本と、映画のネタバレにご注意下さい。
ともかく、本の冒頭の口絵がなんと、宮本武蔵の水墨画一幅。
これには驚きました。
一体、何が始まろうとしているのか。
彼の生まれた時代、戦争の始まる前、1941年から物語が始まり、
なんとも豪奢な富裕族独特な世界で、知能も教養も五感に溢れる美しい物に囲まれて、優雅に、典雅に暮らしていたこと。
そこから、殺戮のどん底の地獄絵図を見てきたレクターに、
しあわせを、どう感じ取れるか、
愛する人を目の前で次々と失う不条理が、
ハンニバルを育ててしまった。
神はいるのか?
最愛の妹の命を目の前で慚愧極まる形で失ったレクター少年。
数年後、青年となった彼がその妹の亡骸の前で語ることばが深い。
「この世に神は存在しないという事実に、
ぼくらは心の平安を見いだしているんだよな、ミーシャ。
だからこそおまえは、天国で奴隷にされることもないし、
この先永久に神の尻にキスさせられることもないんだ。
おまえが持っている物は、天国よりも素晴らしいよ。
それは、祝福された忘却なんだから。
ぼくは毎日おまえの姿をしのんでいる」
この台詞がこの本の深いところをひたひたと流れていることがわかる。
何という悲しくも深い愛情。
それを失った時に、レクターは、何かを捨てた。
仇討ちに命を賭け命の限り走った。
日本人の美しい紫夫人の登場にも、
どこか菩薩様の救済に近い物を感じた。
トマス・ハリスに何がそうさせたのかを教えてもらいたいが、
きっと、この本がその答えだと言うことだろう。
神の呪縛の戦いに於いて、何が救われたのだろうか。
そんな歴史を、日本という国がどう思ったことかと、
源氏物語を紐解き、血族の継承の歴史にも近づいたのだろうか?
あちこちに流れる優美な雰囲気を訳者の高見浩氏が素晴らしい力を発揮している。
世界中で、日本人が一番この本を理解する民族だと確信し、
レクター博士の人格形成に麗しくも日本文化が流れていることに、
うち震え、耽美な感動を与えられた、極上の物語だった。
しかし、この世に血糊の付いた極悪非道の歴史が明らかにあったこと、
戦争のむごさは、愛情を八つ裂きにする。
奪った者達に命を賭けて、たぎる思いに身を奮い立たせ、
復讐へ向かうエネルギーをふつふつと蓄える。
怨念の奴隷となって、目的に突き進む。
霊を魂を悼む。
神のためにではなく、生きた証の礼儀として。
無惨な心を慈しむように。
枯れた心を癒すように。
これは、大いなる反戦の物語でもあるようだ。
レッド・ドラゴンからの続き物語りではあっても、
現代の流れに即した、彼ならではの世界観が溢れているようにも思った。
若いレクターと、紫夫人のコン・リーにも注目して、
映像もまたじっくりと楽しみたい。
このことは、レオナルド・ダ・ヴンチにも通じ、
先日見た、パルマ展に繋がっていくようだった。
宗教の呪縛力はこれからどこへ行くのだろう?
しばらく、西洋宗教絵画は見たくない、そんな気持ちになった。
レクター家に合掌。
ともかく、本の冒頭の口絵がなんと、宮本武蔵の水墨画一幅。
これには驚きました。
一体、何が始まろうとしているのか。
彼の生まれた時代、戦争の始まる前、1941年から物語が始まり、
なんとも豪奢な富裕族独特な世界で、知能も教養も五感に溢れる美しい物に囲まれて、優雅に、典雅に暮らしていたこと。
そこから、殺戮のどん底の地獄絵図を見てきたレクターに、
しあわせを、どう感じ取れるか、
愛する人を目の前で次々と失う不条理が、
ハンニバルを育ててしまった。
神はいるのか?
