展覧会はすでに終了してしまったが、
ともかく鑑賞の記憶を留めることにした。
一歩踏み入れた時のザワザワがまだ体中に残っているようだ。
展覧会情報はなるべく入れずに行くのが私流で、
おおよそだいたいな程度で現地入りしますが、
驚きました!!
千葉美の2フロアーを全部埋め尽くされた250点余りの作品群。
行けども行けども終りが見えない。
他から借りた作品は50点程度、
あとは全部千葉美所蔵!!
浮世絵コレクションの名だたる美術館、故か、
収集にただならない情熱を感じた。
出口の見えない迷路にはまったような具合。
頭を整理するために記録。
第一章 祝福された四季
・森寛斎 四季花鳥図 明治から幕末
日本人の愛する四季、花、鳥たち。
その姿だけでも安寧が得られる。
まさにウェルカムボードだった。
・竪山南風 草花図
・竹内栖鳳 春暖
これは土筆が2本だけが描かれていて、
こんな平和な春があるだろうかと思った。
・星 襄一 こぶし
一本の立派なこぶしの木が今真っ白に色めく。
・吉田 博 雲井桜 佇む女性の姿が夜桜に溶け込む。
あちこちで花が咲く景色が続く。
冬から春、夏、秋へと移ろう。
そして、景色へ。
・川瀬巴水 旅みやげシリーズ他。
三十間堀から谷中、陸奥、金沢、佐渡、しおがま
増上寺などなど日本のあちこちの景色。
・椿 貞雄 春夏秋冬極楽図
鉄斎の童画のような墨画。
子どもたち(童といいたくなる)がスイカを頬張っていた。
第二章 わたしの庭
庭と言っても小さな、卓上だったり。
・川上澄生 朴の花とポット
川上澄生展が世田谷美で開催されていたが
都合がつかず、嘆いていたが、ここで
少々の挽回か。ウレシイ遭遇。
・富本憲吉 卓上
陶芸家である彼もじつはこんなこともやっていたということ。
とてもあっさりと味のある版画で、
「卓上」誌の表紙を飾っていた。
第三章 粧う花々
粧う花は女性たちのことで、美人たちがリニューアルオープンを
祝ってくれている。
・橋口五葉 化粧の女
チラシを飾った文句の言いようの無い存在感。
五葉の女性たち4人が並ぶと、恐れ多い気がする。
・山本昇雲 今すがた シリーズもの。
窓絵の仕組みが面白く、登場する女性たちは
幼さがまだ残っていて、いじらしい。
シリーズ全部を見てみたい。
・伊東深水 新美人十二姿 シリーズもの。
これも、シリーズものだが、
ずっと大人の女性たち。健康的なあでやかさ。
・小早川清 近代時世粧ノ内 シリーズもの。
小早川描く女性の瞳がぐっと近代化を感じさせる。
レンピッカ、とまでは言わないにしても主張が
ちらちら。
・鏑木清方 春の野辺、夏の雨
サラリと気品のある立ち姿。
・小村雪岱 蛍
雪岱の独特な体の線。蛍を追いかける女性の腕がなまめかしく光り、
その先で蛍は力いっぱいボウと光る。
第四章 舞台の華
役者絵の堂々たる連なりに、おぅと声が出てしまった。
・山村耕花 梨園の華 シリーズ。
彼の描く役者の存在感たるや、他の人の追随をさせない。
粋!!ジャンバルジャンと再会の喜び。
初代鴈治郎はいい男っぷりだったのだろう。
・名取春仙 春仙似顔絵集
此の人の役者絵は実に華やか。
惚れ惚れする。
時に度肝を抜かれる。
・吉川観方 観方創作版画第壱集
上方の版画家で、色使いが美しい。
しっとりしている。
・竹久夢二 新富座当たり狂言 忠兵衛と梅川
近松の心中物のどう仕様も無い情けなさが
よくにじんでいる。
