保健福祉の現場から

感じるままに

レセプト分析データの活用のために

2017年03月15日 | Weblog
M3「「エビデンスと診療のギャップ」、NDB等で解明 京大・中山氏、ビックデータによる観察研究、RCTを補完」(https://www.m3.com/news/iryoishin/509323)。<以下引用>
<「経口ステロイド薬を3カ月使用中または使用予定の患者が、『ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン』に準拠して、骨粗鬆症についての治療や一般的指導、経過観察を受けているのは23.3%」 「抗精神病薬を処方されている患者のうち、1医療機関のみから処方されているのは全体の97%に上るが、一方で残る3%は、2カ所以上の医療機関、中には11もしくは12の医療機関から処方されている患者もいる」 医療分野におけるビックデータの代表例が、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)。京都大学院医研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授の中山健夫氏らによる、NDBなどを利用した研究から、さまざまな診療の質に関わる実態が明らかになってきている。医師でもある中山氏が力を入れる研究テーマは、「エビデンスと診療のギャップ」。中山氏は、「エビデンスやガイドラインは作成しても、それが遵守されないことには、診療の質は上がらない。医薬品についても、創薬すれば、『患者さんは正しく服用するもの』と期待されるが、実際にはそうとは限らない。もちろん、全症例にガイドライン等が当てはまるわけではないが、実臨床とはどんなギャップが生じているのか、何に困っているのかなどを明らかにし、改善につなげていきたい」と研究の狙いを語る。前述の経口ステロイド薬の研究は、同薬に伴う骨粗鬆症発症予防のため、投与量に応じて「治療」「経過観察(定期的な薬物治療)」などの対応を行っているか否かを検討したもの。中山氏らが2011年に発表した研究では、『ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン』(2004年版)の遵守率は、プレドニゾロン5mg/日未満では治療7.3%、経過観察1.0%、5mg/日以上でも30.5%、全体では23.3%にとどまっていた(ガイドラインの最新版は2014年版)。2014年度から2016年度の「厚生労働科学研究 健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究」で取り組んでいるのが、NDBなどを活用した、「高齢者医療の適正化推進に向けたエビデンス診療ギャップの解明」。「超高齢社会に向けた日本における高齢者医療の在り方、方向性の提示は重要課題と言える。しかし、高齢者医療、特に終末期医療については、そもそもエビデンスに乏しく、どんな医療を実践すれば望ましいのかが分からない。その現状をまず明らかにするのが目的」(中山氏)。研究対象は、「不適切処方」「がん治療」「慢性腎臓病(CKD)診療」「高齢者の終末期・緩和ケア」の4分野。「NDBの蓄積データは100億件を超す。国民皆保険制度下で、どのような医療が行われているのかを、1億人規模の人口を擁する国レベルで解明できる、現時点での世界最大のデータベース」(中山氏)だが、悉皆性が高い一方、「レセプト病名」が存在したり、データクリーニングが行われていないなどの問題がある。このため、NDBに加えて、各種民間データベース、京大の「P-retriever」(レセプト情報に加えて、検査情報も含まれているデータベース)や院内がん登録などを用いて研究を進めている。2016年度までの研究だが、「慢性腎臓病(CKD)診療」については、eGFR(推算糸球体濾過量)で見た重症度と病名を突合した結果、CKDまたはその疑い患者のうち、実際に治療を受けているのは少なく、多数の未受診者が存在することが分かってきている。今後、CKDの「診療の質」の4指標(レニンアンギオテンシン系阻害薬、尿検査、栄養指導、非ステロイド性抗炎症薬の常用回避)の実施状況と、末期腎不全発生との関連なども調べる方針だ。がんについては、医療の均てん化に向け、がん診療連携拠点病院の整備が進められているが、拠点病院以外の診療の質向上、もしくは患者の集約化が必要なことが明らかになっている。胃癌の患者のうち、がん診療連携拠点病院を受けているのは、約4分の1にとどまっていたからだ。「高齢者の終末期・緩和ケア」については、死亡直前のICU入室や化学療法など、医療提供の在り方と医療費の関係などについて研究中だ。「仮説が事前に明確ではない観察研究の宝庫」 中山氏が、PubMedで検索した結果、医療分野で「ビックデータ」との言葉が使用されたのは、2008年のNature誌が最初だったという。特にここ数年、医療分野でのビックデータの利活用が進んでいるのは周知の通りだ。中山氏は、「ビックデータがあれば全てが解決するわけではない。目的に応じて、適切なデータを活用し、研究デザインをいかに組むかがカギ」と指摘する。NDBは、1.5T(テラ)を超える巨大なデータであり、そもそもハンドリングは容易ではない故に、「レセプト病名」の問題、検査実施の有無は分かっても、その結果が記載されていないなどの欠点はある。