あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

今年の美術鑑賞ランキング★

2007-12-19 12:16:08 | 美術展
12月だというのに、忙しいのはわかるけれど、実感が伴わないのは、
どういうことだろう??

一人の時間がはた、と巡ってきたので、
久しぶりにPCに向かうとした。

で、今年一年のランキング。

ピックアップから苦戦状態。
私好みに溢れた鑑賞だが、それがどんなに幸せなことか。
ワクワクしながらチョイスしにいそしんだ。

1、安宅栄一の眼
   大阪市立東洋陶磁美術館 4/7-9/30
   なにしろ私的に最高の展覧会だった。
   図録もすばらしくエピソード満載の
   読み応えある本だった。 

2、BOMBO/屏風 日本の美
   サントリー美術館 9/1-10/21
   六本木でオープン記念展覧会の一年だった。
   工芸の一級品所蔵は他の追随がないと思う。
   そのなかで、大きな屏風が海を越えて
   集まったり集まったり。圧倒的迫力に喝采。

3、京都五山 禅の文化展
   東京国立博物館 7/31-9/9
   東博でなければできないと思う展覧会。
   禅宗たちの形相がゆるい今の姿を
   喝していた。
   書画の宝庫で圧巻だった。

4、レオナルド・ダ・ヴィンチ天才の実像
   東京国立博物館 3/20-6/17
   西洋美術の大御所レオナルドの受胎告知を
   引っさげモナリザ再来とばかりに
   肝入れした展覧会。
   会場に様々な鑑賞方法を盛り込んだ、
   興味深い展覧だった。

5、春信・歌麿・北斎・広重  
   ミネアポリス美術館秘蔵コレクションより
   渋谷区立松涛美術館 10/2-11/25
   渋谷松涛に小さいながらも実に面白い
   展覧会をぶつけてきた。
   去年の骨董展から、
   すっかりごひいきの美術館となった。

6、「青山二郎の眼」展
   世田谷美術館 6/9-8/19
   わが敬愛する白洲正子氏のファミリー、
   青ジイ。
   時代も手伝って、
   異端の美を見極める眼を持った人。
   彼は骨董を撫で回して愛玩して、
   生活を楽しんだ。
   ただそれだけのことができない、
   美と生活することが
   なぜそんなに難しいことなのか?
   楽しめばいいのだ。それだけなのに。
   彼の存在が劇薬のように痺れる。

7、澁澤龍彦ー幻想美術館
   埼玉県立近代美術館 4/7-5/20
   サド侯爵から始まり彼の興味となるもの全てに
   闇夜と血の色が迫る。
   でもその闇夜に光る怪しききらめきに
   心奪われないでなんとしよう。
   その眼に映った様々なものが
   目の前に現れ、眩暈がした。

8、乾山の芸術と光琳
   出光美術館 11/3-12/16
   琳派の元祖、光悦、宗達の後、
   雁金屋兄弟のものつくりへの道。
   挑戦、世界の芸術を取り入れ、
   日本のものと融合し、
   斬新な雅を表現した人。
   光琳の大切な弟だったに違いない。

9、岡倉天心ー芸術教育の歩み
   東京芸術大学美術館 10/4-11/18
   フェノロサが来日して以来、
   新しい日本の芸術、
   美術を育てる学校を作った天心。
   ボストン美術館の日本、
   アジアの所蔵の基礎を作り、
   明治以降の美術界において、
   新しい風を起こした。
   彼の偉業を追いかけて、
   なんとはなしに日本美術の近代の道のりが
   見えたのは大きな収穫だった。

10、靉光展
    東京国立近代美術館 3/30-5/27
   一人の画家を目指した青年が
   苦労して手に入れた画業を振り返る
   珍しい展覧会だった。
   戦争の暗い影を背負いながらも、
   毅然と絵を描き続け、散った切なくも
   魂の嘆きが聞こえてきたようだった。

他、
 *「石田徹也 悲しみのキャンパス」 静岡県立美術館
   彼もまた、夭折の画家だが、
   現代の悲しみをこれくらい直接的に
   絵で表現する人はなかろうと思う。 
   パロディーなのか、シュールなのか、
   絵から、メッセージがどくどく溢れてくる。

 *日本美術が笑う 森美術館
  森美術館で、初めて楽しい企画に触れた。
  エレベーター火災で危ぶまれたが、
  沢山の人に日本の古いアートを楽しもうと
  チャレンジした面白い企画展だった。
 
 *グレゴリー・コルベール 森アーツセンターギャラリー
  動物と人間の疑いもない信頼関係を
  まるで宗教のように
  淡々と映像に、画像に残した。
  信頼関係が揺るがないことの美しさが
  自然の神々しさと
  溶け合って、超常現象のようだった。
 
 *花鳥礼賛 泉屋博古館 8/4-9/24
  若冲熱があちこちの展覧会で伝わるのだが、
  こちらにも若冲が現れた。
  でも、その師匠とも言うべきが、沈 南蘋。
  超写実の絵を見ることができて、大感激。

