◎優生手術の費用は男子４５円、女子は９５円以内の予定
『週報』第二四四号（一九四一年六月一一日）から、「国民優生法解説」という記事を紹介している。本日は、その四回目。
＝手術可否の判定＝
優生手術の申請があれば、地方長官はこれを地方優性審査会の意見を聴いてその可否を決定する。若し、この決定に不服のあるものは三十日以内に地方長官を経由して厚生大臣に申立【まをしたて】ることが出来る。厚生大臣はこれを中央優生審査会の意見に徴し最後的の決定をする。このやうに、優生手術の可否の決定は優生審査会の判定が重要な根拠となる。この審査【しんさ】会は医学者、精神病学者、遺伝学者等専門の学識経験のある人達を主な委員とし、これに関係官が加はり、どこまでも慎重【しんちよう】に学問的に審査するから、 その結果については安心して信頼していただきたい。
＝手術の実施＝
優生手術を行ふことに確定すると、いよいよ手術の実施になるのであるが、この手術は国家行為として安全確実【かくじつ】に行はねばならないから、医師と場所を定めて前述の優生手術術式によつて慎重に行ふことになつてゐる。この医師には優生手術について知識、経験ある練達【れんたつ】の医師が指定される筈で、手術の場所には官公立病院その他十分な設備（開腹手術を行ふに足りる設備）を有する病院が指定される筈である。従つて、手術の合併症等の危険は殆んど顧慮【こりよ】する必要はない。
＝手術の費用＝
優生手術の費用は手術費、検査費、入院料（男子は四日、 女子は十四日入院）等を合せて概略男子は四十五円、女子は九十五円以内の予定である。本人、父母、配偶者が資力のある時には、この費用を全部又は一部を負担することになる。若し資力のない場合には国庫が費用を負担【ふたん】する。手術は受けたいが費用はないといふ者も安心して申請していたゞきたい。
＝秘密の保持＝
優生手術に関する事項は一切厳重に秘密を保つことになつてをり、若し漏泄【ろうせつ】した時は告訴されゝば厳罰を受ける。申請すると一家の秘密が世間に洩【も】れると考へて申出を控へるやうなことがあつてはならない。秘密はどこまでも守られるのである。
＝結婚における通知義務＝
優生手術を受けた者は結婚に際し、相手方から要求があれば、優生手術を受けた旨を通知せねばならない義務がある。結婚は必ずしも子供を得ることを絶対条件【でうけん】とするものではないが、優生手術を受けた者は絶対に妊娠は不可能であるから、先方の要求【えうきう】があつた時には徳義上通知する義務があるわけである。
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以上、繰【く】りかへし述べた通り、悪質の遺伝病に罹【かゝ】つたものは本人は勿論、家族にとつても極めて気の毒であり、社会にとつても悲惨【ひさん】な病気であり、延いて〈ヒイテ〉は国家の将来にも関係深いものであるから、これ以上子孫に同様な病人が出ることは絶対に避けねばならない。本人や家族も深く思〈オモイ〉をこの点に致して、進んで手術を申出るやうにして貰ひたいものである。この申出も前述の通りハガキ一本、 手紙一通を府県庁の衛生課宛に差出せば、後は府県で万事の世話をするのであるから、気軽【きがる】く申出るやうにしてほしい。【以下、次回】
