礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

男は自衛隊出身で銃マニアだ(野村秋介)

2023-05-19 00:16:44 | コラムと名言

◎男は自衛隊出身で銃マニアだ(野村秋介)

 今月一五日の当ブログに、「赤報隊事件で『文藝春秋』がスクープ記事」というコラムを書いた。『文藝春秋』六月号のスクープ記事〝朝日襲撃「赤報隊」の正体〟について、コメントするつもりだったが、警察庁長官狙撃事件のほうに話がそれてしまった。
 本日は、同スクープ記事について、少し、感想などを述べてみたい。
 記事によれば、「大悲会後見人 野村秋介思想研究会最高顧問」の肩書を持つMさん(記事では実名)は、朝日新聞阪神支局襲撃事件の犯人と思しき人物を目撃しているという。
 事件の直後、Mさんは、野村秋介に、大至急、三〇〇〇万円の現金を持ってきてくれと頼まれた。その日の夕方、野村の事務所に赴いたところ、そこに犯人と思しき人物がいたという。以下、引用。

   自衛隊出身の銃マニア
 Mは急いで会社の金庫から手持ちの現金を搔き集めた。その日の夕方、とりあえず、「あるだけ持っていく」と野村に電話を入れ、約三〇〇〇万円の現金を新聞紙に包み、紙袋に詰めて、タクシーに飛び乗り、当時、浜松町にあった野村事務所へ届けた。
 Mが野村事務所の中に入ると、応接室のソファに野村と向かい合って短髪の男が座っていた。座っていたので背丈は正確にはわからなかったが、中肉中背で三〇~四〇歳に見えた。
 Mが現金が入った紙袋を野村に手渡すと、野村は別室に待機していたその男に袋ごと、無造作に渡した。
「その時もドアの隙間から覗いたが、大人しそうな丸顔の男で右翼には見えなかった。その場では野村さんに何も聞かず、すぐに事務所を出て帰りました」
 Mは後日、野村にその男の素性について、聞く機会があったという。野村はこう語った。
「男は自衛隊出身で銃マニアだ。北陸地方に住み、既存の右翼団体には入っていない。俺の影響を受けてやってしまったようだ。捕まらないよう逃走資金を出してやらないといかん」
 Mは事務所で現金を渡した男こそが阪神事件の実行犯、あるいは赤報隊のメンバーではないかと、今でも思っている。〈115~116ページ〉

 読んで、いくつか疑問が浮かぶ。①Mさんが、野村から現金の調達を頼まれた日付がはっきりしない。事件発生は、一九八七年五月三日の午後八時すぎなので、五月四日以降のことだと思うが、日付が示されていないため、説得力に欠ける。取材陣は、Mさんに対し、業務日誌その他によって、その日付を確定してもらうべきであった。
 ②応接室のソファにすわっていた「短髪の男」が、実行犯であるという断定することはできない。このあたりについてはMさんも慎重であって、「阪神事件の実行犯、あるいは赤報隊のメンバー」と、含みを持たせている。
 ③Mさんは後日、野村に、「その男の素性」を尋ねてたという。それに対し、野村は、「男は自衛隊出身で銃マニアだ」云々と答えたというが、本当に、野村は、その男の素性を知っていたのだろうか。伝聞・推定だった可能性はないのか。
 ④Mさんの用意した約三〇〇〇万円の現金は、実行犯の「逃走資金」になったというが、これは間違いないのか。野村やMさんは、そのことを確認できたのか。
 ⑤実行犯の「逃走」には、国外脱出もありえたと思うが、野村やMさんは、そのことも想定していたのか。

 記事を読んで、この間の取材班の努力に頭が下がったが、ツメが甘いと思われる部分もあった。例えば、本日、引用した部分。特に、上記の①③④⑤については、取材の際、Mさんと取材班との間に、どういうヤリトリがあったのか知りたかったところである。

*このブログの人気記事 2023・5・19(10位に極めて珍しいものが入っています)

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