最愛の妹の命を目の前で慚愧極まる形で失ったレクター少年。
数年後、青年となった彼がその妹の亡骸の前で語ることばが深い。
「この世に神は存在しないという事実に、
ぼくらは心の平安を見いだしているんだよな、ミーシャ。
だからこそおまえは、天国で奴隷にされることもないし、
この先永久に神の尻にキスさせられることもないんだ。
おまえが持っている物は、天国よりも素晴らしいよ。
それは、祝福された忘却なんだから。
ぼくは毎日おまえの姿をしのんでいる」
この台詞がこの本の深いところをひたひたと流れていることがわかる。
何という悲しくも深い愛情。
それを失った時に、レクターは、何かを捨てた。
仇討ちに命を賭け命の限り走った。
日本人の美しい紫夫人の登場にも、
どこか菩薩様の救済に近い物を感じた。
トマス・ハリスに何がそうさせたのかを教えてもらいたいが、
きっと、この本がその答えだと言うことだろう。
神の呪縛の戦いに於いて、何が救われたのだろうか。
そんな歴史を、日本という国がどう思ったことかと、
源氏物語を紐解き、血族の継承の歴史にも近づいたのだろうか?
あちこちに流れる優美な雰囲気を訳者の高見浩氏が素晴らしい力を発揮している。
世界中で、日本人が一番この本を理解する民族だと確信し、
レクター博士の人格形成に麗しくも日本文化が流れていることに、
うち震え、耽美な感動を与えられた、極上の物語だった。
しかし、この世に血糊の付いた極悪非道の歴史が明らかにあったこと、
戦争のむごさは、愛情を八つ裂きにする。
奪った者達に命を賭けて、たぎる思いに身を奮い立たせ、
復讐へ向かうエネルギーをふつふつと蓄える。
怨念の奴隷となって、目的に突き進む。
霊を魂を悼む。
神のためにではなく、生きた証の礼儀として。
無惨な心を慈しむように。
枯れた心を癒すように。
これは、大いなる反戦の物語でもあるようだ。
レッド・ドラゴンからの続き物語りではあっても、
現代の流れに即した、彼ならではの世界観が溢れているようにも思った。
若いレクターと、紫夫人のコン・リーにも注目して、
映像もまたじっくりと楽しみたい。
このことは、レオナルド・ダ・ヴンチにも通じ、
先日見た、パルマ展に繋がっていくようだった。
宗教の呪縛力はこれからどこへ行くのだろう?
しばらく、西洋宗教絵画は見たくない、そんな気持ちになった。
レクター家に合掌。
http://www.nhk.or.jp/book/review/index.html
ちなみに、BS2で、日曜朝08:00からの放送で、再放送は、本日の夜中00:00からです。
「羊たちの沈黙」も、ずいぶん昔の話になりました。
続編も見てないし、読んでいませんが、今回の「ハンニバル・ライジング(上下)」は、ちょっと読んで見たい気になっています。
日本文化がどのように取り扱われているのか、興味があります。
和歌のやり取りもあるとか・・・・
訳者は、作家より大変か?、などと思っています。
時々、ヒットなコメントを頂くので、嬉しく思っています。早速録画して、ブックレビューを見てみます。
レッド・ドラゴン以来、トマス・ハリスの著作、それの伴う映画を見て来ているのですが、
悪行の美学もさることながら、
描きすぎるほどの残忍なシーンは、実は殺戮を体験してきた人々にとっては驚くことではないのだと今回ようやく理解したのです。
取り上げられた日本文化は、オリエント趣味に近いのは、否めないので、ご期待も開けてからのお楽しみです。レクターはサムライを目指したのでしょうか?
訳者のご苦労は読んでいて、嬉しいものでした。
ご一読お勧め致します。
ハンニバルのシリーズは映画を見てから原作へ、と言うのがわたしのパターンです。
「ハンニバル」でのフィレンツェにときめいたわたしは「ライジング」では病院にときめきました。
ヨーロッパ的な、本当にヨーロッパ的な美と恐怖と残酷さがあり、胸を衝かれました。
わたしのは映画の感想文なのですが、TBいたします。
そうそう、ハンニバルのフィレンツェの映像は素晴らしかったですね。建築の持つ天井への螺旋。
空気感が絶対あり得ない匂いを醸し出していました。
寺院の抹香臭い匂いとも似ているようで違う、
魔界の香辛料のような。
知らぬ顔の雑踏に隠れている悪徳の香。
残酷な美、澁澤龍彦にレクチャーしてもらいたいです。映画を見るまでのお楽しみにします。