ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「いつか君が運命の人 THE CHAINSTORIES」(宇山佳佑著;集英社)を読んで

2024-04-21 20:25:53 | 読む

学生の頃、NSPが歌っていた曲に「赤い糸の伝説」というのがあった。

運命の人と赤い糸がつながっている、という伝説をもとにした歌だった。

あの歌の出だしは、

♬ あなたと僕の 小指の糸が ほどけないように 結びましょ

だったなあ。

そんなことを懐かしく思い出しながら、間違いなく若者向けの本なんだけど、このオレンジ色の表紙にひかれて、本書を手に取った。

 

まあ、ファンタジーだと思いながら読んだわけだけど、その指輪をつければ、「運命の赤い糸」が見えて、自分と赤い糸で結ばれた運命の人が分かる。

この本は、そんな指輪を巡る、6つの連作短編集だ。

 

①僕らはあの頃と変わらない

②どうして機嫌のいいときしか好きって言ってくれないの?

③わたしのものって思っていいですか?

④わたしを失望させないで

⑤わたしが求めているもの

⑥今、誰を愛してる?

…という6編から成り、それぞれに指輪が絡んでストーリーが進む。

そんな不思議で素晴らしい指輪なんだけど、1か所にとどまらないで、次の話に登場してつながっていく。

さすが、CHAINSTORIESというだけある。

 

読んでいて途中でびっくりしたのは、第1ストーリーの終盤に、それまで主人公だと思っていた登場人物が亡くなってしまったこと。

こんな展開をする話は、今まで読んだことがなかった。

 

そして、決して確実にハッピーエンドとは言えないような予想外な結末になるのは、どの話も同じ。

短編の1つ1つが、読んでいた自分の想像をはるかに超えた結末になりながらも、読み終えるとどこかしみじみした思いになって、次の話に移ることができるのだった。

その締めくくりが、最終話では、最後に第1話につながる展開になって、しんみりした思いも抱かせられた。

 

 

個人的には、認知症になってしまった母との関係をめぐって話が展開する、まるで赤い糸とは関係ないような第5話が、好きだ。

 

まあ、およそ67歳の男が読むのにふさわしい本かといえば、NOだろう。

でも、恋の話で、自分が忘れていた若いころの不安な感覚を思い出したりするのも悪くないし、第5話のように遠からぬ自分を感じさせる(?)高齢者の登場だってある。

 

夕日は、人を感傷的にさせる。

そんな夕日が描かれた表紙絵からの感傷で、珍しくこのような本を読んだが、個人的には面白かったなあ。

宇山佳佑氏の本、いつかまた違うものを読んでみよう。

心を若くして…?

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