あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

モダン・パラダイス展

2006-09-12 22:55:37 | 美術展
朝から肌寒い風が吹いていたし、雨もショボショボ降っていたが、
近代美術館に友人と待ち合わせて行ってきた。

彼女とは、お互いの好みが分かり合えるので、一緒に行ってとても面白い時間が過ごせる。

毎日新聞社のエントランスに、茶色に染まった牛のオブジェがあったので、
あぁ、これは、丸の内のイベントの流れかな?

さて、会場に入ろう。

今回は、藤田嗣治の時のような大混雑とは言わないまでも、
そこそこの入場者があって、へぇ、ウィークデイなのに、
たいしたものだなぁと変なところに感心。
中高年ばかりではなく、若い人も随分いたし。

会場は、5章によるパートに分かれて展示されていたけれど、
自分好みを見つけては喜んだ。

今回は、写真や、彫刻も取り込まれていて、絵画だけに終わっていないところが面白い。

パートで言えば、「Ⅲ 心のかたち」が一番。
高村光太郎の、「手」「腕」に出会えた。
あの質感、神経質な手の表情、ごつんとした重量の中に、精神までもが内在している。

萬 鉄五郎 「雲のある自画像」
雲は白じゃないんだ、緑と赤。
線の細い臆病者には、この人からの一言で、きっと前に歩き出せる。
萬さんと知らない頃、萬鉄(まんてつ)さんだと思っていた。
だから、今でも私は萬鉄(まんてつ)さんと呼ぶ。

岸田劉生 「麗子肖像」
あまりにも有名な作だけれど、てかてかしたほっぺや、浴衣の柄がとっても好きだ。まるで、イコン絵のような宗教絵画のような無垢に、こちらも無邪気に対面しないと劉生氏に怒られそうだ。

セバスチャン・サルガド 「サヘルの飢饉」
シリーズ3作は非常に神々しい写真だった。
事態は大変な悲劇のただ中なのに、とても超越したなにかがあって、
美しかった。

ルオーがここにあるのが不思議で、次の夢かうつつかの方にあっても良いのに、
と思ってはみたけれど、心のかたち、とすれば、当てはまるのか・・
悲哀のこもった道化の横顔、疲れた顔からは、現実と自分を統合できずに苦しんでいるかのようだった。

次のお気に入りは、「Ⅳ 夢かうつつか」

なんて懐かしい、キリコがいる。
ピカソや、ダリ、ムンクなどを美術館で見始めたとき、
不思議な絵を見た。キリコのこんな絵だった。
印象派の絵よりもこちらのシュールが好きだった。
今もその好みは変わっていない。
その奥に見てはいけない摩訶不思議が潜んでいそうだったから。

そして、最後「Ⅴ 楽園へ」
カンディンスキーと富岡鉄斎とミロが同じブースにある。
これが企画の妙なのだろう。
今回の目玉は
ゴーギャンの「かぐわしき大地」と、萬 鉄五郎の「裸体美人」のセット。
私には、萬鉄さんの裸体に軍配を上げたい。
文句を言わせない迫力があるから。
緑深い丘に、裸体の女性が見下ろす視線に対して、誰が何を言っても
圧倒的すぎるのだ。ハハァ~~

なんて色んな世界が混在していたのだろう!!

私には、「カオス・パラダイス!!」であった。

 
 

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4 コメント

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モダン・パラダイス (一村雨)
2006-09-13 08:26:45
ラストのコーナー。

麦僊・ルノアール組vs萬鉄五郎・ゴーギャン組の

ようにも思えました。

前者は優美、後者は、う~ん、生命力・・・

あの展覧会、いろいろ仕掛けがあったようです。

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一村雨さま (あべまつ)
2006-09-13 11:25:57
来館者の数だけパラダイスがあるってことでしょうね?



陰と陽、太陽と月、東西、色んな対局があるけれど、ひたすら作家達はみつめていたんだなぁ・・・観賞後時間がたっても様々な眼につきまとわれているようです。
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Unknown (いづつや)
2006-09-16 23:04:27
あべまつさん、こんばんは。3週間ぶりのブログです。ネットに入れない生活はキツイですね。



モダン・パラダイス展は“心のかたち”のコーナーがよかったですね。関根正二の2点は03年東近美であった“青木繁展”でもペアリングされてました。この形でみるとすごくいい気持ちになります。
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いづつやさま (あべまつ)
2006-09-22 11:37:03
せっかくコメント下すっていたのに、お返事遅くてごめんなさい。

見逃してました!!



色んな時代の、色んなアーティストがいたことを、教わりました。

現代の作家は、まだまだ知らないことだらけです・・・日本芸術の深いところ、誇りに思います。
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