2013年の幕がもう少しで降ります。
年末年始の用意などこの際、適当で良いかと
投げやりな気持ちながらも
お正月花や、のし餅をお願いしたり、
美容院、クリーニング、年賀状、大掃除、
などなど詰め込んでいましたが、
やはり、恒例の 年間ベストテンを始末しなければ、落ち着きません。
ここ一週間、スケジュール手帳などを見ながら
あれやこれやを思い出していました。
それでようやく決まりました。
10 大野麥風展「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち
東京ステーションギャラリー
東京駅舎がリニューアルされて、ようやくこちらのギャラリーに行ってきましたが、
とにかく色使いが細やかで、つくづく浮世絵の国に生まれた人だと
その魚に対する執着振りと版画の凄みにひたすら敬服し
一点一点の丁寧さに見る時間も大幅に伸びたのでした。
ギャラリーの煉瓦造りの雰囲気もとてもお気に入りとなりました。
展覧企画も素晴らしいものばかり。
今後も期待するところとなりました。
9 野中ユリ展
神奈川県立近代美術館別館
灼熱の夏、友人連れ3人で汗かきフーフー言いながら行ってきましたが、
あの建物に入った瞬間、すーっと異空間に引き込まれました。
ようやく野中ユリさんの作品を通史的に見る事が出来ました。
美しいものの欠片がコラージュされてこの世のものではない
宇宙への私信となって、その言葉を読み取ることが出来るのは
その夢想観を繋げることが出来る人だけのもの、なのかも知れません。
8 印象派を超えてー点描画の画家たち
国立新美術館
今まで漫然と印象派を眺めてきましたが、
クレラー=ミュラーコレクションのお陰で
時代の流れと光の分割の辿ってきた道のりを見たように思いました。
その中でゴッホがどれだけ異彩を放っていたのか、
後の日本画壇がどこまで彼に憧れて模倣を試みてきたか、
スーラや、シニャックの点描への気が遠くなるほどの作品から
光の粒子が拡大し、モンドリアンの作品までを見ると
今まできちんと対面してこなかったことを反省したのでした。
以来、近代洋画を見るたびに光への拘りとその表現への
執念を感じることが出来るようになったのでした。
コレクターの目、その1本筋が通ったぶれのなさ、
時代の先端を感じ取る確かさに感服したのでした。
7 会田誠展
森美術館
公共の場での会田誠展はそもそも波乱含みだと言われてきましたが、
案の定、色々あったことを思い出します。
しかし、芸術は事件だとも思います。
その事件現場にいたというそわそわした気配と
やられた感は山下裕二×会田誠の両氏をゲストにした講演会でも
感じられ、破天荒なしょうもなさと、絵画本筋をギリギリ追究する
振り幅に見る側は翻弄され、それを作者はほくそ笑んでみているのかも知れない、
そんな事も感じた劇場的展覧で痛快でした。
6 井戸茶碗
根津美術館
今秋、利休の生きた時代の茶器展が続々開催されました。
その中で、根津美術館は驚きの企画を持ってきました。
「井戸茶碗」それだけを集めた展覧を初めて見ました。
展覧企画には若宗匠、千宗屋氏が奔走されたとのこと。
暮れに公開された映画「利休にたずねよ」でも監修に参加された宗屋氏。
ご活躍めざましい一年に思いました。
武将たちが愛玩した井戸茶碗の枇杷色肌を淡々と整列させた
その姿だけで禅宗の和尚さん達が座禅しているかのようにも見えて、
おぉと感嘆の声を漏らしました。
講演会の模様やら、色々記事にしたいことがあるにも拘わらず、
放置していることに胸が痛むのですが、
ともかく、武将たちの茶陶狂には理解が出来ないけれども、
よくぞ今のこの世に残ってきたものだと
昔の話しは本当のことだったように
思える証人の足跡にぞっとする思いがしたのでした。
おなご衆はじっとみるだけでどうしようもありませんでした。
5 もののあはれ展
サントリー美術館
サントリー美術館は展覧事に素晴らしい展示会場を作り出します。
今年もガラス、文晁、飛天、などなど楽しみました。
その中でも「もののあはれ」はいわれない儚さと
日本人は常に自然を介して人生の色々を思い重ねてきた姿を
遠く月が見ているのだろうかと、情緒心が灯るようでした。
小林秀雄や、川端康成の書も展示され、
日本の心はもののあはれを感じることこそ大切だと知らされます。
現状はすっかり自然の力を畏怖することなく振り回され、
尊敬し愛する心も荒んでいるようで
どこか隠れ里に迷い込んでみたいと思ったのでした。
4 福田美蘭展
東京都美術館
この展覧の驚きは今でも新鮮に残っています。
今までこの画家を知らずにいたのはどうしてなのかと思いました。
福田美蘭という目を通して絵画という概念をぼろぼろに
崩壊させてまた新に向き合うという果てしない作業に、
どこかうら悲しいユーモアも感じます。
作品の一々にそんなばかげたことをして良いのかという
不安を痛快なほど卓越した筆致で裏切ってくれる快感、
または彼女の全くぶれない純粋な精神に
すっかり降参してしまったのでした。
3 フランシス・ベーコン展
国立近代美術館
危ない画家、と言うイメージをそのままガツンとぶつけてくれました。
何が危ないのか、それは私の理解の範疇を遠く超えているからです。
生まれ育ちも時代や国や宗教や戦争や性のさまざまな重圧に
耐えられるべき出力としての絵画。
苦しい人生だったのか、楽しい人生だったのか、
そういうことではなくて、ベーコンをしての生き様を
ひたすら叫んで色を繋げてきた麻薬を見たようでもあり、
唯々絵から放たれる体液臭にくらくらしたのでした。
それにしてもともかく絵はハンパなく
カッコイイ!!
