阿部ブログ

日々思うこと

理研の 『ライフサイエンスの新宇宙』 と イイノホールのアート

2014年02月17日 | 雑感
ヒトゲノム・プロジェクトとその後のフォロー・プロジェクト群が終了し、一息ついた後、さて次のフロンティアは何処か?と言う事で、見回してみると米国とEUは一斉にブレイン(脳)科学に雪崩れ込んでいる。
EUは、グラフェン・プロジェクト(Graphene Project)と共にヒューマンブレイン・プロジェクト(Human Brain Project)が、FET(Future and emerging technology)に採択された。簡単に言うと人間の脳をリバースエンジニアリングして、脳の機能を完全にコンピューターでシミュレートすることを目指すプロジェクト。グラフェンとブレインには、10年間にわたり総額約1200億円の大金が投入される。
米国もBRAINイニシアティブ(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies)をスタートさせている。EUとは少々異なり、脳疾患や神経疾患、精神疾患を治療するために脳細胞が発するシグナルを記録・解析しする事で、アルツハイマーなど難病の根治目指すプロジェクト。これもEUと同じ10年プロジェクト。私見ながら、脳細胞シグナルをストリーム・コンピューティング技術でリアルタイムに検知・解析し、結果をナノ秒で脳神経に伝達することで、脳機能を制御する事も可能だろう。
EUと米国の両プロジェクトは、情報通信技術の観点からも、奇抜な成果が得られると勝手に思っている。

このような状況で日本のライフサイエンス業界は、ぶれないでライフ・イノベーションの実現に向けて今後も注力していくようだ。その象徴のようなシンポジウムが開催された。『ライフサイエンスの新宇宙』だ。主催は理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター
最近のガン研究の成果、特に米国主導で行われた遺伝子や機能の発現に必要な領域を探る「ENCODEプロジェクト」、ガン・ゲノムの変異を探る「がんゲノムアトラス」プロジェクトなどにより、がん遺伝子の制御領域を含んだ複数の遺伝子変異による分子ネットワークの変調が、ガンをを生み出すとの見方が有力視されているとの事。分子ネットワーク制御技術に皆で突撃するわけだ。

しかし、気になるニュースがある。コーネル大学の研究者が、がんの転移を防ぐタンパク質を発見したと言う。「TRAIL」と言うタンパク質だが、「TRAIL」は、転移するために血液中に存在するがん細胞に取り付いてアポトーシスさせるらしい。コーネル大学のマウス実験では、転移がん細胞を100%無力化する事に成功している。「TRAIL」は優れもので、健康な細胞には一切影響しないと~がん研究は、ことのほか競争が激しいので、研究者の皆さんの善戦を期待したい。

このシンポジウムで特に興味深く拝聴したのが、公益財団法人がん研究会の野田哲生所長の『がんを知り、がんを制する~優れた生物学が生み出す次世代がん医療シーズの育成~』。
野田所長は、萌芽的シーズの一貫した育成によるがん予防・診断・治療法の開発により次世代のがん医療を確立する必要性を述べておられた。この野田所長の話を聞いて思い出したのは、何故か理研コンツェルンのこと。戦前の理研は、63社(121工場)を有する科学産業集団だった。もしかして、野田さんが望む成果を得るためには、理研は先祖返りして理研コンツェルン化するのが、早道ではないかと直感した。個人的に理化学研究所と言えば、大河内正敏と田中角栄の二人が想起されるが、田中角栄は歴代総理大臣中、唯一の従軍経験者(ノモンハン事件)。理研も田中角栄一等兵と同じく産業利権を目指して戦闘するべき。

さて、シンポジウムは霞ヶ関のイイノホールで開催された。イイノホールは飯野海運所有の飯野ビルにあるが、このビルはゲイジツ家の作品を観れる貴重なビルなのだ、実は。入り口には、山本一弥山本一弥氏の『spiral point』という作品がさり気なく屹立している。
         

また、イイノホールにあがるエレベータからは、渋谷清道氏の『12か月の精霊たちが集うかがり火』が参加者を迎えている。
      
理研やライフサイエンスの研究者、シンポジウム参加の皆さんは、果たしてこれらゲイジツ品に気づいたであろうか?
サイエンスはアートです~

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