礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

分権なしに地方創生はない(大機小機)

2014-10-13 04:28:04 | コラムと名言

◎分権なしに地方創生はない(大機小機)

 今月一〇日の日本経済新聞「大機小機」欄は、久しぶりに読み応えがあった。見出しは「国のかたち問う地方創生を」、署名は(無垢)。
 その前半部分を引用してみる。

 地方創生をめぐる安倍晋三政権の姿勢には地方分権の視点が欠けている。中央集権を維持したまま地域の活性化を目指しても、結局は中央と地方の格差を広げるだけだ。少子高齢化と深刻な財政赤字のもとで限られた資源を効率配分し日本経済を再生させるには、税財源を含む権限移譲を通じ国のかたちを変える大改革こそ求められる。
 世界を見渡せば、分権国家と中央集権国家の明暗は際立ってきた。先進5カ国(G5)をみても分権国家である米国、ドイツに対し、一極集中型の日英仏の低迷が目立つ。分権国家は危機からの復元力が相対的に高い。一極集中型の国家はいったん危機に見舞われれば全国に波及し、地域間格差をさらに広げる。
 英国はスコットランド独立の住民投票で大揺れになったが権限移譲が進むことになった。この英国の教訓に学ぶべきだ。
 安倍政権の地方創生は衰退する地域社会にあめとむちで対応しようとしている。小手先の対策ではなく、地域社会の疲弊に表れた日本経済の構造問題にメスを入れることこそ肝心である。【後略】

 まったく、その通りだ。よくここまで言ったものだという感がある。ただし、筆者をして、ここまで言わしめたものは、「日本経済を再生させ」ねばならぬという危機意識なのである。そこがいかにも、日本経済新聞のコラムらしい。
 文中、米独を分権国家型に、日英仏を一極集中型に分類しているところに、筆者の確かな視点が見てとれる。明治維新の過程を見ればわかる通り、日本は、廃藩置県、官僚機構の整備、憲法制定、宗教統制、教育政策等を通して、短期間で、一極集中型の国家を創りあげた。当時のヨーロッパにおいて、こうした一極集中型の国家は、フランス以外にはなかった。明治の日本は、しばしばドイツと比較されるが、ドイツは、当時から今日まで、基本的に分権国家である。
 後半を引用しなかったのは、「開かれた地域社会」を強調する筆者の論理に、やや違和感を抱いたからである。「地方分権」を肯定するのであれば、「開かれた地域社会」を選ぶか、「閉じた地域社会」を選ぶかという選択も、地域社会にゆだねなければなるまい。
 同コラムの最後は、「分権なしに地方創生はない」という言葉で終わっている。まさに、その通りである。ただし、この見方と同時に、「成長神話の克服なしに地方創生はない」という見方も、成り立つのではないか。ついまた、余計なことを言ってしまった。

今日の名言 2014・10・13

◎分権なしに地方創生はない

 2014年10月10日の日本経済新聞「大機小機」欄で、「無垢」氏が述べた言葉。上記コラム参照。

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