あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

ルネ・ラリック ・国立新美術館

2009-06-27 16:53:09 | 海外美術
今回の展覧には、ラリックの作品がなんと、
400点あまりの展示!!!

ラリックといえば、ガラス工芸の巨匠で、
ガラスの香水瓶、花瓶、車のヘッドに付けるカーマスコット
後は、ジュエリー作家、として今も尚
多くの日本人ファンが愛好し続けている。

アールヌーボーの底にジャポニズムが流れているのだから、
日本ファンが沢山いることは当然。
しかし、400点あまりの作品が一堂に会する、
ラリックの展覧会はもう他にないのではないか。

庭園美術館や、上野の表慶館にぴったりの
作品達だが、これだけの数が集まると
さすがに収納しきれないだろう。

本展はジュエリー、ガラス工芸の2部構成。

第Ⅰ部 華やぎのジュエリー

 手のひらに乗る、小さなジュエリーと
 そのデッサンが隣り合わせに展示。
 何でも突然生まれるのではなく、
 周到な下絵、構想、そして作品への工程があって、
 一つの輝きが生まれるのだ。
 草木がアレンジされた、
 髪飾り(ティアラ)のジャポニズムがお気に入り。
 チラシに使われた、芥子のハットピンは
 本当に美しい作品。
 「雄鶏の頭」と名が付いたティアラは
 当初はイエローダイヤが付けられていたそうだ。
 それも凄いけれど、
 やっぱり、紫の巨大エメラルドが似合っている。
 これを頭に飾った人の写真が見たい。 
 ヌーボーの美しい絵画を見るようなものが続々。
 これくらい沢山のジュエリー作品を見るのは初めて。
 女性達は、わーわー言いながら、
 老いも若きもキレーキレーと目を輝かせていた。
 わたし?
 綺麗だけれど、ちょっと恥ずかしいし、
 とても似合いそうにないから、夫は悩み無用なのだ。

第Ⅱ部 煌めきのガラス

 ラリックのジュエリーが絶賛を集めると、
 次第に工業化の使命が生まれて、産業芸術へ変化していく。
 ガラスは日常の生活に欠かせない素材となり、
 透明の輝きを量産でき、人々の人気を集め、
 ますますそれを愛する人々の生活が麗しくなっていった。
 今の私達の生活にガラスがなかったら?
 休憩室でラリックの工房が紹介されていた。
 蝋の型から、ガラスの花瓶が生まれ、
 その後人の手によって、研磨され、
 色が付けられて行く様子。
 表慶館で、カルティエの美しい展覧があって、
 いたく感動したが、
 このラリックもこういった工房の作業シーンは
 とても興味深い。
 ラインもヌーボーから、
 直線的なデコラインに変化していくのも面白い。
 どちらかというと、デコが好み。
 従ってガレより、ラリックが好き。
 これは、光悦より、乾山が好きと似ているような・・・

 
 お馴染みの花瓶や、香水瓶の他に
 テーブルウェアがあったり、
 朝香邸の玄関にも飾られているような
 ガラスの装飾立像、
 化粧道具一式、
 カーマスコットの展示には、
 主役のように鍋島家所用だったイスパノスイザK6
 というめちゃくちゃかっこいい、
 クラッシックカーが威厳ある存在感で鎮座。
 あのとろけるような裸色は日本で作らせたのだそうだ。
 その車の鼻先に勝利の女神が光っていたのだ。
 当時、破損などを恐れて、到着寸前に取り付けたという
 エピソードは愉快で、つい鼻先で笑ってしまった。
 このコーナーの広さは、この場所があったからこそ。
 至る所に愛しい表情の小さな動物たち。
 草花。女性達、ロダンの彫像のような恋人達。
 愛が溢れている。

 テーブルウェアの所では、
 透明な薄造りのグラスやら、燭台、調味料入れなどが並ぶが、
 トウキョウ、コウベ、ニッポンなどのシリーズで、
 何処がニッポンなのか?
 そう思う側から、あぁ、大仏のぐりぐり頭かぁ、
 と思い当たって、ちょっと受けた。
 あのグラス!頂きたい、そういうものが何点か。
 これで、多彩なるラリック村から向け出してゴール。

ともかく展示品が多くて、大変。
大きなガラス会社の展示会、のようでもあった。
だとするなら、お客様にどれを仕入れするか
お気に入りリストアップベストテン!
など面白企画があっても良さそう。
ワクワクをもっと煽るイベントが欲しいなと思った。

