あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

THE ハプスブルグ 記念講演会 その2

2009-09-30 16:43:54 | 海外美術
7世紀にも渡ったハプスブルグ家の歴史において、
ひときわ華やかだった時代が
マリア・テレジアの登場ではないだろうか?
あの11歳の時の肖像画。

この世にあんなに美しい女性像があるだろうかとさえ思ってしまう。
彼女の元に、ずっと彼女を支える影の人、
フランツ・シュテファンがテレジア6歳の時に現れ、
13年後に婚儀が行われた。
度重なる戦争などの国難にもずっと
お側で支え続けてきた人。
彼はテレジアに16人の世継ぎをもたらした。

・・・このようなことを知って、
なおのこと、
テレジアの美貌がハプスブルグ家を支えてきたのだと感じる。

講義の記録を続けよう。

今回、ギャラリー絵画というジャンルを初めて知ったのだが、
ハプスブルグ家の圧倒的存在を知らしめるには
効果的なやり方だったことだろう。
日本では屏風が海外友好の橋渡し役を担ったことも
思い出される。

ここで、レンブランドが登場する。
「読書する画家の息子ティトウス・ファン・レイン」(61)
レンブランドの絵をみると、荘厳な光の当たり方に
胸を打たれるのだが、
画題として、プライベートなシーンであることが特徴づけられる。

マリア・テレジアはカール6世の娘で、
カール6世に嫡男がいなかったため、
相続順位法を制定した。
「11歳の女帝マリア・テレジア」(3)
何度も言うようだが、本当に厳しさが溢れる美しさだ。

父カール6世がなくなった後、テレジアは
帝王学を学ばなかったにも関わらず、
玉座に座り、めざましい改革を着実に進めていった。
その証となる、重厚なテレジア肖像画の紹介。
テレジアのお気に入り画家がいた。
その人は、
ベルナルド・ベロット
「フィレンツェのシニョリーア広場」(35)
風景画、景観画を得意とし、
ベルベデーレ宮殿で働いていた。

ルーベンスの祭壇画
「聖フランシスコ・ザビエルの奇跡」
この絵はイエズス会の所蔵品であまりにも大きすぎるので、
ベルベデーレ宮殿に移されている。
この絵を見るには飛行機に乗って、現地入りするしかない。
しかし、ものすごい迫力だ。
フランダースの犬を思い出している私。

カラバッジョ「ロザリオの祈り」
絵画ギャラリーのために描いたもの。
ナポリで描いた。

最後に、
ハプスブルグ家の長大な歴史を一画面にした
天井画が紹介された。
最初の皇帝マキシミリアンが玉座に座り、
参加した宮廷画家達、
ルーベンス、デューラー、レンブラント、ヴァン・タイク
などなど。

20年かけて作られた美術史美術館。
その中に、ハプスブルグ家の遺産が絢爛に輝いている。

講義は約1時間半に渡り、厳かに進められた。
展覧会に出展されている作品ばかりでなく、
本拠地で輝いている豪華な絵画も紹介され
美術史美術館の所蔵、またはハプスブルグ家の
壮大なコレクションの一端を
かいま見ることができた。

あまりにも大きな王家、ハプスブルグ家。
世界の中で、双頭の鷲のもと、輝かしい時代を
作ってきたハプスブルグ家も次第に
時代の潮流に流され、
第1次世界戦争の渦に巻き込まれ、
ヒットラーがあのバルコニーで、
ドイツよ世界の頂点なれ。と遠吠えする時を迎える。

世紀末、ミュンヘン・ベルリンの狂おしい
退廃美術が腐敗のなかから輝きを誕生させた。
クリムト、エゴン・シーレの登場。

その大元に絶大なるハプスブルグ家の存在は
今でもオーストリア、ハンガリー、
ドイツ、イタリア、至る所に光を残している。

約7世紀もの歴史物語を
たった1時間半で感じるには
こちらの基礎知識が薄いことが残念ではあったが、
もしかしたら、
これはものすごい展覧会で、
歴史的瞬間なのかもしれないと後から思った。

もちろん、現地でつぶさに見る、体験する、
そういうことが大事なのだろうけれど。

権威と美術の力の共存は
今の時代でも見る人に計り知れない魅力を
与えてくれる。

展覧会会場での感想は、また改めて。
今年一番の重厚かつ絢爛展覧会であることは
間違いないだろう。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« THE ハプスブルグ 記念... | トップ | 皇室の名宝展 ・東京国立博... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (すぴか)
2009-10-01 00:19:50
こんばんは。
終わりまで一気に読みました。私もノートひっくり返しています。
天井画のお話しなんて息をのむようでした。
あれも前の展覧会の図録には大きな写真が載っていましたが、すばらしい絵でしたね。

それと35番のフィレンツェの風景、あれのせようと思ってみたら、ブタベスト美のほうだ
ったので違うかと思ってしまいましたが、やはりあの絵の説明だったのわかりました。
返信する
すぴか さま (あべまつ)
2009-10-01 21:22:44
こんばんは。

講義では、漏らさず聞こうと思ったのですが、お役に立てて、よかったです。他、勘違い、間違いがあったら教えて下さ~い。

この展覧会は奇跡だろうと思いますが、
実際はスケールの大きさに倒れ込んでしまうのではと思います。絵画はもちろん、工芸品や、建築の異常なほどの素晴らしさに言葉を失います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。