第五章 返り咲く錦絵
日本で浮世絵を学んだ外国作家たちの登場。
・ヘレン・ハイド
・パーサ・ラム
・エリザベス・キース
・エミール・オルリク
・フリッツ・カペラリ
・チャールズ・バートレット
一括りでは申し訳ないが、海外から浮世絵に憧れた作家たちが
日本でその技を磨いた。
みんな広重や北斎に憧れたんだろうと思うと、
なんだか心がぽっとする。
フラット、という捉え方はなかなか難しいのだろうな、とも。
第六章 花の都
いろいろな作家たちが東京の景色を捉えた。
知らない作家もまだまだいるものと。
以前から気になっている
・藤森静雄
・織田一磨
・戸張孤雁
なども現れて嬉しい。
・平塚運一 雪のニコライ
これは今ニコライ堂あたりが大工事で、
ちょっとした新しい風景。
がっぱりとビルが壊された向こうにニコライ堂が聳えて見える。
あの時の景色と、同じその景色が現れると
なんだか話がしたくなるものだ。
近代化が進むと、芸妓からダンサーが登場するのも面白い。
第七章 花模様
・山本昇雲 今すがた シリーズもの
再度今すがたのシリーズもの。
やっぱりこの窓絵の仕組は可愛らしい。
・神坂雪佳 百々世草
高島屋のお歳暮の看板に使われた百々世草。
近代の琳派といわれ、雪佳も全国に知れた。
なんともまったりとした画集なのだ。
・竹久夢二 夢二画集
さまざま誌上を飾った夢二の作品。
弥生美術館にもその作品を沢山鑑賞できる。
・橋口五葉 手拭の女
五葉の描く裸像の女性たち、着物や襦袢を羽織っての登場。
彼好みの女性像が何となく伝わる。
装丁・挿画
明治大正期は本の装丁に相当な力が注がれている。
その証明として五葉の仕事が紹介される。
夏目漱石の様々な装丁を手がけた 五葉。
・棟方志功 萬朶譜
朴訥な志功の松竹梅3作品が並ぶ。
なんだか、ホッとする太さがある。
第八章 季節はめぐる
こうして季節はめぐり、終の時がやってくる。
・横尾芳月 線香花火
夏が終わるときの線香花火が儚さを深める。
じりじりと音を立てて、ポッと落ちる。
ほんの瞬間華やかだった時を残して。
・藤森静雄 けし
とても怪しげな芥子、一輪。
劉生の筆の充実を思い起こすが、
存在感ある一輪だった。
・長谷川潔 バラ
真っ黒なしっかりした線でバラを描く。
ずっと咲き続ける命を閉じ込めて。
インクの匂いがまだ残っていそうな黒なのだ。
ここまで、ざっと取り上げたのは、ごく一部で、
これらが並んだ姿は壮観だった。
それがまた入場料がたったの200円。
千葉県民でもないのに。
市川には20年近く住んでいたけれど。
いやはやよくもこんな企画展を。
素晴らしい展覧会をありがとう。
リニューアルオープン、心からお祝い申し上げます。
館長の小林忠先生はますます鼻息を荒くして、
千葉美からものすごいエネルギーを日本だけではなく、
世界中に放って欲しいと願ったのでした。
次回はこれまた若冲のワンダーランド。
いや、アナザーワールド。
ここしばらくは千葉美から目が離せなくなります。
ともかく鑑賞の記憶を留めることにした。
一歩踏み入れた時のザワザワがまだ体中に残っているようだ。
展覧会情報はなるべく入れずに行くのが私流で、
おおよそだいたいな程度で現地入りしますが、
驚きました!!
千葉美の2フロアーを全部埋め尽くされた250点余りの作品群。
行けども行けども終りが見えない。
他から借りた作品は50点程度、
あとは全部千葉美所蔵!!