よくぞ企画を成就させてくれたと感謝したい展覧でした。
2 京都展
東京国立博物館
この京都展のスケール感は抜けてました。
東博という器を思いっきり遊ぶことが出来たのではないかと
その抜けっぷりに感動しました。
岩佐又兵衛を代表に洛中洛外図屏風を一堂に会し、
二条城のホンモノの探幽組を惜しげもなく天空に展示し、
見えない竜安寺の時空を切なく映像化し、
京都でも見る事が叶わないこと実現してくれました。
首が痛くなる展覧会でもありました。
1 山楽・山雪展
京都国立博物館
辻惟雄先生著作の「奇想の系譜」に狩野派の山雪がいることが
前から気になっていましたし、
京狩野、と言われる狩野派の存在、その仕事をいつか目の前に見てみたいと願っていました。
そのために日帰り強行して見てきたこの展覧会が
今年のベストとして燦然と輝くものです。
屈折した老梅、怪しい気配の雪汀水禽図屏風、
などなどを目の前に出来た喜びは何にも替えられない
貴重な体験となりました。
その他の思い出の展覧は
次の機会にしたいと思います。
思えば充実の一年、無事に終えることが出来そうです。
ご縁を頂いてお付き合い下さった方に改めてここに
お礼申し上げます。
来年はどんどん駆け抜けられるような馬に巡り会えますよう、
心楽しみにしたいと思います。
ベスト10、会田さんが重なりました。
芸術は事件、なるほどそうですね。色々賛否あったかもしれませんが、会田ワールド全開。痛快な展示で楽しめました。
山楽山雪を見そびれたのが悔やまれます…
皆さん好評価ですよね。
去年は京橋のユマニテでばったりお会いしました。
またお話を色々お聞かせ下さい。
それでは良いお年を!
体調の関係で遠出は無理なので、京都は無理としても、鎌倉野中ユリ、観たかったなあ。
会田誠、あれで物議を醸すんだから、大英博物館の春画展引き受けてくれるとこはないでしょうねえ。
お坊ちゃんは勉強されてます?
いや、なんか受験生見ると気になるんです。
僕の体験から、大学に入ると視界がパッと開けます、高校時代とは違う世界なんです。
だから、個人的には、浪人はやめた方が良い、第二志望でも受かったとこへ、と思うのです。
よいお年を!
今年もはろるどさんの丁寧な記事を楽しみにします。
山雪見たさに京都往復決行してホント良かったです。
またどこかでばったりできますように!
とらさんは神戸から京都博でしたか。
変わらない美術への情熱と記事、今年も沢山拝見出来ること楽しみに致します。
無理のない範囲で今年も沢山アートと巡り会えますように!
愚息は2日から通塾ですが、
浪人は親としても回避してもらいたいものですが、うまくいきますかどうか・・・・
諸々、お忙しそうですがお身体ご自愛下さいませ。
今年も美しいものに巡りあえますように。
今年は春までが一山。
そこからはしっかり美しいもの探検にうろうろしたいと思っています。
名古屋行き、妄想しておきます。
福田美蘭は私はランクインしなかったのですが
刺激の多い個展でした。
コンセプチュアルでありつつ
絵画としての完成度を高く設定する姿勢は
会田誠の仕事に通じるものだと感じます。
未知の作家との出会い、楽しいですね。
福田美蘭を知ったのは思いがけず楽しい人と巡り会ってしまった驚きに似ています。
会田誠さんも唯一先輩だと言ってたように記憶していますが、絵画表現のプロセスに同質を感じます。
今年も思いがけないワクワクにぶつかること願っています。