あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

文楽 粂仙人吉野花王・夏祭浪花鑑  ・国立劇場

2012-09-14 22:56:00 | 文楽

 大阪の椿事があって以来の文楽鑑賞。
 東京、国立劇場は憂慮なく沢山のお客さんで溢れていた。
 東でも熱烈応援、守ってやるぞ~っと想いも新に。

 舞台が開く15分前くらいに入ると
 「三番叟」に遭遇できる。
 今回はチラリ観ることが出来た。
 なんだか景気がよくなり、気持ちも高ぶる。

 久しぶりに会う知人達とのご挨拶は
 ご多分に漏れずに「本当に暑い日々、お元気でした?」

 さて、今回は
 ・粂仙人吉野花王
 ・夏祭浪花鑑

 粂仙人は聖徳太子の兄で、弟が政治を掌握していることの
 無念から仙人になったという謎な設定。
 大体物語のムリクリはお笑いなのだが、
 それはご愛敬で。
 そこに花ますという色香作戦の聖徳太子の密使がやってきて
 仙人が手に入れている三種の神器を奪い取りにやってくる。
 仙人と称しながらも女性(にょしょう)の色香の手に落ちる
 不甲斐なさに高野聖の坊さんも思い出したり。
 物語を追いかけるのではなく、
 その色香との戦い振りが一番の見所なのではと思えば、
 実は文楽は艶本が多い気がした。
 
 なにしろ語り始めが
 「分け迷う山路にかかる妄執の雲かと見れば
  煩悩の霧まだ深き有明の朱を争ふ衣手に
  御法の香の薄煙ろ遠山寺の鐘冴える、、、、」
 劇中花ますが披露する歌も
 「初花の露の情けのいささめに 酔いなすすめそ春の山風」

 仙人と花ますの衣装が真っ赤であったことも
 印象的だったが、まぁ女性の手練手管には
 恐れ入ったのだった。

 夏祭のほうは若干ややこしいが本当はもっと長い九段構成の芝居だったようだが
 今回は四段構成に。
 勧善懲悪と色恋物語が複雑に絡み合う人情世話物。
 ・住吉鳥居前の段
 団七が喧嘩して牢屋行きだったが釈放される日に
 今までの絡みがあった人々の再会で
 舞台の登場人物が明らかになってくる。
 団七の女房お梶が要となって
 恋路の末感動された色男を探す段取りとなる。
 団七と手を組んだお梶の奉公先の徳兵衛と
 片袖を交換し誓いを立てる。
 ・内本町道具屋の段
 団七と徳兵衛が行方を捜している、
 磯之丞は清七と名乗って道具屋の店の娘お中と恋仲に。
 その店で偽物の香炉を商売した事件が明るみになり
 道具屋の主から九郎兵衛、実は団七に清七を預ける。
 清七は夜更けに自分を陥れた伝八に恨みを晴らしに出るが、
 伝八がお中へ横恋慕し駆け落ちすることとなっていると知る。
 伝八の仲間弥市が分け前金を持って現れたところ、
 清七に殺されてしまう。
 そこに伝八が金を持って現れるが暗闇の中、
 清七を弥市と勘違いしてお中を託してしまう。
 二人は手を取り逃げる。
 ・釣船三婦内の段
 夏祭りの日に徳兵衛の女房お辰が現れ
 清七を匿っている三婦は弥市殺しの咎を案じて
 大阪に逃がすことを託したが、
 お辰の色香が問題と心配すると
 お辰は火鉢の鉄弓を顔に当てて色香を消そうと心意気を
 表したので、清七、磯之丞を預けることにした。
 恋仲の琴浦をさらいに来る一派と悶着するが
 団七、つまり九郎兵衛の舅が琴浦を籠に乗せて  
 連れて行ってしまう。
 騙されたと知った九郎兵衛が慌てて追いかける。
 ・長町裏の段
 九郎兵衛が舅、義平次を追いかけ、悪巧みに意見するが
 その後に及んでも金に執着することに
 いよいよ揉み合いとなり、
 血みどろの刀を振りかざす戦いを繰り広げる。
 そして、九郎兵衛はついに舅を殺してしまい
 祭りの掛け声に紛れその場を後にする。
 
 プログラムが詳細な解説を付けてくれているので
 そもそもの話を知らないで見ていると
 登場人物の関係図が不明で困るかと思うが、
 後からじっくり辿ると糸が解けてくる。
 夏祭りがだんじり祭りの事だったことを
 解説で知った次第。

 文楽の物語は大阪が舞台が多いけれど、
 今回は夜の部の冥途の飛脚のために
 古地図が付録でついてきた。
 堂島、淀屋橋あたりの舞台が
 実際運命の分かれ道だったキツネ小路なども
 梅川と忠兵衛の恋路と繋がるわけだ。

男のどうしようもないだらしなさとそれをヨシと潔く
受け入れる女の図は
都合がよすぎて現代の物語には色あせて見えたとしても、
実際はあまり男女の構図は変化していないのかも知れない。
8月に観劇した三谷文楽と続いた文楽鑑賞。
人間国宝、住大夫さん、三味線の鶴澤清治さん、人形の吉田文雀さん
大御所の休演がとても残念だったが、
一日も早いご快癒を祈念している。

 参考 第180回 文楽公演 平成24年9月 プログラム

公演千秋楽は9月24日(月)夜の部は冥途の飛脚がかかっています。
お時間が許される方はぜひ!

国立劇場のサイトはこちら

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゴーヤものがたり | トップ | トーハクから 秋便り »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。