あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

北斎展 ・江戸東京博物館 その二

2008-01-17 22:02:57 | 日本美術
2005年の秋、東博で開催された「北斎展」の熱狂はものすごかった。
私もその仲間に入ろうと長蛇の列に加わり、北斎の超人振りを垣間見たのだった。

その年の「和楽」という月刊誌に北斎が特集されていた。
その中で、東博の展覧には出品されない「夏の朝」という一幅の絵を
かの美術史家、山下祐二氏が古美術商「角匠」の主人角田氏と
その幻の「夏の朝」という肉筆画について
鑑賞し合っている対談が掲載されていた。

その絵から溢れる匂い立つ情緒的な美人の姿は、
無意識のうちに私の脳裏に焼きつかれ、
いつしか記憶の引き出しの奥に隠れてしまっていた。

その絵は、誰が袖のように、夏物の着物が掛けられ
美人の足元には朝の身支度セットが朝顔の花とともに
用意されている。
向こう側には、立派な白磁の金魚鉢に、赤い金魚がちらりと見え、
夏の小道具が愛らしく揃った形だ。
美女といえば、
少し緩んだ着物で、背にして鏡を持ち立っている。
後れ毛などを手入れしている。
彼女の顔は後ろ向きなのに手に持った鏡にその麗しさが写っている。
なんという粋な計らい。
着物と帯の色など、うなってしまう。
この色柄は多分江戸好み。
京都あたりではこんな渋い色合わせはしないと思う。
やるなぁ。

北斎という人は、こんな気品溢れる情緒も描けるのだ!!!


浮世絵版画や漫画シリーズからはこの雰囲気は予想も付かない。

今回、シーボルトに頼まれたという
洋画のようなシリーズ絵を見て、
有名な浮世絵版画などを見て、次に現れた肉筆画シリーズに進んだ時、
突然目の前に現れた「夏の朝」

その現物の絵に息を呑んでしまった。

え~~~!!!!

あの、「夏の朝」ではないか!!!

記憶の引き出しから、がらがらと躍り出てきた。
家に帰って「和楽」を見なければならない。
カタログを買ったのはこの絵が載っているからでもあったけれど、
ともかく、本物だよ、これ!!!
心臓バクバク!!!

家に帰ってともかく「和楽」を探し出した。
見つかった時は、古本屋行きを考えなくて本当に良かったと
胸をなでおろした。

紙上でのお二人のやりとりはまた楽しいのだが、
この絵は京都の旧家が持っていたけれど、いつしか行方知れずとなった。
ところがひょんなことから、この「角匠」の手に渡り、
再発見に新聞にも記事が載り、
一時話題となったらしい。
そういう伝来がまた面白さを付加価値にする。

その話題性もさることながら、
やはり、この絵、そのものが持っている
色香漂うえも言われないしっとり感が
私をとりこにする。

ともかく、すごいご対面ができ、
単純に勝ち誇ったように喜んでいる、単純な私なのだった。
もし、時間が許されるのなら、
もう一回江戸博に行きたい。
そう願ったありがたい展覧だった。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北斎漫画展 ・江戸東京博物館 | トップ | 近代日本画 美の系譜 ・大... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
oki さま (あべまつ)
2008-01-17 23:07:48
お陰さまで、okiさんチケットで、
本当にいい思いをし続けております。
こんなにすごい北斎展とは思いませんでした。

和楽は、契約通販で、店頭売りがないので、
時々買う、それをできなくしたところが
うまい作戦ですよね。
最近は契約が切れて、購読中止です。
本自体が重いし、溜まる一方で。
吉縁が続くように願いますが、
3月は遊べる日が少なそう・・・
返信する
Unknown (oki)
2008-01-17 22:57:03
「和楽」ですか、男性の僕には縁のない雑誌ですね。
「北斎」、東京新聞主催ですが久々のヒットですね。
処で三月に太田記念でまた「北斎」の展覧会があるようですよ!
とあるルートから/笑、二月の「浮世絵の夜景」はチケット入ることになったのですが、三月の「北斎」は微妙ですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。