保健福祉の現場から

感じるままに

医療保険者による健診・保健指導義務付け

2006年01月31日 | Weblog
管内の某大手企業の産業医と話す機会があった。地域-産業保健連携のための協議会設置の協力を求めたところ、快諾いただいた。やはり、医療制度改革大綱(http://www.ajhc.or.jp/news/20051201-tai.pdf)に基づく、医療保険者による被保険者・被扶養者に対する健診・保健指導義務付けが話題になった。大手企業であっても被扶養者にまで拡充するのは大変とのことである。また、地域保健と連携して事業を推進するというが、従業員の住所と企業所在地が異なる場合の対応がどうなるのかはっきりしない。国は健診・保健指導標準化検討会を2月中に設置し、標準的な健診プログラム、保健指導プログラム、健診データ・保健指導データの管理方策、委託基準等を決めるようである。地域-産業連携の協議会では、標準的な健診・保健指導が各医療保険者で円滑に取り組まれるよう、まずは、お互いの信頼関係を構築する必要があると実感した。ところで、国の健診・保健指導標準化検討会で協議されるのは、あくまで生活習慣病、メタボリックシンドロームについてである。がん検診はない。この大手企業でもがん検診については、大腸、子宮、肺の各がん検診は実施しているが、胃がんや乳がん検診は実施していないとのことであった。国の報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/09/s0915-8.html)では、がん検診は生活習慣病とは分けて考えるとされており、今後の方向がはっきりしない。第一、労働安全衛生法における胸部エックス線検査でさえ、今のところ、国の検討会(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/12/s1226-4.html)で取扱がはっきりしていないようである。生活習慣病健診とがん検診の実施主体を分離するのか、しないのか、明確に示されるべきであろう。法改正によって、医療保険者に健診・保健指導を義務付けるのは結構であるが、現場で混乱が生じないよう、国会でも十分に議論してもらいたい。その際、大企業ではなく、中小企業に焦点をあててもらいたいところである。しかし、不思議なのは、法改正が目前に迫っている割には、公衆衛生・産業保健関係の学者からマスコミにいたるまで、この問題について積極的に触れようとしないことである。本当にどうなってしまったのであろうか。
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障害者自立支援

2006年01月30日 | Weblog
障害者自立支援法(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/index.html)の施行が目前にせまっている。障害者の方々に自立支援医療や介護給付等についての説明が精力的に行われている。精神障害者にとっては、従来の通院公費では医療費の5%負担であったものが自立支援医療では10%負担となる。また、現在、居宅生活支援事業としてホームヘルプサービス等を利用されている方のほとんどが窓口負担増となる。いずれも自己負担上限額があるとはいえ、当事者や家族の方々には大きな負担と感じる方が少なくないであろう。特に精神病院のデイケアやホームヘルプを頻繁に利用されている方には影響が大きく、利用回数を制限する方も出てくるであろう。つまり、「経済的な近接性」が低下するのである。その場合、「心理的な近接性」でカバーできればよいが、自立支援医療費は毎年更新手続きが必要となるとともに、ホームヘルプサービスの利用には障害程度区分認定が必要となり、利用者にとってはどう受けとめられるであろうか。病院のワーカーや地域の保健師の方々の役割がますます大きくなっていることだけは間違いない。果たして、障害者の自立支援はどうなるであろうか。
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受け手側の視点

2006年01月29日 | Weblog
介護保険改正による地域支援事業の介護予防事業はどうなるであろうか。生活機能評価は?、介護予防ケアマネジメントは?、特定高齢者に対する筋トレ・栄養改善・口腔機能向上のメニューは?、など、サービス提供側は不安でしょうがない。介護保険事業計画を机上の空論としないために、相当の実績はあげなければならない。しかし、受給側はどう感じるであろうか。高齢者にとって、魅力的なサービス提供がされるか否か、すべてはそこにかかっているであろう。そして、魅力的なサービスとは精神心理的に満たされたサービスである。
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見えない評価

