サントリー美術館といえば、ガラス展、そんな充実の展覧会の
メンバーズ内覧とスライドレクチャーに参加してきました。
そのためにメンバーになっているといっても良いくらい。
ガラス好きな友と参戦してきました。
ここの美術館でのガラス展覧は何度も通っていますが
どの回も見応えがあって、新鮮な切り口によって
ガラスへの魅力がまた一層深まるのです。
タイトルの副題に
紀元前14世紀から現代まで
ー酒器を通して見るガラスの歴史ー
ということで、ガラスの生まれたときから現代までの通史的
視点もあるということ。
ガラスが紀元前14世紀からあったということ、
改めてとてつもない歴史の中を生きてきたことがわかります。
レクチャーを拝聴する前に
会場をざっと流しましたが、
その会場作りの素晴らしさに大感激でした。
ガラス作品をより魅力的に感じてもらいたい、
その熱い思いが静かな光のステージに浮かび上がっていました。
セクションを示す角柱はガラスで出来たかのような質感で
ぼうっと白く光っています。
こういった丁寧な作り込みに感動を覚えます。
はやる心を鎮めてレクチャー講義に参加するために
6階へ移動しました。
講師はサントリー美術館の学芸副部長
土田ルリ子さん。ガラスのためにつけられてようなお名前です。
会場は熱心なファンで一杯となっていました。
メモの羅列になりますが、記録しておこうと思います。
*10年前に「ガラスの酒器」という展覧をしたが、
今回はドリンキンググラスとして酒器の置かれたシーンに分けて展示にした。
179件の国内のコレクションで、点数としては300点程度になっている。
また、今回は現代作家6名が参加している。(階下の吹き抜け)
*「捧ぐ」
ここでは緩やかな年代順に展示。
神に、王に、姫に権力者に捧げられてきたガラス。
ガラスは4500年前に発生し、3500年前頃器として生まれた。
元々は不透明で、青、茶、白色がつけられていた。
発見されたのはラピスラズリ―などのファラオ王様たちの貴石の代用品だった。
ガラスは貴重でそれ自体が捧げるものだった。
*コアガラス、という製法が一番古いもの。
(土や獣の糞を芯にしてガラスを溶かしながら巻き付け冷やした後に
芯を掻き出す製法)
王宮の中の工房で権力者に捧げられてきた。
*モザイク杯
金太郎アメのようなもので小さなパーツをつけ合わせたもの。
*権力者へ捧げたものとしてリュトンがある。
吹きガラスは角の代用で角形と頭をもったリュトンがある。
ギリシャ語で流れるという意味のリロから生まれた。
それはパワーを宿した水、酒を注ぐもの。
紀元前8世紀にようやく透明が生まれた。
中には土や、金属っぽいものがあるが、
もともとは透明であったものが銀化していった。
そしてガラスが痩せて土に帰ってゆく。
触るとほろりと崩れる儚さがある。
*正倉院展の瑠璃碗を同型なものがある。
ペルシアのお礼のものとして作られたが、
すべて銀化していて土の中に埋まっていたもので、
ケイサが主成分。
*辻清明コレクションから6件の出品
*「語らう」
夕飯後の酒を飲む時代、饗宴の時間、沢山のお酒が飲めるよう、
水で割るための酒器が登場する。
そのほとんどが磁器、金属の形を踏襲したもので、
とても軽いものだった。
*「誓う」
共に生き、戦う、婚礼などで使われたもの。
ボヘミア、ドイツなどでは総じて飲み干す量が多く、
回しのみの儀式では全部飲んでから注ぎ足す。
日本では少量、杯を見ればわかる。
秘密結社のマークがあったり、大きな器が滑らないように持つための
指が入るダウメングラスは高さ30センチあり、
両手で支え持つようになっている。
*「促す」
ステイタス、忠誠をアピールするための儀式用。
ドイツ、「フンペン」この巨大ガラスには
神聖ローマ帝国君主のシンボル、双頭の鷲がエナメル絵付けされている。
エナメル絵付けマイスターになるためには重要な絵柄だった。
回し飲みに作られた50センチ高のものでなみなみついで
また飲むを繰り返した。
*絵柄は有産階級でいるというステイタスをアピールするものだった。
*19世紀にはビーズ織を被せたものがあったが、
実用向きではない。
*「祝い、集い、もてなし、愉しむ」
20世紀のバカラ、リキュールセットは
金で発色させたヨーロッパ風のデザイン。
*野外ピクニック用
吉祥を占う柄、おめでたい文様を施した
日本らしい繊細な出来の提げ重。
*そして、今これから
現代のガラス作家6人の出品
松島巌 コアガラスの技法を研究し再現した作家。
関野亮 ヨーロピアンゴブレットの技を極めている。
由良園 ゴールドサンドイッチ技法をつかって
金沢で学んだ蒔絵漆器を表現。
中野幹子 エナメル絵付けで繊細な線を表現。
小川郁子 伝統技法を大胆に展開した江戸切子
高橋禎彦 吹きガラスでバリエーション豊かな酒器
*以上、179件のうち、80件がサントリー美術館所蔵のもの。
名品展としても楽しめる。
*酒器のコレクションが豊富なわけはサントリーはもともと
お酒の会社なので拘りもそこにある。
というあっという間のレクチャーでした。
こうしてみると人々が古代からガラスに魅せられてきた
時代の流れの上に立って、今も尚その虜になっていくその魅力が
世界中に広がっていったことを再認識させられました。
当たり前のガラスという魅惑的な素材を
あらためて堪能できる展覧会となっていました。
展覧期間は11月10日まで。
サントリー美術館のサイトはこちらから。
現代の松島巌さんの作品群はそれはもう、ガラスの万華鏡のように
美しい作品群でした。ガラスに魅せられた匠の技にため息でした。
サントリーのレクチャーでは展示品の解説に重点が置かれてたので、展示の趣向などは伺えませんでした。
音源は細い紐がカーテンのように下がっている三角コーナーの中から流れてまして、酒器を使っての癒やし場面でした。
会場の雰囲気作りは心地よい気配に満ちてましたね。次回の鳳凰堂も楽しみです。
今日、ガラス、グラス展覧会に行って来ました。
入り口がいつもと違うのと、四階出口付近に妙なる音楽が流れていて何事かと?
レクチャーで説明あったら教えてください!
しかし、ヴェネチィアから、ドイツから、日本から、古代ギリシァからよく集めたものですね。サントリーの実力グラスでも充分に。
さてさて、次は平等院鳳凰堂ですか、これまた楽しみです。