浮世絵コレクションの名だたる美術館、故か、
収集にただならない情熱を感じた。
出口の見えない迷路にはまったような具合。
頭を整理するために記録。
第一章 祝福された四季
・森寛斎 四季花鳥図 明治から幕末
日本人の愛する四季、花、鳥たち。
その姿だけでも安寧が得られる。
まさにウェルカムボードだった。
・竪山南風 草花図
・竹内栖鳳 春暖
これは土筆が2本だけが描かれていて、
こんな平和な春があるだろうかと思った。
・星 襄一 こぶし
一本の立派なこぶしの木が今真っ白に色めく。
・吉田 博 雲井桜 佇む女性の姿が夜桜に溶け込む。
あちこちで花が咲く景色が続く。
冬から春、夏、秋へと移ろう。
そして、景色へ。
・川瀬巴水 旅みやげシリーズ他。
三十間堀から谷中、陸奥、金沢、佐渡、しおがま
増上寺などなど日本のあちこちの景色。
・椿 貞雄 春夏秋冬極楽図
鉄斎の童画のような墨画。
子どもたち(童といいたくなる)がスイカを頬張っていた。
第二章 わたしの庭
庭と言っても小さな、卓上だったり。
・川上澄生 朴の花とポット
川上澄生展が世田谷美で開催されていたが
都合がつかず、嘆いていたが、ここで
少々の挽回か。ウレシイ遭遇。
・富本憲吉 卓上
陶芸家である彼もじつはこんなこともやっていたということ。
とてもあっさりと味のある版画で、
「卓上」誌の表紙を飾っていた。
第三章 粧う花々
粧う花は女性たちのことで、美人たちがリニューアルオープンを
祝ってくれている。
・橋口五葉 化粧の女
チラシを飾った文句の言いようの無い存在感。
五葉の女性たち4人が並ぶと、恐れ多い気がする。
・山本昇雲 今すがた シリーズもの。
窓絵の仕組みが面白く、登場する女性たちは
幼さがまだ残っていて、いじらしい。
シリーズ全部を見てみたい。
・伊東深水 新美人十二姿 シリーズもの。
これも、シリーズものだが、
ずっと大人の女性たち。健康的なあでやかさ。
・小早川清 近代時世粧ノ内 シリーズもの。
小早川描く女性の瞳がぐっと近代化を感じさせる。
レンピッカ、とまでは言わないにしても主張が
ちらちら。
・鏑木清方 春の野辺、夏の雨
サラリと気品のある立ち姿。
・小村雪岱 蛍
雪岱の独特な体の線。蛍を追いかける女性の腕がなまめかしく光り、
その先で蛍は力いっぱいボウと光る。
第四章 舞台の華
役者絵の堂々たる連なりに、おぅと声が出てしまった。
・山村耕花 梨園の華 シリーズ。
彼の描く役者の存在感たるや、他の人の追随をさせない。
粋!!ジャンバルジャンと再会の喜び。
初代鴈治郎はいい男っぷりだったのだろう。
・名取春仙 春仙似顔絵集
此の人の役者絵は実に華やか。
惚れ惚れする。
時に度肝を抜かれる。
・吉川観方 観方創作版画第壱集
上方の版画家で、色使いが美しい。
しっとりしている。
・竹久夢二 新富座当たり狂言 忠兵衛と梅川
近松の心中物のどう仕様も無い情けなさが
よくにじんでいる。
第五章 返り咲く錦絵
日本で浮世絵を学んだ外国作家たちの登場。
・ヘレン・ハイド
・パーサ・ラム
・エリザベス・キース
・エミール・オルリク
・フリッツ・カペラリ
・チャールズ・バートレット
一括りでは申し訳ないが、海外から浮世絵に憧れた作家たちが
日本でその技を磨いた。
みんな広重や北斎に憧れたんだろうと思うと、
なんだか心がぽっとする。
フラット、という捉え方はなかなか難しいのだろうな、とも。
第六章 花の都
