あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

溝口健二監督 「山椒大夫」

2006-12-08 22:24:16 | 映画
本当ならば、あちこち美術館に行くところだが、今は、なんだか気が乗らない。
溝口健二監督のあのこってり、粘っこいカメラワークと、長ぜりふに振り回されているからか。

今日は、「山椒大夫」を見た。
原作森鴎外の安寿と厨子王なのだが、
子供の頃読んだ挿絵が思い出され、母との別れのシーンが、悲しい。

「歌麿と五人の女」の、べらんめぇの田中絹代が名高いおうちの奥方様となって、
身を崩しても尚気高く、品位を失わない気丈な母親を好演していた。
兄弟の絆も美しく、安寿は香川京子だ。なんという清々しさ。

芸者ものもなかなかの力強さがあるけれど、
原作が作家ものの方が、出来上がりがいい気がしている。
船橋聖一の「雪夫人絵図」は、なかなかの作品だった。
デティールが一々すばらしかった。
木暮実千代のエロッぽさはたまげてしまう。

江戸川乱歩の描く怪しい夫人もきっとお似合いになりそうだ。

来週は、いよいよ「雨月物語」
「新・平家物語」はTVで見たから、他の作品もぜひに見てみたくなっている。

黒沢監督の「七人の侍」と並ぶ、歴史物語「山椒大夫」そう思った。
大作ではあるが、ちっとも退屈しなかった。
平安時代の下人達の悲しい性、
民主主義を語るには長い長い歴史があることも思い知らされ、
戦後間もない頃の時代性も十分反映されているのではないかと思った。

芸者祇園シリーズもなかなかの佳作であった。
若尾文子の瑞々しい芸者姿に惚れ惚れしてしまった。
山田五十鈴も、おきゃんな頃があったのかと、驚いてしまった。

邦画は、日本人だからこそ、理解できる世界なのだと、
いきなり気が付いてしまったのだった。
遅いっちゅうに!!

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2 コメント

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雨月物語 (一村雨)
2006-12-09 07:41:35
この映画、人の欲望について考えさせられました。
物欲、性欲、出世欲・・・・
京マチ子の幽霊もそうですが、その従者のおばあさんが
恐かったことを覚えています。
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一村雨 さま (あべまつ)
2006-12-09 19:02:19
もう、ご覧になっているのですね。
どろどろ怪しげな空気にワクワクです。
昭和の危ないにおい、結構お気に入りです。
江戸川乱歩、鏡花、夢野久作、谷崎、それに引き続いて、三島由紀夫、寺山修司が、つながってきます。

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