竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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鶏の腹に縫ひこむセロリかな 清水良郎

2018-07-27 | 今日の季語
鶏の腹に縫ひこむセロリかな 清水良郎



「鶏の腹に縫ひこむ」まで読んで、一瞬ぞっとする。
白い羽毛の下の腹を切り裂かれ、金切り声を上げながら暴れる、
一羽の鶏の凄惨な姿を想像するからだ。
そこへ、「セロリかな」が見えてほっと胸を撫で下ろす。
この鶏は、もともと死んでいたのだ。
体中の毛をきれいにむしられ,内臓も取り去られ、
後は調理をするだけの状態に処理を施された鶏である。
その鶏のぽっかりと空いた腹の中に、
肉の臭みを消すためのセロリを始め、
何種類かの具材を入れてぎゅっと紐で肉の切れ目を縛り付けたのだろう。
ほっとした。
しかし、本当にほっとしただけでよいのだろうか。
確かにここでは料理用の鶏を使っているだけである。
ごく普通の調理場の風景である。
しかし、その「ごく普通」の光景の裏側には、
つい先程、ちょうど私たちが「セロリかな」を読む前に
どきっとしたような光景が、確かに存在したのである。
つまり、加工される前の肉や魚には、
確かに命が宿っていたという、重い現実がある。
あっけらかんと叙された句の中に、深い意味が託されているようだ。



参照 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272
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