あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

トランスフォーメーション・東京都現代美術館

2011-01-30 13:12:14 | 美術展
そもそも、あの現美の建物が好きだ。
あの壮大な空間の中で繰り広げられる
現代の玉手箱は、現世を映し出す万華鏡。

それもタイトルは倒錯の「トランスフォーメーション」

気になったアーティストを追いかけて記録することにした。

その前に、この展覧会の概要をコピー
そういうことだったのかという一文です。

*東京アートミーティング トランスフォーメーション  展覧会概要

[中沢新一・長谷川祐子 共同企画]
生きることは変わること。細胞や知識の更新、時代、環境との出会い、また想像力によって、日々私たちは変わっていきます。
この展覧会は、「変身-変容」をテーマに人間とそうでないものとの境界を探るものです。古今東西、変身をテーマにしたイメージや芸術は多くつくられてきました。特に日本においては、昔話から現代の漫画やアニメのキャラクターに至るまで、豊かなイメージが溢れています。
では今、なぜ「変身-変容」なのか?インターネットやグローバル経済、テクノロジーの発達によって、従来の社会に属する「人間」という形がぶれはじめ、その存在には、かつてないほどの多様性が生まれつつあります。
本展では、動物や機械、想像上の生き物、異なる遺伝子組成をもつ体など、人とそうでないものの間を横断する多様なイメージが、絵画、彫刻、映像、アーカイヴ、シンポジウムなどを通して展開されます。そこで表現される「変身-変容」する形は、私たちの夢や希望、おそれをひとつの予兆として映し出します。1980年代から現在にわたり15カ国21組のアーティストたちによってつくられた作品を通して、今、変わることの可能性と意味を伝えます。

東京アートミーティングとは
現代アートを中心に、デザイン、建築などの異なる表現ジャンル、およびその他の専門領域が出会うことで、新しいアートの可能性を提示します。第一回目は、「トランスフォーメーション」のテーマのもと、アートと人類学が出会います。東京藝術大学とも連携し、「東京藝大トランスWEEKS」として、将来世代の育成を図るための展示、パフォーマンス、シンポジウムなどを開催します。

  ***

中沢新一と長谷川祐子このツートップがすでにトランスフォーメーションしている。

人類学とアートとの出会い。

人間は長い歴史を踏んで宗教とか権威とかエロスとか男女、ジェンダーとか
その国、土地、民族、自然のなかで生きている。
自ずと不協和音が生まれてくる。
アートに変化する。
その変形を見ることで、ざわついたり、安堵したりで視覚から
強烈な刺激を受ける。
受けた後に、もしやこれを望んでいたのは自己の中に何かが、
沸々していたのではないかと途方に暮れたりもする。
その作品と共に暮らして生活に安心を手にれたり、
刺激を常駐させたりして遊んでみたりもする。
ザワザワは風を作る。

辛くはあってもその沸々がなければ
何も生まれない。

沸点の高い人々のトランスフォーメーション。
いざ。

☆パトリシア・ピッチーニ
 小さな生命体が産毛をさらしてうずくまる。
 生命体の個体の既存のイメージを壊してでも
 生命体への執着と偏愛。
 「突然変異体」という共通項がある作家。

☆バールティ・ケール
 ファッションモデルのような女性達に
 エロスとアニマルを同居させる暴挙。
 女性達の役割を考える作品が多い。
 スマートなスタイルは美しい。

☆ジャガンナート・パンダ
 インド生まれで日本やロンドンで美術を学んだらしい。
 色使いや画面の構成に日本的な香りがする。
 静かなきりっとしたなかに渦巻く時空がすてきだった。
 オオカミのような四つ足動物が自身の毛皮を引きずっている造形は
 動物の悲哀と動物に対する人間の願望が変容しているリアルさ。



☆小谷元彦
 今森美術館で大々的個展開催中。
 トマス・ハリスのレクター先生が収集してもいい感じ。
 そんな造形が壁に異様な光を放ち展示されている。
 粘着質な動物の死骸とか、羽とか、ぬめりを
 愛していそうだ。