2006年01月25日 | Weblog
例えば、「近接性」といっても物理的な距離や時間だけではない。当たり前のことであるが、経済的な近接性や心理的な近接性もあり、後者の方がより重視される場面も少なくない。同様に、健康についても検査数値や画像だけではわからない。有名なWHO憲章では「physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity」とされている。さらには、一時期「spiritual」の追加も議論されている(http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1103/h0319-1_6.html)。最近、見えない部分の「健康」がますます重要になっているように感じるのであるが、どうも現場ではお金(医療費・介護費)や統計数値(罹患率・有病率)による評価が幅を利かせている。
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雑感

2006年01月25日 | Weblog
第三期介護保険事業計画では、国指針に基づき、地域支援事業の介護予防事業(特定高齢者)は高齢者人口の5%程度に実施し、要支援者への移行は一定割合(20年度実施分は20%)阻止が前提とされている。計画通りいかなければ、将来、保険者の負担増となって跳ね返ってくることになるが、この計画が達成されると思っている方は果てしてどれくらいいるであろうか。この計画上の計算は介護保険財源の25%を国に依存しておりやむを得ないものである。また、特定高齢者の選定のための生活機能評価は、国負担金を得るためには、原則、老人保健事業の基本健康診査と併せて行い、基本チェックリストの文言修正も許されない。同様なことは、健康増進計画や医療費適正化計画についてもあてはまるであろう。糖尿病等の25%減少;平成20年~27年(http: //www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1019-1.html)が政策目標となるのは必至であり、ペナルティ(都道府県の診療報酬特例措置や医療保険者に対する後期高齢者医療支援金負担額の加算減算措置など)が設けられようとしている。昨年末の内閣府の報告書(http://www5.cao.go.jp/j-j/kozo/2005-12/kozo.html)では、学者の意見として生活習慣病対策による大幅な医療費削減は実効性に疑問とも記されたが、厚生労働サイドでは、全くといっていいほど異論が表立ってでていない。全国の公衆衛生学者・疫学者は本当はどう認識しておられるのであろうか。何か不気味な感じがしてしまうのである。
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保健活動がめざすもの

2006年01月24日 | Weblog
医療制度改革大綱(http://www.ajhc.or.jp/news/20051201-tai.pdf)に基づき、平成20年度から医療保険者に対して、被保険者・被扶養者に対する健診・保健指導が義務付けられ、「糖尿病等の有病者・予備群の減少」や「医療費適正化」がアウトカム指標となる。先般の全国保健指導担当者会議(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/01/s0113-6.html)で、今後の保健活動のあり方について詳細に解説されている。糖尿病等の減少や医療費増加抑制は医療保険者の取り組み如何によることが強調されている。医療保険者は健診・保健指導事業計画(仮称)策定、都道府県は健康増進計画改定、医療費適正化計画策定を行い、アウトカム指標が予定どおりいかなければ医療保険者のやり方が悪い、都道府県の指導が悪いということになりかねない。達成状況に応じて、都道府県の診療報酬特例措置や医療保険者に対する後期高齢者医療支援金負担額の加算減算措置などのペナルティが予定されており、何とか、アウトカム指標の数字が改善するように齷齪することになるのであろう。これが保健活動がめざすものであろうか。思えば、健康日本21は健康寿命の延伸と壮年期死亡の減少を理念に掲げていた。また、WHOでは健康の概念としてSpiritualityが議論されていた(http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1103/h0319-1_6.html)。もはや、崇高な理念を掲げる余裕はないのであろうか。何か殺伐とした空気を感じてしまうのである。
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医療保険者による保健事業

