この日は庭園開放された紅葉と、国宝展を再訪し、
東洋館、本館、法隆寺館、そして
表慶館で開催中のエルメス展を見る、というまるまる東博を
楽しんできました。
本当に体力と気力さえあれば一日中遊んで暮らせます。
そこで、見てきたものの画像をアップして見てきたものを
記録しておこうと思います。
きっとこの日が今年最後の東博になるのかもしれないのですが、
この一年、相変わらず沢山の目の保養をさせて頂いたものです。
まずは庭園開放された紅葉画像を少し。庭園開放は12/7で終了しています。
今回は1階から回りました。
漆芸のコーナーには舞楽図の硯箱が中を見えるような
鏡をおいての展示に喜びました。2/8まで展示
「舞楽蒔絵硯箱」伝本阿弥光悦作
他、お気に入り作家の小川破傘作の「九貢象意匠硯箱」も展示されていて
嬉しく思いました。
陶磁器コーナーは2/15までの展示
乾山の可愛らしい椿の香合に再会しました。
今回は蓋をずらしての展示、念願の中を見ることができました。
珍しい釉薬の茶碗に目がとまりました。
蛇蝎釉茶碗(じゃかつゆうちゃわん)
この珍しい釉薬は薩摩焼元立院窯のもので、へび、さそりの肌を思わせる釉薬の
変化が特徴の物で、黒と白の二種類の釉薬を重ね掛けして
独特の焼き肌を作ったようです。
やきものコレクターの横河民輔氏寄贈品でした。
企画特集、「日本の仮面 能面創作と写し」11/5~1/12
この特集のために冊子が作られました。
ショップで600円で販売されています。
面の内側の詳細な画像なども紹介されていて、
能面理解のための素晴らしい一助となりそうです。
今年、三井記念美術館でも能面の展示があり、そこでも
面の裏の様子も見えるような展示に驚き、嬉しく拝見しましたが、
この冊子には面打の系図などもあって、興味深いものです。
能は秀吉の頃に大流行して必然として能面の数が必要となり、
古い作から学んでそっくり写すことが試されてきたそうです。
その創作、写しの仕事ぶりにスポットが当てられました。
能面は舞台でこそ映えるものでしょう。
来年は久しぶりに能舞台へ出かけてみようと思っているところです。
2階国宝展示では雪舟の「破墨山水図」が12月23日までの展示
割合と小さな作品ですが異彩を放っています。
仏教の美術では、「聖徳太子絵伝」第一、二、三、が並べられました。
この作品は南北朝時代のもので、なんと、川合玉堂氏からの寄贈品でした。
国宝展では法隆寺から玉虫厨子が展示され、
聖徳太子の存在を感じましたが、
東博構内の法隆寺館内では同じ画題で比較できるように
「聖徳太子絵伝」が10面一挙に展示されていました。
延々と太子の生涯が語られたようですが、画面をおいかけることは至難の業です。
受付で何が描かれているか、プリントを配布しているので、
参考に頂戴してきましたが、それでも判然としない画面と
内容を結びつけることは難しいものです。
平安延久元年(1069)秦到貢(ハタチコウ)作 12/7で展示終了
カメラOKでしたので、撮ってきましたが見にくくて残念です。
本物実物もじつにぼんやりしていてわかりにくいものでしたが、
それでも偉大なる聖徳太子さまの生涯をこうして絵解きするべく
大きな作品となっていることに、ますます偉大なる聖徳太子さま、と
仰ぎ見るのでした。
宮廷の美術のコーナーには美しい源氏物語図扇面がずらり並びました。
まばゆい金地に華やかな源氏のシーンが描かれています。1/12まで展示
茶の美術の展示に、ユニークな火入れが展示されていました。1/25まで展示
柿釉地染付人物文火入
日本から図案が行ったようですが、中国で絵付けされたときに
牛車などが理解されずに破綻した車の様子がみてとれ、
それを面白がった茶人たちの遊び心が伝わります。
武士の装い展示ケースに美しく染められた羽織が見えました。
胴服 水浅葱緯地蔦模様三葉葵紋付
中綿が入れられた温かそうな胴服です。
辻が花染めでしょうか。2/22まで
屏風の展示は麗しの「武蔵野図屏風」が現れて驚喜しました。
本当に美しい作品です。
暮らしの調度のコーナーから
「梅枝短冊蒔絵硯箱」ときどきお目見えですが
愛らしい意匠でお気に入りです。
いかにも京焼、という色使いのお茶碗が見えました。
「色絵梅花文茶碗」仁清
その向こうは京焼のもの。
あぁ、白隠さんだ、という絵がみえました。
「箒図」白隠筆
またなにごとか、禅のお話をおもしろく伝えているのでしょう。
浮世絵の展示室最初に
肉筆、「遊女立姿図」懐月堂度種筆
太い黒い線が全体を力強く、勢いよく見せてくれます。
色の配色もクールです。
今回の目玉、とでもいいましょうか、
とんでもない仮名手本忠臣蔵が出てきました。
こんな事をやるのは、国芳、です。笑!
「化物仮名手本」十一段の下までずらり展示で圧巻です。
しかもその段のエピソードが面白く盛り込まれているところなど、
泣かせ所も外していません。
12/23日までの展示なので、これを見るだけでももう一度東博!と思いたくなります。
最後に平成館の国宝展つながりで、
国宝再現ー田中親美と模写の世界ー
という企画が平成館1階の企画展示室でありました。
田中親美さんという人、時々東博の模写作品の作者として名前を見ています。
東博のサイトから解説をコピーしましたので、ご参考に。
田中親美(たなかしんび、本名・茂太郎、1875~1975)は、生涯にわたって、
数々の国宝の模写・模造を制作し続けた人物です。
父・田中有美(ゆうび、茂一、1840~1933)より絵を教わった親美は、
和様の書の大家・多田親愛(ただしんあい、1840~1905)に弟子入りし、
写すことの大切さを学びました。
若い頃から、国宝「源氏物語絵巻」をはじめとする模写に携わり、
明治30年代には、国宝「本願寺本三十六人家集」の模写と、装飾料紙の模造を行ないます。
そして、大正9年(1920)から広島・嚴島神社の依頼で行なった国宝「平家納経」の模本制作は、
当時の財界人や数寄者の援助により実現しました。
それは、絵や書を写すだけでなく、絢爛豪華な装飾料紙、繊細な金具や銅製の経箱の模造まで、
徹底的に再現されたものです。
「平家納経(模本)」(全三十三巻、経箱一合)は全部で五組制作され、
最初に作られた一組は嚴島神社に納められました。
益田鈍翁(ますだどんおう、孝(たかし)、1848~1938)が所蔵していた一組が、当館に伝来しています。
という、類い希な模写の大家であったことがわかります。
鈍翁、また貴方様ですかというため息も漏れたり。
その作品の一部の画像がこちらです。
こうして一日中東博を楽しんだのですが、
ご紹介しきれない沢山の見所満載なのです。
特別展があった時だけではなく、常時東博の展示を見て回る、そのことの楽しさを
季節の移り変わりと共に味わえる、最高のテーマパークです。
黄昏時の法隆寺館
東博前庭の大銀杏。まるで三尺玉の花火のようでした。
新年の東博で初詣、これも毎年の楽しみです。
ご案内サイトはこちら。
いよいよ年末だとカレンダーは知らせてくれますが
実感がさっぱり。11月はやや鑑賞が低調でしたので、その反動が出ているのかも知れません。12月は色々詰め込みました。年末までに後何が見られるか、ちょっと花の仕事が入ってきたので厳しいかも知れませんがいつもながらのお付き合いに感謝申し上げます。