いろいろな作家たちが東京の景色を捉えた。
知らない作家もまだまだいるものと。
以前から気になっている
・藤森静雄
・織田一磨
・戸張孤雁
なども現れて嬉しい。
・平塚運一 雪のニコライ
これは今ニコライ堂あたりが大工事で、
ちょっとした新しい風景。
がっぱりとビルが壊された向こうにニコライ堂が聳えて見える。
あの時の景色と、同じその景色が現れると
なんだか話がしたくなるものだ。
近代化が進むと、芸妓からダンサーが登場するのも面白い。
第七章 花模様
・山本昇雲 今すがた シリーズもの
再度今すがたのシリーズもの。
やっぱりこの窓絵の仕組は可愛らしい。
・神坂雪佳 百々世草
高島屋のお歳暮の看板に使われた百々世草。
近代の琳派といわれ、雪佳も全国に知れた。
なんともまったりとした画集なのだ。
・竹久夢二 夢二画集
さまざま誌上を飾った夢二の作品。
弥生美術館にもその作品を沢山鑑賞できる。
・橋口五葉 手拭の女
五葉の描く裸像の女性たち、着物や襦袢を羽織っての登場。
彼好みの女性像が何となく伝わる。
装丁・挿画
明治大正期は本の装丁に相当な力が注がれている。
その証明として五葉の仕事が紹介される。
夏目漱石の様々な装丁を手がけた 五葉。
・棟方志功 萬朶譜
朴訥な志功の松竹梅3作品が並ぶ。
なんだか、ホッとする太さがある。
第八章 季節はめぐる
こうして季節はめぐり、終の時がやってくる。
・横尾芳月 線香花火
夏が終わるときの線香花火が儚さを深める。
じりじりと音を立てて、ポッと落ちる。
ほんの瞬間華やかだった時を残して。
・藤森静雄 けし
とても怪しげな芥子、一輪。
劉生の筆の充実を思い起こすが、
存在感ある一輪だった。
・長谷川潔 バラ
真っ黒なしっかりした線でバラを描く。
ずっと咲き続ける命を閉じ込めて。
インクの匂いがまだ残っていそうな黒なのだ。
ここまで、ざっと取り上げたのは、ごく一部で、
これらが並んだ姿は壮観だった。
それがまた入場料がたったの200円。
千葉県民でもないのに。
市川には20年近く住んでいたけれど。
いやはやよくもこんな企画展を。
素晴らしい展覧会をありがとう。
リニューアルオープン、心からお祝い申し上げます。
館長の小林忠先生はますます鼻息を荒くして、
千葉美からものすごいエネルギーを日本だけではなく、
世界中に放って欲しいと願ったのでした。
次回はこれまた若冲のワンダーランド。
いや、アナザーワールド。
ここしばらくは千葉美から目が離せなくなります。
>「ほっかむりの中に日本一の顔」
そんなふうに評判になって川柳に読まれたのなら、いい男も納得です。
歌舞伎の色男もシャンとせんやつが多くて。
そういう奴がまた物語になるんですよねぇ。
見ごたえガッツリな展覧会でした。
なかなか千葉まで行かれずにジリジリしてましたが、思い切って行って本当に良かったです。
あの時代の情熱が伝わってきるようでした。
繊細でナイーヴで、可憐で情感のある絵、
それらが怒涛のように押し寄せてきて、
へとへとの嬉しい悲鳴、でした。
>初代鴈治郎はいい男っぷりだったのだろう
「ほっかむりの中に日本一の顔」
そんな川柳がありました。
夢二も芝居は上方芝居を見て育ってるわけです。本人も優しさが多くてシャンとせず、ずるずる・・・まるきり近松なキャラですねぇ。
それにしても凄い展覧会でした。
登場し、至福の時を過ごすことができました。
だからまた新たな発見があって、とても
嬉しかったです。