あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

12月のアート鑑賞

2013-12-25 23:28:19 | アート鑑賞記録
 慌ただしい、師走の最中、町中がXmasだ、お歳暮だ、お正月だ、ボーナスだと
 経済効果をねらっての商戦逞しいけれど、
 その手にはのらじと平静を装って見てきたもの、回顧します。

 5日 
 *東京国立博物館 東洋館
  東博所蔵の17世紀明本「清明上河図」
  あの熱狂を思い出しながらずらっと展示された巻物を鑑賞。
  食いついてみている御仁がいらしたのでした。
  「狩猟風俗図」馬の跳躍など、江戸期の狩猟図屏風などを彷彿した
  躍動感溢れる絵巻物でした。



 *ミュージアムシアター
  上映開始まで時間があったので、その間に東洋館をざっと流して見ました。
  本編は岩佐又兵衛の洛中洛外図舟木本を鑑賞するための参考となったことでしょう。
  東洋館に照らされた3Dプロジェクションマッピングにも又兵衛さん大活躍な年でした。
  コピー屏風が裸で展示されていたので、5センチ前に迫ってじりじり睨んでみました。
  京都展、もはやあの賑々しさが遠くに感じました。





 *秋の庭園解放
  黄昏れる人気のない東博の名残の紅葉を楽しみました。
  あの黄色のベンチは?移動カフェも早々にお片付けしてまして、
  商売っ気のない事でした。






     
 *本館
  いつも武具のコーナーは丹念に見ませんが
  樫鳥糸肩赤威胴丸(かしどりいとかたあかおどしのどうまる)

  これをミュージアムシアターでお勧めされたのでチェック。
  縁はめぐるで、ひょいと見たら岩佐又兵衛さんが
  万葉の歌人、山部赤人の肖像描き、後陽成天皇が賛を添えた
  作品を見つけました。
  又兵衛は天皇家とも縁がある存在だったのかと恐れ入ったのでした。



  浮世絵コーナーに銅版画のような亜欧堂田善の作
  「三囲の図」(みめぐりのず)が展示されて驚きました。


  彼は松平定信に銅版画制作を頼まれていたのだそうで、
  かの谷文晁と同じ世界に住んでいたのでした。
  そのことは「描かれた風景」の展示でも二人が関係していたのも
  東博の企画にぐっときたのでした。
  毎回、いつも安定のハイレベルな展示、所蔵品、企画に今年も沢山巡り会えました。
  私の美術鑑賞はここだけで良いと思う最愛の場所です。
  来年もまた、初詣でから楽しみにします。     













 11日
 *「江戸の狩野派」出光美術館
  今年は山楽・山雪に会いに京都まで行ったこともあって
  いつになく狩野派を鑑賞出来ました。
  時代の流れとともに江戸に拠点をもった狩野派が探幽を筆頭に
  御用絵師としての力を存分に発揮したその陰で
  探幽の兄弟、尚信、安信の作品を確認していなかったので、
  とても良い機会でした。
  特に、尚信のしなやかかつ大胆な筆致にすっかり魅せられ、
  彼の息子、常信の波頭図にはドキドキさせられました。
  探幽の天才振りには毎回舌を巻くのですが
  「叭々鳥・小禽図屏風」の破墨ばっさりの水墨屏風にはうなりました。
  山雪の息子、永納の華やかさに豪奢な京都を感じました。
  出光美術館の企画の秀逸さには毎回ワクワクしてきました。
  あのサイズ、出品数もほどよいところも安定感を感じます。
  来年早々は板谷波山。釉薬の追求とあのマットな不透明なベールをかぶった
  艶めかしいやきものをこの目で確かめたいと思います。

 *「三菱美術館名品選2013」三菱一号美術館
  今回は三菱の名品がずらりです。
  ルドンのモノクロ版画に物語のシーンを想い、
  ロートレックの切り取りと色使いに廃退のパリの路地を想います。
  点描画の流れもあって、今年は光の分離を辿る一年であったように感じました。
  最後にルドンの「大きな花束」が青白く輝いて
  三菱自慢の逸品だと晴れ晴れしい展示となっていました。
  ダイジェストになった小冊子が便利でした。
  ここのショップは毎回危険度高くてついつい散財してしまいます。
  洋館に訪ねた気分になる処ですが、ようやくこの地に落ち着きを持って
  定着してきたように思います。
  前回の浮世絵展の展示も素晴らしかったこと、二回通いました。

 *「驚異の部屋」インターメディアテク JRタワー
  今年、オープンした東京駅前のKITTE JRタワーに
  インターメディアテクミュージアムが入りました。
  その噂は知っていたのですが
  目の前にその博物館臭が漂った瞬間、我を忘れて吸い込まれていきました。
  かつての大学が博物の宝庫でその建築もすでにアンティークの香りがしているだけで
  私の意識は理科室の憧れに通じる廊下を歩き出します。
  世界中の不思議をこれだけ集めた展示を落ち着いて見られるわけがありません。
  動植物の形を重厚な工芸品的陳列棚に並べ、その美醜を晒すのです。
  蝙蝠の骨格の美しいこと。
  登りワニ、下りワニを配したり、
  コインの陳列には明治期からの古銭と共に、
  こともなげに、あの赤瀬川源平さんの問題作、偽札事件のお札も。
  こういうセンス、たまりません。
  こちらは入場無料で、月曜日が休館。
  獣虫剥製など苦手な方はご注意を。
  本郷の方もまた行ってみたくなります。
  東京駅、KITTE、丸ビル、新丸ビル、オアゾ、大変な丸ノ内商業地域ですが
  どことなく落ち着いた大人の香りがします。
  新装駅舎もオープンの賑わいが収まり、人をかき分けて歩かずに済むようになりました。
  KITTEにはまだ知らないエリアがあるので、日本の食探検にも行かねば、と思っているところです。


