あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

グレゴリー・コルベール  ・森アーツセンターギャラリー

2007-03-20 23:06:45 | 海外美術
あぁ、なんという静けさ、詩情溢れる空間、色、動物と一緒の人間の表情。

彼らには不安がない。
信頼しきっている自信に溢れている。

強い力溢れる、何ものをも受け入れる目線の輝き。

それをセピア色で、大画面に映し出されていた。

これはある種の衝撃だった。

都会にいる人間にとっての、不意打ちにも似ている。

短編映画が2本上映されていて、
ナレーションが聞き取りにくいのが難点ではあったけれど、
なんとも美しい姿だった。

チンパンジーと若い女性とのシーンは、
オフェリアを思い出すし、
信頼以上の愛情溢れるやりとりには、神々しいまでのエロスまで感じた。

作品目録が手元にないから、違うのかも知れないけれど、
もう1本の映像は、
チーターと、少年、彼の母、祖母らしき年代の人が砂丘にしゃがみ込んでいる。
チーターは、まるで家族のように振る舞い、
彼らもまた、チーターを同じ人間のように隔てを感じている様子がない。

ゆるぎない純愛だ。

この作家や、作品のことを何も知らないけれど、
宗教さえ感じた。

ひたひたとたゆまぬ自然の営みを水が流れるように
捕らえている映像に、しばし呆然として画面に見入ってしまったのだった。

澁澤龍彦の「高丘親王航海記」を読んだばかりだから、
なんとも言えない高貴なエロスをも彷彿とさせてくれた。

動物と人間はあそこまで信頼関係が結べるのだろうか。
そういう意味で、幸せこの上ない映像でもあった。

お台場で、このグレゴリーの写真を板 茂(ばんしげる)が紙とコンテナで作った
ノマディック美術館で、見ることができます。
サイトもとても素晴らしい画像が紹介されています。
見るというか、体感に近いのだと思います。
6月24日まで。

森アーツでは、4月1日まで。

イメージの世界の広さに圧倒されます。
ぜひ。

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2 コメント

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純愛。 (るる)
2007-03-22 20:28:36
チーターと少年と女性の映像は素晴らしかったですね…

敵対心が無ければ、地上に生きる者同士として

こんなにも解りあえるのだという深いメッセージを感じます。

素晴らしい映像美ですね
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るる さま (あべまつ)
2007-03-23 10:50:24
お互いの信頼が揺るがないって、
信じられない力になるのではと思いました。

疑心を持つ事が不幸の始まりとも。

かなり、ストイックな美学に裏打ちされているのでしょう。
美しい画像でした。
返信する

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