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●愚挙: 検察の異議が認められて福島事件の再審開始が取り消しに

2013年03月14日 00時00分08秒 | Weblog


東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013030602000229.html)と社説(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030802000150.html)。

 福井事件の前川さんの件は、一度、書いた。青木理さんの「前川さんの身になってほしい!」という言葉がこの冤罪事件の全てだ。

   『●「前川さんの身になってほしい!」: 「福井事件」という明々白な冤罪

 「この事件でも物証がなく、関係者の証言のみで前川さんは罪に問われている。しかも、前川さんは逮捕から一貫して犯行を否認をしている」。検察(名古屋高検)も酷いけど、裁判所が一体何を考えているのか、理解に苦しむ。
 この裁判所(名古屋高裁)の愚挙、批判的な記事があまり出ないのはなぜ??

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013030602000229.html

福井中3殺害 再審取り消し 検察の異議認める
2013年3月6日 夕刊

 福井市で一九八六年に起きた女子中学生殺害事件の再審請求異議審で、名古屋高裁(志田洋裁判長)は六日、「確定判決の事実認定に合理的な疑いを差し挟む余地はない」として検察側の異議を全面的に認め、前川彰司・元被告(47)の再審開始を認めた高裁金沢支部の決定(二〇一一年)を取り消した。前川さんの弁護団は五日以内に、最高裁に特別抗告する。 

 特別抗告が棄却された場合、今回の再審請求は終了する。新たな証拠を基に、何度でも再審請求はできる。

 前川さんは一貫して無罪を主張。犯人と結び付ける物的証拠はなく、「事件当時、服の胸元に血を付けた前川さんを見た」などとする知り合いの元暴力団組員らの供述が信用できるか否かが、争点だった。

 決定は、弁護団が凶器とされた包丁では付かない遺体の傷があると指摘した点を、「解剖時の計測上の誤差」などと退けた。逃走に使ったとされる乗用車に知人供述通りの血液反応が出なかったことも、「弁護側の再現実験は当時の状況と著しく異なり、供述の信用性を揺るがすものではない」と判断した。いずれも検察側の反論を採用した。

 前川さんは服役後の二〇〇四年に再審請求した。弁護側は、遺体の傷や乗用車の血液反応に関する鑑定結果を、新証拠として提出。「元組員らの供述とつじつまが合わない」と訴えた。高裁金沢支部は一一年十一月、弁護側の証拠を認め、再審開始を決定。これに対し検察側が異議を申し立てていた。

供述頼み揺れる判断
 関係者の供述しか証拠がなく、「有罪と無罪のボーダーラインにある事件」(司法関係者)と言われた前川さんの再審請求で、名古屋高裁は再び「前川さんは有罪」と認めた。今回の決定で言い分が認められたとはいえ、検察は供述頼みの立証に警鐘が鳴らされたと考えるべきだろう。

 有罪の根拠となる供述をしたのは、被害者や前川さんの仲間たちだ。別件で逮捕されたリーダー格の元暴力団組員が「前川さんから犯行をほのめかされた」などと述べ、複数の仲間が追随した。

 供述した一人は本紙の取材に「自分の覚せい剤容疑を見逃してくれると警察に言われ、うその証言をしてしまった」と話している。供述が出てきた背景も含めた慎重な捜査が必要だった。

 再審請求では、弁護側が遺体の傷や血痕の鑑定を新証拠に供述の矛盾を投げ掛け、いったんは再審開始の決定が出た。検察内部に「弁護側の指摘は重箱の隅をつつくようなもの」との声もあるが、これらの鑑定は捜査側が逮捕や起訴前にも実施できたはずで、裏付けが不十分だったと指摘されても仕方がない。

 今後の裁判でも、関係者の供述だけで立証を迫られるケースは出てくるだろう。供述の信用性をどれだけ高められるか。捜査当局には事件の検証が求められる。 (浅井俊典)

 <福井女子中学生殺害事件> 福井市の市営団地で1986年3月、包丁で50カ所前後を刺された中学3年高橋智子さん=当時(15)=の遺体が見つかり、翌年3月、前川彰司さんが逮捕された。90年の一審・福井地裁は無罪、95年の二審・名古屋高裁金沢支部は懲役7年の逆転有罪を言い渡し、確定した。前川さんは出所後の2004年7月に再審請求。11年11月に同高裁金沢支部は「再審開始」を決定し、名古屋高検は異議を申し立てた。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030802000150.html

【社説】
再審取り消し 「異議審」に異議あり
2013年3月8日

 福井の女子中学生殺害事件で、名古屋高裁が元被告の再審開始を取り消した。検察の「異議」を全面的に認めた結果だ。せっかく出た再審の扉を閉ざす「異議審」の手続きに異議を申し立てたい。

 裁判と再審を求める訴えは、複雑な経緯をたどった。事件は福井市で一九八六年に起きた。犯人とされた男性は無実を訴え、一審は「無罪」だった。二審で有罪となり、懲役七年の刑が確定した。

 男性は出所後に裁判をやり直す再審を求め、名古屋高裁金沢支部は再審開始を決定した。だが、検察が「異議」を申し立てた結果、再審の扉が閉ざされたわけだ。

 同じ証拠に基づいているのに、なぜ裁判官によって、有罪か、無罪か変わるのか。高裁レベルで、いったん再審開始と決めたのに、なぜそれが取り消されるのか。

 理由は簡単だ。この男性が犯人だとする決定的な直接証拠が存在しないからだ。犯行そのものを目撃した証言はないし、物証もない。証言を裏付ける客観的な証拠も乏しい状態だった。

 だから、有罪とした裁判官も再審を取り消した裁判官も、積み上げられた間接証拠だけで判断している。具体的には男性の知人らの証言だ。「事件当時、服の胸元に血を付けた、この男性を見た」「現場近くまで男性を車で運んだ」という証言もあれば、元暴力団組員は「男性に犯行をほのめかされた」とも述べていた。

 だが、供述したある一人は本紙に「自分の覚せい剤容疑を見逃してくれると警察に言われ、うその証言をしてしまった」と語っている。取調官の誘導は明らかだ。他の証言も供述が捜査の過程で、変遷していることがわかっている。それでも裁判官は供述だけに寄り掛かって結論を出した。

 最高裁は一〇年に「被告が犯人でないとしたら、説明のつかない事実が間接証拠に含まれる必要がある」と新基準を出した。果たして、今回の場合、この男性しか犯人でありえないと言い切れるだろうか。疑問を覚えはしないか。

 再審開始が決定されても、異議審でそれが覆されたのは名張毒ぶどう酒事件でも同じだった。決定的な証拠がないなら、裁判所は再審を求める人に有利に証拠を読み解くべきではないのか。検察も異議審ではなく、再審過程で有罪を主張すればよい

 確定判決を覆すのは、司法の恥ではない。むしろ無実の人を救う司法の方に信頼を寄せるだろう
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