
毎朝、通勤路の道端に、気になる植物があった。
あった、と書いたが、今も健在である。
その植物の名前は、ありきたりの「ヨモギ」だ。
生まれ育った新潟では、ヨモギと言えば、新潟名産の「笹団子」の原材料の一つである。
笹団子は、草餅の一種であるから、そこに入れるのだった。
かつて、自分が生まれ育ったところでは、旧節句の頃、笹団子を作る習慣があった。
ヨモギの若芽を摘んでおいて乾燥させたものを入れて作るのだった。
また、ヨモギは、薬草としても重宝されてきたようだ。
旧節句の頃、しょうぶ湯にする時、菖蒲にヨモギも添えて束ねたものを湯船に浮かべておくのだった。
その他、切り傷の血止めに使ったり、煎じたものは下痢や腹痛などにも効くと聞いたりしたことがある。
さて、そのヨモギの話だ。
毎朝、通勤路の、ある田んぼの道端に生えていたものがあった。

それが、ある程度大きくなってきたのだが、ここの田んぼでは他の雑草は刈られていたのだが、どういう訳かこのヨモギは刈られずに残っていたのだった。
それが、夏の暑さで、伸びた茎の先端に葉を残すばかりになってしまっていたのだ。
今にも枯れそうな中で、ヨモギはしっかりこらえていた。
猛暑で茎の表面は枯れてしまっているのに、末端で緑の葉を細々と茂らせていた。
「枯れるな、枯れるな。」
と祈っていた。
猛暑という厳しいコンディションに負けないヨモギの姿が、難病に絶対負けてほしくないという娘の姿と重なった。
枯れるな、負けるな。
そう願って、毎日通り過ぎてきたのだった。
願いながら、祈りながら通るようになって、3か月がたつ。
今やヨモギは、強い地下茎をもとに、猛暑を乗り越え、青々と葉を茂らせている。

もうすぐ寒さの厳しい冬を迎えるだろう。
だけど、猛暑を乗り越え、たくましく生き抜いたヨモギだ。
また来年、同じところに同じように生えてくるだろう。
娘も、同じように、病に負けず強くなっていってほしい。
様々な困難を乗り越え、病を克服してほしい。
明日も、私は祈りを込めて、このヨモギの横を車で通り過ぎる。