 14日
 *クレラー=ミュラー美術館蔵作品を中心に
  印象派を超えてー 点描画の画家たち
  ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 国立新美術館
  印象派にあまり愛を感じてないので、ふ~んと思っていたのですが、
  大学時代の友が一緒に見ようと誘ってくれたので、行ってきました。
  本当に見ないうちに興味を示さなかったことに深く反省しました。
  とても見応えがあって、1本筋が通ったコレクションの目の持ち主、
  へレーネさんの存在に感動しました。
  彼女がいなければ、ゴッホやモンドリアンたちの才能は路頭に迷ったままだったことでしょう。
  誰もまだ気がついていない時代の先駆者たちをサポートすることこそ、
  セレブの王道なのではないでしょうか。
  来年からは広島での開催です。展覧会サイトはこちら
  漠然とした点描画の時代の流れをスクロールするように見る事が出来たのでした。
  スーラとシニャックの途方に暮れそうな色の分割の試行にうなだれるのですが、
  後のゴッホは彼らからの影響をうけてあのような色を置く手法を身につけたのでした。
  そして、その展開はモンドリアンという人によって
  もっと大胆に光の粒子は拡大され、広がっていくのでした。
  ベルギー、オランダの点描を描いた画家たちの存在も知りました。
  光の小さな粒の集まりがどれだけ試行錯誤を繰り返されてきたのか、
  途方もない道のりを辿るようでした。
  東京駅ステーションミュージアムのベルギーの印象派エミール・クラウスにも
  繋がり、光のとらえ方が様々だと教わった一年でした。
  そうはいってもゴッホの近くにあったゴーギャンがいいなと喜ぶおまけも嬉しかったのでした。
  国立新美術館は天上の突き抜けた巨大なスペースがご馳走。
  巨大タペストリーや、アメリカンポップなどにも最適な場所だったように思いました。 

 *「天上の 飛天の舞」サントリー美術館
  メンバーの内覧で一通り鑑賞したのですが、遠来の友をぜひにと引っ張ってきました。
  一度見た展示ではあってもまた新鮮な対面が出来ました。
  何度行っても見ても、発見があるのかも知れません。
  浄土に無事導かれますようにと二人で結縁にすがってなでなでしてきました。
  これからは仏様のまわりにはいつも飛天、迦陵頻伽たちが優美に舞っていることを
  夢想してより華やかな世界を嬉しく眺めることにします。
  サントリー美術館は毎回美しい心配りが行き届いていて感心します。
  来年もまた六本木に通うこととなりましょう。
  企業美術館の裾野を広げる様々な活動に敬意を持ちます。
  日々の生活のすぐ側にキラキラするものがあるのだと気付かせてくれます。
        
 *日本のデザインミュージアム実現にむけて展  21_21 DESIGN SIGHT
  久しぶりに21_21に入りました。
  三宅一生氏がかねてよりデザインの美術館を目指していることを
  この21_21からの発信で漠然と感じていました。
  そういえば、現代の工芸デザイン美術館、その存在がない事、改めて
  気がつきます。なんて落とし穴でしょう。
  開館した2007年からの展示ストーリーをアーカイブ的展示で
  デザイン表現に情熱を傾けてきたアーティストの願いであったことも
  改めて知ることとなりました。
  もともとデザインの国なのに、それを広める美術館がないなんて。
  どうか、沢山の人々の英知が集まり、機運とともに
  日本人がデザインの国の人だということを誇りに思う場所が出来ますように。
  この建物、そのものがデザインのギリギリを証明しているところが
  中にいるだけでテンション上がります。
  会期は来年の2月9日まで。









 19日
 *映画「利休にたずねよ」
  年の初め、歌舞伎界の巨星がまた天に消えました。
  海老蔵の父上、團十郎丈。
  その父息子が最後に共演した映画、「利休にたずねよ」
  運良くお誘いを受けて早々に見る事が出来ました。
  海老蔵の利休、その師匠、武野紹鴎を團十郎が演じました。
  今回の利休には利休の若かりし頃の純情が織り込まれた
  フィクションなのですが、團十郎さんのいるだけの存在感に
  大きさを改めて深く思いました。
  破格の茶道具がこともなげに登場し、ギョッとします。
  映画のサイトでホンモノの登場ということを確認して
  二度驚きました。それをお願いしたのも海老さまだったとか。
  それに応えた当代楽家の吉左衞門さんもまた大きな方。
  四百年前の長次郎が海老蔵の手の中でお茶を含んで場面をぐっと
  重厚に引き寄せていました。
  秀吉の大茶会ではなんと、細川護煕氏の作の黒楽茶碗。
  これからご覧になる方、茶道具の登場に大注目です。
  「美」というものにとらわれた茶人の生き様は
  今も尚、私たちの憧れを集めて止まないのでした。
  映画のサイトはこちら

 今月は、企業の華道部のアシスタント、いけばな稽古、
 文芸誌事務サポート、新進女流日本画家お二人との会食(あんみつ会)
 などなど豊かな時間を過ごすことが出来ました。
 いよいよ愚息の受験が本番を目の前にして緊張が高まってきました。
 しばらくは彼のサポートに回ることになるでしょう。
 彼の人生最初の頑張りを応援したいと思っています。
 素敵なクリスマスの夜、近い将来の大学生に夢を☆  

 KITTEの大きなもみの木の移り変わりを見てきました。
 あっという間のショータイムでした。
 色の変化を残してみます。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 天上の舞 飛天の美 ・サン... | トップ | 2013年 アート展覧会ベスト10 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。