一方で、中山氏は、「仮説が必ずしも事前に明確ではない観察研究の宝庫であり、これまで見えてこなかったことが分かり、結果を対策に生かすことができる」と、ビックデータの利活用に期待を込める。「昔は、“研究”と言えば、基礎研究。その後、1990年代にEBMの重要性が指摘され、RCTなどの介入研究が行われるようになった。しかし、RCTは特定の施設で、限定された患者を対象にした研究であり、その限界もある」(中山氏)。医療分野のビックデータは、「予防、診断、治療・ケア」の分野での利活用が想定されるが、その中で中山氏が先行するとみるのが、「診断」の部分だ。実際、画像診断やがん関連遺伝子の検索などでの研究、実臨床での活用が進んでいる。「小ビックデータ」問題、解決を 中山氏は今後、医療分野のビックデータの利活用を進めるに当たって、データの整備とその取り扱いの両面から課題を挙げる。データの整備の面では、死亡統計、DPC、レセプトデータ、がん統計など、医療分野にはさまざまなデータがあるが、相互の連結はない。個人情報保護等に配慮しつつ、「小ビックデータ」(中山氏)をつなぐためには、医療等IDが必要になる。一方で、中山氏は、データの取り扱いにも注意を促す。例えば、想定していなかったさまざまな事象が見えてくるため、「都合のいい結果のみを報告する」といったバイアスがかかる可能性がある。またデータ量が多ければ、「弱い関連」として抽出されることがあり、その結果の解釈も注意が必要だ。「データには、知識が加わって、初めて意味のある『情報』になる。その情報をどのように意思決定に活用するかは医師にかかっている」(中山氏)。さらに、中山氏は今後の課題として、医学教育の問題を挙げる。「エビデンスと診療のギャップを埋め、医療の質を向上させるためには、まずエビデンスを構築し、各医師が自らの診療の適切性をエビデンスと比較することが求められる。エビデンス構築のため、また比較のため、つまりは他者のためだけでなく、自分自身のために正確なデータが必要になる。この思いを持って診療に当たれるよう、医学部で教えてもらいたい」。>
 
「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken.html?tid=129210)で昨年8月「レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するガイドラインの改正」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135204.html)が出たが、NDB分析データの活用が進んでいるようには感じない。第1回NDBオープンデータ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139390.html)には都道府県別に、特定健診・レセプト分析データが出ているが、活用以前に、気になることがある。例えば、一昨年9月に会計検査院「「レセプト情報・特定健診等情報データベースシステムにおける収集・保存データの不突合の状況等について」」(http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/27/h270904.html)(http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/27/pdf/270904_zenbun_01.pdf)が出ていたが、どうなっているであろうか。また、厚労省「診療報酬の審査の効率化と統一性の確保について」(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/committee/20170126/170126honkaigi01.pdf)p8「審査支払機関のレセプト審査におけるコンピュータチェックの寄与度を高め、徹底的な審査業務の効率化を行うとともに、地域ごとに差異のある審査基準の統一化を進める。」とあったように、レセプト審査の地域格差を解消する必要がある。「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken.html?tid=350947)の報告書(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000148300.pdf)p9「審査・支払効率化ワーキンググループにおける検討においても、限られた期間の中で必要な資料を揃えることが困難であったことから、審査の地域差についての具体的な内容までは吟味できていなかった」では話にならない。社会保険診療報酬支払基金資料(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20161024/161024iryou02.pdf)p6「統一的、客観的な判断が可能なコンピュータチェック項目は公表 (例)統計的に70%以上査定されている項目」とあるが、もっと情報公開は徹底すべきで、「統計的に70%以上査定されている項目」に限定する必要はない。「「診療報酬の審査の効率化と統一性の確保」について(概要)」(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20161011/161011iryou02.pdf)p1「社会保険診療報酬支払基金(以下、「支払基金」という)における診療報酬の審査について、レセプトの電子化がほぼ完了したにもかかわらず、紙レセプト時代と同様に、47全都道府県に支部を置き、人手による非効率な業務運営が継続している。」