2006年01月22日 | Weblog
先般の医療制度改革大綱(http://www.ajhc.or.jp/news/20051201-tai.pdf)に基づき、医療保険者に対して、被保険者・被扶養者に対する効果的・効率的な健診・保健指導が義務付けられる。これは一見理にかなっている。医療保険負担上昇を抑制するためには、医療保険者が健診・保健指導を推進すればよく、医療保険者の「自己責任」が強調されている。医療保険者はこれまで以上に被保険者・被扶養者が健診・保健指導を受けるかどうか厳しく監視することになるであろう。但し、気になる点がある。健診・保健指導結果が芳しくない者に対して、行き過ぎたペナルティがないようにしなければならない。また、医療保険者による健診・保健指導の財源も気になるところである。おそらく、介護保険制度の地域支援事業と同様の構図で、保険財源から繰り出されることになるのであろう。地域支援事業は、従来の老人保健事業(65歳以上部分)や介護予防・地域支え合い事業等の再編であり、公費財源の一部を保険料財源に切り替えたものである。医療保険による健診・保健指導も公費財源の一部を医療保険料財源に切り替えることになるであろう。まさに、保健事業も「自己負担」、「自己責任」である。しかも、医療保険者には「実績」をもとに「罰則」がちらつかされている(後期高齢者医療支援金負担額について政策目標の実施状況を踏まえた加算・減算の措置http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1019-1c.html)。果たして、今後の保健事業の展開はどうなるのであろうか。
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健康・栄養調査

2006年01月19日 | Weblog
平成18年度に大々的な健康・栄養調査(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-chousa2.html)が予定されている。メタボリックシンドローム予備群等を把握するため、10万人規模の調査(腹囲・血圧・HDL・HbA1c・薬剤服用状況)を都道府県で実施するとされる。現場では年々調査の協力が得られにくくなっているように感じる。行政調査の困難化は昨年の国勢調査等でも指摘されているところである。地域のコミュニティが崩壊しつつあるのかもしれない。ところで、メタボリックシンドロームの実態把握をするだけであれば、健康・栄養調査ではなく、定期健康診査を利用する方法もあるのではないか。老人保健事業の基本健診や政府勧奨健康保険の生活習慣病健診等を活用してもよいであろう。もはや集団会場方式による健康・栄養調査は、実態を正確に反映しにくくなっているように感じてならないのである。
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メタボリックシンドローム

2006年01月18日 | Weblog
疫学者・公衆衛生学者が表立って反論しないところをみると、昨年10月の医療制度構造改革試案(http: //www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1019-1.html)に示された糖尿病等の患者・予備群の25%減少(平成20年~27年)はどうも大真面目に捉えられているようである。医療保険者には20年度から内臓脂肪型肥満に着目した被保険者・被扶養者に対する健診・保健指導を義務付けるとともに実施結果のデータ管理も義務付けることが正式に表明された。しかし、すべての医療保険者が対応できるとは到底思えず、日本医師会が提唱(http://www.med.or.jp/nichikara/vision2005.pdf)する「疾病予防保険制度」による検診や保健指導等の給付も検討されることになるのかもしれない。さて、平成18年度に各都道府県が大々的な健康・栄養調査(腹囲・血圧・HDL・HbA1c・薬剤服用状況)を実施し、それをもとに健康増進計画が改定される。その数字は医療費適正化計画ともリンクするが、果たして、都道府県ごとのメタボリックシンドロームの割合はどのくらいであろうか。医療費や保健事業実施率等との相関もどうなるか、まさに興味津々である。
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感染性胃腸炎

2006年01月17日 | Weblog
例年冬場になると感染性胃腸炎が流行する。感染症発生動向調査(http://idsc.nih.go.jp/idwr/pdf-j.html)でも定点医療機関あたりの報告数はダントツに多い。全国各地で施設や学校等で集団発生しているであろう。感染性胃腸炎の中でもこの時期はノロウイルスによるものが多い。これは牡蠣などの二枚貝の生食によって感染するのは保健医療関係者には常識であるが、住民への啓発が行き届いていないように感じる。例えば、生食用牡蠣でも規格基準にはウイルス検査がなく、生食用であってもノロウイルス感染があり得ることを普及すべきであるが、厚生労働省のQ&A(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)も今一歯切れが悪い。食中毒統計(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.html)で原因物質別の食中毒患者数がトップになっているにもかかわらずである。せめて、医療機関、福祉施設、学校職員等には注意を徹底したいものである。しかし、ノロウイルスは汚染食品の経口感染だけではない。吐物・下痢便の接触・糞口感染やエアロゾル感染もある。感染力は非常に強い。手洗いの徹底、適切な吐物・下痢便の処置や消毒剤の使用等の感染拡大防止策を徹底する必要がある。とはいえ、完全に防ぐのは不可能であり、マスコミの認識も変わってもらいたいものである。
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新型インフルエンザ