 *富岡鉄斎展 大倉集古館 10/6-12/16
  奈良の大和文華館から、鉄斎がやってきた。
  80を超えてもよどみないパワーに驚かされた。
  教養ある文人画家は、長寿なのだろうか?
  ユーモアを持つことは、
  教養も必要なことを知る。
 
 *高島菊次郎氏寄贈・中国書画 槐安居コレクション
  東京国立博物館 東洋館代8室  7/3-9/2
  中国絵画の逸品を思いがけず堪能した。
  真面目な収集家で、 
  学んだノートもひたむきな姿勢が
  にじんでいた。 
  中国にどのくらい様々なことを
  学んできた事かと思う。

また、やきもの展にはずいぶん恵まれた。
コンスタントに通う東博には底なし沼のようにお宝が湧いてくる。
所蔵倉はいったい????

今年は六本木が様変わり。
サントリー美術館には何度も通ったし、
国立新・美術館にも通った。
また、大倉、泉屋はセットで楽しんだ。

出光にははずれがなかった。
ゆったりとした雰囲気は格別。

今年の当たりは、松涛美術館。
小さい区立でありながら、
ミネアポリスの浮世絵には驚いたし、
スマッシュヒットの連続だった。
来年も期待したい。

太田記念美術館では
海外からすばらしい浮世絵を初鑑賞に喜んだ。
浮世絵、随分楽しんだ一年だった。
ギメのときは、あんなに混雑した
太田記念美術館を初めて体験した。
 
創立120周年行事に力を注いだ
芸大の企画展も充実していた。
近代の美術学校の存在を大きくアピールできたのではないだろうか?
金毘羅さんも楽しめた。

東京国立近代美術館は、
地味ではあるが堅実な展覧だったと思う。
都路華香から、靉光、彫刻の近代、を新しく感じられた。
常設の多岐にわたるコレクションも見逃せない。

記事にはなっていない洋画展も沢山あるのだが、
日本の魂にひどく共鳴した一年だったように思う。
また、例年になく中国の書画に触れようとした。
まさに日本美術芸術の師匠である、中国、韓国を抜きには
語れないということが実感できた。

今、中国でどんな新しい風が吹いているのか、
松涛で展覧があるらしいので、
注目したい。

また、絵巻物の魅力に触れ、御伽草子の絵にも引き込まれた。
絵巻の絵師達と、お抱え絵師との交流や、
皇族公家達が手にした書画の優雅さが
琳派の元祖であるに違いないということ。
宗達が突然生まれたのではなく、
必然だったのだと思う。
あの時代の創造性豊かなものつくりには
ただただ憧れるだけだ。

雅とはそういう選ばれた人々によってきらびやかに
宮中の行事で、日々の生活で支えられてきたのだということ。
その反対に仏教の流れの無。
色のない枯れたもの。
だから、利休が生まれた。
秀吉がキンキラの派手好みであればこそ、
利休が必要になったのだと思う。
無という派手。

美は権力を誇示する大きな力となりえたこと。
見にはいけなかったが、
狩野永徳という悲劇。
圧倒的絢爛ではあっても、幸せな気がしないのだ。

教養と密接であること。

宗教がエネルギーの源であったり、
パトロンとなったりしたこと。

そんなことを思うにつけ、
それらの美を鑑賞して、その力のおこぼれを頂戴して、
現実の人生を楽しむことにいそしんだ、
かなり充実の一年であったことを
日本人魂に感謝するしかない。

そろそろ、華美な装飾過多から、無の派手にシフトしたものが
生まれることではないだろうか?
何でも盛り込みすぎる飽食は、
次第に胃酸過多になるだろうから。

さて、皆様におかれましては、
いかがな一年の鑑賞でしたでしょうか??

つたなきあべまつの美術鑑賞にお付き合い頂き
深く感謝いたします。

こちらにお訪ねくださったブロガー様たちの健筆に支えられて、
新しいつながりが生まれたことにも感動しております。

というところで、美術鑑賞締めの記事でした。

年末までに一度東博をのぞきたいところですが、
如何になりますことやら。

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20 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
年の瀬 (キリル)
2007-12-19 23:59:13
こんばんは。
この企画が登場すると、いよいよ年の瀬だなと実感します。辛くて楽しい作業ですね。
お選びになった10のうち6つも行きそびれました(だいたい行きたいと思っていた展示ばかりなのに)。

>日本の魂にひどく共鳴した一年だったように思う。

たくさんの洋画展があっても、日本美術だけでたくさん選べるというのは幸せなことですね。
私はもう少し粘って、ぎりぎりに記事にしようと思います。そのときはTBさせていただきます。
返信する
はじめまして (チト)
2007-12-20 08:12:23
偶然こちらのサイトをみつけて以来、頻繁にお邪魔しております。
あべまつさまの記事に心ひかれ、実際展覧会に足を運ぶことも。おかげさまで、さまざまな美との出会いがもてました。
今年のランキング、楽しく拝見しました。
これからも、楽しみにしております。
返信する
キリル さま (あべまつ)
2007-12-20 21:58:42
こんばんは。
今年くらい美術館に行き倒せた年はなく、
とても満足しています。
欲をかくならば、もう少し郊外に足を伸ばしてみたかったです。
歳の所為か、日本人の花鳥風月DNAが目覚めたのかもしれません。日本人であることに助けられています。