「この原因として、支払基金のICTに関する知見不足、経営のガバナンス不全及び実質的な業務独占による競争原理の不在などがあり、過去数度にわたり支払基金に自己改革の機会が与えられてきたにもかかわらず、抜本的な構造改革に至っていなかった。」は全くおかしい。健康保険組合連合会から社会保険診療報酬支払基金への要請(http://www.ssk.or.jp/pressrelease/pressrelease_h28/press_280408_2.files/pressrelease_2804082_10.pdf)では、審査の充実強化として「健康保険組合からの指摘により確認された審査結果の異なる事例については、要因を分析し、その分析結果を情報開示するなど、健康保険組合が納得できる審査基準の統一化への対応に取り組んでいただきたい」「審査における支部独自の取決め事項(査定基準等)や取扱い(返戻等)については、その有無や内容を開示し、是正・統一化を図っていただきたい」「審査情報提供検討委員会で検討する事例については、検討対象を広げることで、審査格差の是正に努めていただきたい」とあったが、「支部独自の取決め事項(査定基準等)や取扱い(返戻等)」にかなり違和感を感じる。利益相反禁止の観点からもおかしいであろう。レセプト審査の地域差解消がなければ、「医療費の地域差分析」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/database/iryomap/index.html)は色褪せてしまう。データヘルス改革推進本部(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-jyouhouseisaku.html?tid=408412)の議論にも注目である。とりあえず、保健福祉の現場では、医療計画作成支援データブック(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000115654.pdf)、国保データベース(KDB)システム、地域包括ケア「見える化」システム(http://mieruka.mhlw.go.jp/)を通じて、医療レセプト、介護レセプトの分析データの活用をもっと普及する必要があるように感じる。そういえば、医療計画の見直し等に関する検討会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=127276)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000154192.pdf)「地域医療構想調整会議における議論の進め方(その2)」p1「【データブックについて】 使用できる人の範囲や、地域で分析等に協力してくれる人へのデータ提供について、もう少し柔軟な運用方法にしてはどうか」、p3「データを用いた地域分析による現状把握を関係者間で共有し、理解する (様々な会議の場等の活用)• 調整会議のみでは関係者への共有・理解が困難な場合、その他の場について検討・実施する 例:都道府県医師会や病院団体等による勉強会の開催 既存の地域連携の会などの場を活用 (活用するデータの分析・評価)• 活用するデータについては、その分析の結果だけでなく、データの持つ特性等についても共有することで、結果の解釈に対する理解を深めることが必要(国においては、データブック等の運用方法について改めて周知) 例:県の担当者だけでなく、地元医師会や病院団体等の関係者や大学の有識者が共同して、データの分析・評価を実施 (地域の関係者・住民との情報の共有等)• 共有されたデータに関して出された意見等も含め、住民等に情報提供する際は、その理解が進むように、解説等を加えた上で公表する 例:住民等に対しては、データを取捨選択し、ポイントを絞って分かりやすいグラフ等を作成し、解説を添えて公表」とあった。平成27年7月28日医政局地域医療計画課事務連絡「地域医療構想策定支援ツール等から得られる情報の関係者間での共有等について」、平成28年9月14日医政局地域医療計画課事務連絡「医療計画作成支援データブック【平成27年度版】の利用について」では、医療計画作成支援データブックのNDB分析データの活用は医療計画・地域医療構想関係者に限定され、NDB分析データ(生データではない!)の活用には「国が定める誓約書」による厳格な規制がかかっており、地域包括ケアを担当する行政職員すら閲覧できないでいる。まずは、厚労省が、医療計画作成支援データブック(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000115654.pdf)の分析データを、少なくとも地域包括ケアに関わる行政職員に直ちに開放すべきである。そして、関係機関・団体と分析データを共有できるように至急規制緩和すべきである。また、国保データベース(KDB)システムについては、平成30年度からの国保の都道府県運営化を踏まえて、二次医療圏単位での分析もできるようにすべきである。NDBオープンデータ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139390.html)も同様である。
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