話はちょっとそれるが、先日BSハイビジョンで、
中国の玉の番組があって、超絶美を堪能した。
あの国は玉、石だった。
内側に光る石を重用した。
それに対して、西洋は外側に光る宝石、ガラスを
好んだ。
それぞれの国の光りの求め方は興味深いものだと
ラリックを見て、また思った。

会期は長く、9月7日まで。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
noel さま (あべまつ)
2009-07-10 18:05:45
こんにちは。

ご覧になった興奮が伝わってきます。
女性達がうっとりするツボをしっかり掴んだ、
そんな感じがしました。
キラキラはときめきますものね★
ゴウジャスな時代ですねぇ。
返信する
酔いしれました (noel)
2009-07-10 12:00:41
行ってまいりましたが期待値の数倍以上に良かったです!
もしかしたら私の後半期や年間ベスト10にも入るかもしれません...
一人で二つの分野を極めたってすごいですよね!
返信する
oki さま (あべまつ)
2009-06-29 21:55:01
こんばんは。

東京新聞の社運がかかっているのですか!
グルベンキアン美術館のことは、私も知りませんでした。
ラリックファンはまだまだ見たこともない作品があると知って、驚かされるのだと思います。
どことはなしにジャパンが香っていましたね。
返信する
Unknown (oki)
2009-06-28 22:48:05
東京新聞が社運をかけてやっている展覧会ですからね!
当方新聞販売店からチケット4枚貰いましたが、販売店によると押し付けられた枚数がすごくてまだ余っているそう!
僕は開催2日目に行きましたが、実業家グルベンキアンとははじめて聞きます。
グルベンキアン美術館があるとは!
最後のコーナー、日本にヒントを得てラリックが作った作品、トウキョウとかコウベとか本当に日本への愛着があって良かったですね。
返信する
Tak さま (あべまつ)
2009-06-28 00:18:41
こんばんは。

了解を頂けるものととっととリンク貼らせて頂きました。さすがの記事です。
本当に圧倒的な量で、
休憩しながら、
迷路のようでした。

個人作家から、ブランド化していく時代、
産業革命と共に生きた、そんな感じですね。
返信する
圧倒的な量 (Tak)
2009-06-28 00:13:58
こんばんは。

リンクまで貼っていただき感謝感謝です。
400点。実際の展示数はもっとありましたね。
2000㎡の空間あってこそ。
しかもメリハリの効いた展示で
最後まで飽きさせることない工夫も。

それにしても、ラリック幅広いですね。
その活躍。
返信する
遊行 さま (あべまつ)
2009-06-28 00:13:51
こんばんは。

ほほう、さる和菓子屋さんとは黄色と黒の縞が似合うお店ですか?
手作りの方がものつくりしてて、
ステキなのですが、人々はそれをさせてくれない。そんな嬉しつらしがありますね。

デコ好みが通じて、嬉しいです!!
たっぷりありますから、ご堪能頂けるかと。

8月、また関西ツアーという恒例が
待っているようです。
東下りと上洛で、すれ違いかしらん。
返信する
いしい さま (あべまつ)
2009-06-28 00:07:21
こんばんは。

ご無沙汰でした。
「日本美術の歴史」これは、本当にお役立ち本です。これからどんどん日本画の底無し沼にお入りかと。辻惟雄先生の著書は面白い本が沢山です。奇想、図譜のセットは永久本でっせ。
文章もツボ入り間違いなしです。
返信する
Unknown (遊行七恵)
2009-06-27 23:54:25
こんばんは
>絶賛を集めると、 次第に工業化の使命が生まれて、産業芸術へ変化していく。
ああ、その実感がありました。
今日、さる和菓子屋さんの工場を見たのです。
それと同じかもしれません。

>デコが好み。 従ってガレより、ラリックが好き。 これは、光悦より、乾山が好きと似ているような・・・
わたしもそうです♪

8月に行きます。楽しみやわ~
返信する
Unknown (いしい)
2009-06-27 19:38:04
ご無沙汰しています。前回教えていただいた「日本美術の歴史」を入手しました。就寝前にパラパラとめくりながら楽しんでいます。先日、仕事で千葉県にある国立歴史民俗博物館に行ってきました。はじめていったのですがとてもおもしろいところです。あまり時間が無く、ゆっくり見ることはできなかったのですが、第2展示室で「洛中洛外図屏風」を発見し、夢中になってみていました。ここにこれがあることを予備知識としてまったくもっていなかったので、「おーっ!」という感じです。同行者はほとんど興味を示さずに通過していきましたが。
帰ってから「日本美術の歴史」を開いてみるとちゃんと252、253ページに載っているではないですか。またまた嬉しくなりました。いい本を紹介していただきました。
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