☆ジャジア・シカンダー  
 パキスタン生まれ。
 東洋の色使いをドローイングや
 アニメで表現。
 絵巻物のようなアニメで、BGMも心地よい。
 ヘッドフォンが5つぐらいぶら下がっててほしかった。

☆マシュー・バーニー
 この人の映像目当ての人も多かろう。
 なにしろ、
 フェリーニやダニエル・シュミットなど耽美映像監督
 好みの人には垂涎の映像。
 暴力的な欲望が見事に美に昇華される魔法を見る。
 凶暴の裏の悲哀さえ美しい。
 ガラスの義足に憧れる。
人の皮をぶら下げている男性も日々倒錯決行中。
 今は you tubeでも画像が見られるという恩恵もあり。

☆アーカイブ 2F
 壁面にカードが並び外してみることが出きる。
 昔っから変な人がいたという安心コーナー。
 うれしいね。
 変な人の純真は誰にも負けない。

1階に降りる。
映像ブースが立ち並ぶ。

☆高木正勝 
 カメラ目線が鳥のようで、どんなところにでも
 飛んで行って色んなものを見せてくれる。
 効果音も爆裂。
 疲れた画面から突然山に連れて行かれるのは
 なんだかほっとすることが、日本人の自然鑑賞だと思った。

☆スブツニ子!
「生理マシーン、タカシの場合」
 数学者の両親の子、スブツニ子!は
 綿密にこのマシーンを組みたてたのかと
 その執着が恐ろしいが、
 映像はいたって乾燥した具体的で、クール。
 このギャップにはまる人は勝手に
 はまってくれ!と言いたくなるパワーがある。
 一人回転寿司も並んだ二巻が女陰化。
 サイボーグと生身の生理との間をいぢわるくしてる。

☆ガブリエラ・フリドリクスドッティ
 「バーセイションズ 四部作」
 ドロドロモンスター達が4つの画面で
 共鳴し合っているのか、個別に別方向にむ受かっているのか。
 しかし、BGMの弦楽、ピアノなどの音が心地よく、
 ヘッドフォンンの本数を増やしてほしかった。
 悪霊達はいつでも彼らの心の深層に住んでいるのか。
 バーニーのパートナー、世界的歌姫ビヨークが
 愛らしいモンスターに登場。
 古くからある言い伝え的なお化け達は
 ファンタジーのすてきなスターになっていた。

B2のアトリウムには造形が集合

☆イ・ブル
 韓国の作家
 ビーズで形どられたトルソーが宙吊りに。
 空蝉のようで、美しい。
 床の鏡が効果的

☆ヤン・ファーブル
 さすが虫の大家の血統
 執着するところが半端じゃない。
 ボールペンで塗りつぶした小品が愛らしい。
 角シリーズの彫像は
 マットな沈んだ色と
 キンキラの金色と対局しているが、
 秀吉の兜になりそうだとかなどど
 不埒なことを思って楽しんだ。

アトリウム全体に鏡が施されていて、
作品との関係に緊張が生まれていて
その場所全体で一つの作品となってて、素敵だった。 

というわけで、現代作家達のパワーに翻弄され、
振りまわされ、ぐるぐるになり
結局は楽しく遊んでもらった、テーマパークのようだった。

その後は時間切れでMOTコレクションを見られずじまいが
残念だったが、
新しくなったカフェでゆるりおやつなどして
一休みした。

地下のカフェの方が私好み。
中庭にはウズラの放し飼いもあって、
なんとはなしに鄙びているし、
それさえ作品に見えてくる。

色んなことが溜まっている現代に情報の渦と歴史の
延長に自分たちの立ち位置が揺れているような
そんな怖い印象も孕んだ、危険な匂いもする
危ない展覧会だった。もちろん、お気に入りだ。

昨日展覧は終了。
入場者もいい数字を記録したのではないだろうか。

その作品群はこれからどこで生息していくのだろうかと
気になる。
映像はこれからもどんどん色んな手法で
アンダルシアの犬化して行くのではないかと
ワクワクする。   

これから私は原美術館へも興味を注がねばならない、
そんなことも思った展覧で、
時代を感じるためにもアンテナを古びさせるわけにはいかないと
変な奮起をしたのだった。

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