今日は、ある団体の研修で、「新潟県立環境と人間のふれあい館」に行き、新潟水俣病に関する学びの機会を得てきた。
【館内2階から】
新潟水俣病については、今までにも学ぶ機会は何度かあり、知識はあった。
だが、今回は、映像を見たり館内の資料説明を聴いたりするだけでなく、語り部の方の話を聞かせていただくことができた。
やはり現地の語り部の方の話を聞くと、その被害の実際は、我々が考えが及ばないものがあるのだと伝わってきた。
その話の一部を紹介する。
水俣病は、熊本で中毒症状が出たときに国が「魚を食べるな」としっかり規制すればよかったのに、「自主規制」としたから、まだ食べる人が続き、その後被害が広がった。
その原因についてメチル水銀にあると分かっていたのだから、もし規制されていたら、被害は拡大せず、新潟水俣病も起こり得なかったはずだ。
被害者なのに、認定申請しない人たちはとても多くいた。
うちの親も指が曲がっていたけれども、患者の申請はしなかった。
そんな人がたくさんいる。
周囲の人からいろいろと言われるからだ。
現にそういうことは多かった。
実例を挙げてみる。
第1次訴訟で和解した患者は、1500万円の金額を受け取った。
当時の働く人の初任給は、1万円台だった。
そう考えると、1500万円の金額の大きさが分かる。
だが、今まで貧乏だった人たちが、大金が入ると真っ先にすることは家の改修だ。
それを見て、大金を得た人たちに対する世間の人たちは、ひがみが強くなる。
あそこの家は認定患者だと話し出し、はじこうとした。
今まだ訴訟が続いているが、難航している。
本当に患者なのか、見た目では見分けがつかない。
昭和40年代なら、髪の水銀調査をすればすぐにわかった。
だが、今になって、髪を検査したって何も出てこない。
そして、60年前にいつどのくらい魚を食べたか、なんて聞かれたって、正確に応えることは難しい。
60年前は、工場の廃液は、水で薄めさえすれば流してもいいという決まりだった。
流された廃液の水銀が、コケやプランクトンを通して小さな魚の体に入る。
食物連鎖により生物濃縮が行われ、大きな魚に水銀がたまっていく。
大きな魚は簡単に死なない。
汚染されても、川ではコイやウグイなどが、海ではマグロやイルカなどが簡単には死なない。
それを人が食べると危険だ。
現に、現在の厚労省のホームページにも水銀のことがちゃんと書いてある。
患者の中には、50歳を過ぎてから、自分のしびれやふるえなどの体調不良は新潟水俣病のせいだったと分かる人もいる。
ずっと新潟水俣病だと気づいていたが、家族特に子どもたちのことを考えると、あそこの家は新潟水俣病患者の家だと世間から言われて苦しむだろうから、声をあげずにいた人も多い。
子どもが大人になったから、もう本当のことを言ってもいいだろうと、患者の名乗りを上げた人もいるが、それでも息子や娘夫婦から「やめて」と言われている。
本当の苦しみは当事者でないと分からない。
聞いた話の一部にすぎないが、このように、実際に被害を受けた人でないと分からない話、言えない話を聞くことができたのは貴重だった。
家に帰ってから、「魚介類に含まれる水銀」の話が気になって、厚労省のHPを調べてみた。
・魚介類はこのように利点が多い食材ですが、反面、自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来となっています。
・また、一部の魚介類については、特定の地域等にかかわりなく、水銀濃度が他の魚介類と比較して高いものも見受けられます。
・水銀に関する近年の研究報告において、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされていることを踏まえ、妊娠中の魚介類の摂食について以下の注意事項を公表しているところです。
・厚生労働省が実施している調査によれば、平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるようなレベルではありません。特に水銀含有量の高い魚介類を偏って多量に食べることを避けて水銀摂取量を減らしつつ、魚食のメリットを活かしていくことが望まれます。
そうか。やっぱり気をつけて食べる必要があるのだな。
そう思ったよ。
ともかく、今日は貴重な研修の機会を得られたことに感謝したい。
【館内2階から、すぐ近くにビュー福島潟が見えた】