東京新聞の二つの記事【名張毒ぶどう酒事件 8回目再審請求を棄却 新証拠と認めず】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014052890140923.html)、
【名張・再審認めず “門前払い”でよいのか】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014052902000122.html)。
『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず』
前回は何も検討もせずに、今度は新証拠に認めないとは卑怯だ・・・・・・「石山裁判長は決定理由で、「本件再審請求は七次請求で提出したのと同一の証拠関係に基づき、同一の主張をするものであり、許されない」と指摘」だってさ。不正義甚だしい。
『●司法権力の〝執念〟:
映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』』
本当に「司法権力の〝執念〟」だ。「弁護団が「存命中、最後になるかもしれない」として臨んだ名張毒ぶどう酒事件の第八次再審請求を、名古屋高裁はわずか半年で退けた。手続き論での棄却は、司法への信頼を損ねはしないか」・・・・・・本当に冷酷な裁判官。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014052890140923.html】
名張毒ぶどう酒事件 8回目再審請求を棄却 新証拠と認めず
2014年5月28日 14時09分
三重県名張市で一九六一(昭和三十六)年、農薬入りの白ぶどう酒を飲んだ女性五人が死亡した名張毒ぶどう酒事件の第八次再審請求審で、名古屋高裁刑事一部(石山容示(ようじ)裁判長)は二十八日、殺人罪などで死刑が確定した奥西勝死刑囚(88)=東京・八王子医療刑務所収監=の再審請求を棄却する決定をした。弁護側は決定を不服とし、今後、異議申し立てなどの対応を検討する。
石山裁判長は決定理由で、「本件再審請求は七次請求で提出したのと同一の証拠関係に基づき、同一の主張をするものであり、許されない」と指摘。刑事訴訟法は、同一の理由で再審の請求をすることができないと定めているとして退けた。
昨年十一月に申し立てた第八次請求で弁護団が新証拠として提出したのは、検察側の毒物鑑定に誤りがあるとする農薬化学専門の大学教授ら三人の意見書。第七次請求中の昨年九月三十日に提出したものだが、最高裁はそのわずか十六日後に棄却決定を出しており、弁護団は「最高裁で全く検討された形跡がなく、証拠の新規性を失っていない」と主張。検察側が三月、「すでに判断済みの証拠だ」として請求棄却を求める意見書を出していたが、弁護団は六月には毒物鑑定の再現実験結果を新証拠として追加提出する意向を示していた。
刑事訴訟法は再審の開始理由を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」と定めており、証拠の新規性と明白性の二つが必要となる。
第八次で弁護団は、第七次に続き、犯行に使われた毒物は奥西死刑囚が当初自白した農薬「ニッカリンT」ではなかったと主張。事件当時の鑑定で、現場の飲み残しのぶどう酒からニッカリンT特有の副生成物が検出されなかったことに着目し、「毒物は別の農薬で、自白が根底から崩れた」と訴えていた。
名古屋高裁は第七次再審請求審の二〇〇五年、再審開始決定を出したが、〇六年に同じ高裁の別の部が取り消し。一〇年には最高裁が「科学的知見に基づく検討をしたとはいえない」として差し戻した。一二年五月の名古屋高裁は、独自鑑定の結果、「鑑定手法によっては副生成物は検出されない」として請求を棄却。一三年に最高裁が特別抗告を棄却して第七次請求は終了した。
奥西死刑囚は一二年六月に肺炎が悪化し名古屋拘置所から東京都の八王子医療刑務所に移送された。昨年に二度、呼吸困難で一時危篤となり、現在は意識はあるが人工呼吸器を付けて寝たきりの状態が続いている。
<名張毒ぶどう酒事件> 1961(昭和36)年3月28日夜、三重県名張市の公民館で開かれた地元の生活改善グループの懇親会で、白ぶどう酒を飲んだ女性17人が中毒症状を訴え、5人が死亡した。奥西死刑囚は農薬ニッカリンTをぶどう酒に入れたと自白し、殺人容疑で逮捕されたが、公判で否認に転じた。64年の津地裁判決は無罪、69年の名古屋高裁は逆転死刑。72年に死刑が確定したが、73年から再審請求を続けた。確定判決によると、奥西死刑囚は事件当日、会場で偶然1人になった10分間に、ぶどう酒の王冠を歯でかんで開け、竹筒に入れたニッカリンTを混入した。
◆裁判所ひどすぎる
ジャーナリストの江川紹子さんの話 弁護団が新証拠を出すと予告していたのにその前に扉を閉ざすなんて、裁判所は最初からやる気がないと示しているようなもの。あまりにもひどく、裁判所の信頼が損なわれる対応だ。
(東京新聞)
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014052902000122.html】
【社説】
名張・再審認めず “門前払い”でよいのか
2014年5月29日
弁護団が「存命中、最後になるかもしれない」として臨んだ名張毒ぶどう酒事件の第八次再審請求を、名古屋高裁はわずか半年で退けた。手続き論での棄却は、司法への信頼を損ねはしないか。
一九六一年に三重県名張市で女性五人が死亡した名張毒ぶどう酒事件をめぐり、裁判所の判断は二転三転してきた。六四年の一審・津地裁判決は無罪。二審の逆転死刑判決が七二年に最高裁で確定した後も、第七次再審請求で名古屋高裁が二〇〇五年にいったん再審開始決定を出している。
こうした経過を見ただけでも、奥西勝死刑囚(88)を犯人と確信することは難しい事件である。本人の健康状態も、一時は危篤に陥るなど厳しい状況が続いている。
今回の決定について、名古屋高裁は「請求人(奥西死刑囚)と面会するなどして確かめた加齢や健康状態の悪化の程度を踏まえ、判断を早期に示した」としている。
速やかな審理ではあろうが、果たして、死刑を維持するに十分な審理と言えるのだろうか。
棄却理由は「本件請求は、第七次請求で提出したのと同一の証拠関係に基づき、同一の主張をするものであるから許されない」というものだ。中身に入らず、手続き論で訴えを退けた格好である。
弁護側は、毒物鑑定の再現実験を行い、六月に新証拠として提出するとしていたが、裁判所は「そもそも再審請求の要件を欠いている」として取り合わなかった。
今年三月に静岡地裁が再審開始を決定した袴田事件では、再審請求審の過程で、それまで検察側が提出していなかった約六百点の証拠が開示され、冤罪(えんざい)の疑いが深まる大きな要因となった。
毒ぶどう酒事件でも、検察側には多数の証拠が残っているとみられており、弁護側は四月、実況見分のネガや供述調書、ぶどう酒瓶の指紋など未提出証拠の開示命令を出すよう裁判所に申し立てた。
しかし、早々の棄却決定で、未提出証拠が日の目を見ることはなかった。
再審はあくまでも非常救済制度であり、裁判所や検察庁の立場で考えれば、簡単に認めれば三審制の司法制度が崩壊する、ということになろう。しかし、市民の良識を判決に反映させようという裁判員時代の今、制度の安定を優先して疑問点に目をつぶったともとられかねない“門前払い”でよかったのか。
二転三転した死刑判決を死守することが正義とは言えまい。
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