キリルさんのランキングも楽しみにお待ちします!
TBもヨロシク引っ張っていってください!
返信する
チト さま (あべまつ)
2007-12-20 22:03:22
チトさま、はじめまして★
ようこそお出でくださいました。
私の記事がお役に立てたようで、恐縮しつつも
嬉しく思います。

ともかく気の向くまま、風の吹くまま
つらつら書き連ねておりますが、
こうしてご縁があることも幸せなことです。
ご贔屓に、よろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (遊行七恵)
2007-12-20 22:32:54
こんばんは
ナイスな選択ですね。
あげられたうちの何点かは、来年廻しになりそうな関西人のわたしです。
やっぱり今年は「日本の美」の年でしたね。
しみじみ実感しました。
>中国でどんな新しい風が吹いているのか、
松涛で展覧があるらしいので
・・・上海の展覧会かしら?もしそうなら大阪で開催された分だと思いますが、珍しくも寒山拾得が美少年な作品もありましたよ。

わたしは今週末に奈良へ行き、それが今年の展覧会めぐりの巻末になるようです。
返信する
年末年始はデパート! (oki)
2007-12-20 23:54:50
今年は体調不良のため、ベストスリーとかベストテンとかのランク付けは止めた僕です。
そうそう、松濤美術館とか小さな美術館が健闘したと思いますね、今年は。
もちろん新美術館の開館がありましたが「20世紀美術探訪」なんて言う開館記念は行けども行けども展示が続き、全体の印象が薄らいでしまいます。
けど年末年始はデパートの展覧会もありますよ。
池袋三越「竹久夢二」、日本橋三越「日本画「今」院展」は本日チケットゲット!
あと望むところは松屋銀座「小堀遠州」かな。
あべまつさん、年始の始動はいつに?
2日の東博ですか?
「宮廷のみやび」チケットが四枚も入ったのでよろしければ三越のと合わせてお送りしたいのですがー年賀状代りに/笑。
返信する
遊行 さま (あべまつ)
2007-12-22 22:36:47
こんばんは。
ナイス選択、のコメントありがとうございますです。

銀座を歩くと、ここはどこの国かと思うほど
外国高級ブランドが黒船状態。
その振り子が振られ、アタシはどっぷり
ジャポン、でした。
内省するのが日本の美学ですから、
自身も反省、あぁ、と無学を嘆くばかり。
でも、楽しい一年でした。
図録ランキングや、
美術館建築ランキングや、
アーティストランキングなどなど
遊びたいところですが、
野暮用が詰まって進みません。

松涛の寒山のチラシに呼ばれているところで、
来年早々に見に行くつもりです♪
返信する
oki さま (あべまつ)
2007-12-22 22:54:24
こんばんは。
体調不良という中、okiさん節の沢山の記事を楽しく読ませていただきました。
昨日、大丸ミュージアム行ってきたのですが、
催事場のような感じでちょっと残念。
デパートの中だし、仕方がないかもしれません。

年末年始の外出は、一応、家庭の主婦をしているのでおせちや、掃除などとりあえず年始の支度をするのです。
年明け学校や会社が始まれば、行動開始です(笑)
東博の2日はお楽しみな一日でしょうけれど、
家族で初詣ツアーに出かけることになりそうです。
松屋の「小堀遠州」気になりますね。
大好きな茶人です。
年賀状代わり??すばらしい企画です!
来年はきっと福来るですよ★
チケットの有効活用、よろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (meme)
2007-12-24 14:05:51
こんにちは。
いつもながらの美文にますます磨きがかかった
ようで、本当に感心いたします。
言葉の端々に教養が溢れ出ていらっしゃる。

ベスト10入りした展覧会の中では「澁澤龍彦ー幻想美術館」を見逃したのが私の心残りです。
富山県近美で彼のコレクションコーナーがあり、その美意識に関心を覚えました。

ご家族皆様で楽しいイブを!!!
返信する
meme さま (あべまつ)
2007-12-25 11:42:28
こんにちは。
美文、という思いがけないお褒めを頂き、
恐縮いたします。
ホントは言葉尻に冷や汗がじっとり滲んでるんですよ~~笑
澁澤龍彦はずっと私の中に潜んでいて、
敬愛する白洲正子氏の編集担当が
渋澤氏の二度目の奥方で
あれだけ西洋の暗闇にまみれた翻訳文学者が
日本文学に向き、日本美術にシフトしたのは
奥方の存在が大きかったろうと想像しています。
昭和に寺山ファミリーが炸裂したことが燦然としていました。
memeさんにも、メリー★クリスマス
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