◎本多顕彰の『指導者』と長尾和郎の『戦争屋』
長尾和郎の『戦争屋―あのころの知識人の映像―』(妙義出版、スマイル・ブックス)が出たのは、一九五五年一二月三〇日のことであった。
これよりも三か月早く、同年の一〇月一日に、本多顕彰〈アキラ〉の『指導者―この人々を見よ―』(光文社、カッパ・ブックス)という本が出ていた。この本は、ベストセラーになったことで知られている。私が持っているのは、同月一五日の第八版である。二週間あまりで、なんと第八版まで出ている。
不思議なのは、長尾和郎が、『戦争屋』の一五八ページで、本多顕彰の『指導者』に言及していることである。『戦争屋』は、『指導者』が出たあと企画され、三か月後には本屋の店頭に並んでいたということになるが、そんなことが可能だったのか。
さらに不思議なのは、この両著の体裁が瓜二つであることである。二つの本を並べてみると、本当によく似ている。もっともこれは、別に不思議とは言えない。『戦争屋』の編集者・装丁者が、『指導者』の体裁にならった(マネをした)だけのことである。それにしても、何という早業か。
今、両者の共通点を列挙しておこう。
・タイトルが漢字三文字。
・サブタイトルあり(カバー表紙では赤字)。
・新書版、カバーつき。
・カバーは青を基調としたデザイン。
・本文は、約一八〇ページ。
・カバーの表紙および背表紙に、シリーズのロゴがある。
・カバーの裏表紙側に著者紹介、その右上には著者近影。
そのほかにも、いくつかあるが、省略。
もちろん似ているのは、体裁だけではない。「戦争中における知識人」をテーマとしているところも共通する。明日は、先行した本多顕彰『指導者』のほうを、紹介してみよう。