓄積した圧倒的な記録と証言を再検証し、本作を作り上げたのは、『平成ジレンマ』『死刑弁護人』の齊藤潤一斎藤潤一(脚本・監督)と阿武野勝彦(プロデューサー)。これは、東海テレビ放送の名物ドキュメンタリー「司法シリーズ」を手掛ける二人が、カメラが入ることが許されない独房の死刑囚を描き出す野心作である。
そして、奥西勝を演じるのは日本映画界の至宝、仲代達矢。息子の無実を信じ続ける母・タツノ役に、樹木希林。ナレーションをつとめるのは、寺島しのぶ
そう、本作は映画とジャーナリズムが日本の司法に根底から突きつける異議申立なのだ。


半世紀近く拘置所に閉じ込められている
奥西さんの心境は測りしれません。
私がこの状況に追い込まれたらどうなるか、
そういう気持ちで演じました。
60年俳優をやってきた中で、
私にとって記念碑的な作品です。
  ――――――――――― 仲代達矢


http://yakusoku-nabari.jp/story/

独房から無実を訴え続けている死刑囚がいる。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。逮捕された奥西は「警察に自白を強制された」と訴え、無実を主張。1審は無罪だったものの、2審は逆転死刑判決。そして昭和47年、最高裁で死刑が確定した。奥西は、死刑執行の恐怖と闘いながら、いまも再審を求め続けている

奥西の無実を信じているのが、母、タツノ。事件で村を追われ、見知らぬ町で独り暮らしを始めた。内職をして電車賃を稼ぎ、月に1度、名古屋拘置所にいる息子に会いに行く。タツノは奥西に969通の手紙を送った。「お金のあるあいだ、湯たんぽを貸してもらい、牛乳も飲みなさい」「やっていないのは、おっかあが一番知っている」「長い間の苦労は毎日、涙いっぱいですよ」再審を待ち続ける母。奥西はタツノと約束をする。“無実を晴らして、必ず帰る” しかし、その約束は果たされることなく、母は昭和63年、84歳で亡くなった。

そしてもう一人、奥西を支え続けたのが支援者の川村富左吉※(73歳)。確定死刑囚への面会は、肉親と弁護士以外許されていないが、川村は法務省に掛け合い奥西との面会を許される。川村は奥西との面会を10冊のノートに記録した。「起床7時。運動毎日50分。運動は3坪ほどの部屋で歩くばかり」「作業、朝7時40分頃から袋貼り。午後4時に終わる。報酬は月2千円」「正月の食事、鯛の塩焼き・数の子・餅・赤飯・みかん・菓子。普段は米麦6対4」「息子が突然、面会に来た。20数年ぶり。嬉しかった」「誰かの死刑が執行された。一斉放送のニュースが突然切れたのでおかしいと思った」「胃がんの手術。3分の2を切除」

事件から44年後の平成17年4月、名古屋高裁は奥西の再審開始を決定した。川村と奥西は名古屋拘置所の面会室のガラス越しに握手。「今度は晴れて、塀の外で握手をしましょう」と二人は約束した。しかし、喜びもつかの間、検察が異議申し立てをし、再審は棚上げとなった。そして、その半年後、川村は病に倒れ、この世を去る。奥西との約束を果たすことができずに…。

平成18年、奥西の再審開始決定は名古屋高裁の別の裁判官によって取り消されたが、2009年、最高裁は名古屋高裁に審理を差し戻し。平成24年、名古屋高裁は再び、再審開始決定を取り消した――。

司法は、何を望んでいるのだろうか?

                               ※川村富左吉の「吉」の字の“土”は下が長い
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