2006年01月16日 | Weblog
トルコ保健省が15日、トルコでの鳥インフルエンザ感染者数が19人となったことを発表した。WHOはトルコ感染地域住民の鳥フル感染の実態調査に乗り出したようである(http://www.asahi-net.or.jp/~ie3t-tnok/jyouhou/BIRDFLU/index2.html)。ドイツではトルコ帰りで感染疑い事例があったとされる(結果は陰性)。厚生労働省は昨年11月に新型インフルエンザ対策行動計画(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/03.html)を策定し、各都道府県でも計画が策定されている。仮に、中国、東南アジア、トルコなどからの帰国者で高熱・呼吸器症状を訴えた場合の現場の対応はどうなるのであろうか。現状の感染症法では高病原性鳥インフルエンザは4類感染症であり、疑いの段階では法に基づく対応はない。とはいえ、状況によってはウイルス検査、入院医療、経過観察、接触者健康調査等の対応をとらざるを得ないであろう。果たして、今後の展開はどうなるであろうか。トルコと同様な事態が日本近辺で起こらないとは限らないであろう。

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官から民へ、アウトソーシング

2006年01月15日 | Weblog
「官から民へ」が金科玉条になっている。民ができるものは民に行わせるというものである。保健事業でもこれまで健康診断や予防接種などは集団から個別化が図られ、「官から民へ」が推進されてきた。しかし、実施主体はあくまで「官=市町村」であった。しかし、今度の医療保険制度改革(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/s1130-6.html)による医療保険者に対する健診・保健指導の義務付け(被保険者、被扶養者)は違う。老人保健事業は、事業所で保健サービスが受けられなければ対象としてきたが、法改正により、実施主体は各医療保険者に義務付けられる。市町村は国保はともかく、被用者保険の被保険者及び被扶養者については積極的に対象者にしないこととなる。市町村自体も対象者に対する直接的なサービスではなく、アウトソーシング、つまり委託することが勧められている。委託には委託料が勘案され、行政の人件費と委託料との比較もなされることになるのであろう。
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障害者自立支援法

2006年01月11日 | Weblog
障害者自立支援法に関する最新の資料は、厚生労働省障害者福祉専用HP(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/index.html)よりもWAM NET(http://www.wam.go.jp/)の方がどうも掲載が早いようである。とにかく障害保健福祉主管課長会議資料は毎回膨大であり、理解するのに苦労されている方が多いであろう。国会議を受けて、地元でも頻繁に説明会が開催されているだろうが、膨大な資料について一方的な説明を聞くだけに終わっているかもしれない。しかし、最近は地元の説明会よりもHP掲載の方が早いことが多い。説明会まで「知らされていない」というのではなく、積極的に情報入手していかざるを得ないように感じる。むしろ、説明会では前回までとの違いだけ説明し、あとはすべてQ&Aになった方がよいかもしれない(担当者は悲鳴をあげるであろうが)。さて、今日は、精神障害者家族会の方々と障害者自立支援法に関する勉強会を開催した。高齢者が大半であり、疑問点について一つ一つ対応しながら、1時間半にわたっての勉強会であった。自己負担に関する不満は確かにないこともないが、評価する意見が少なくないのである。「これまで地元自治体に毎年のように陳情してきたが、どれだけ相談にのってもらい、実行されてきたか。今後の障害福祉計画に基づく確実な基盤整備に期待したい。」というものである。不思議とこちらが元気づけられたような感じがしたのである。ところで、新法制定とともに精神保健福祉法もかなり改正されているのであるが、こちらのHP掲載が遅れているのはなぜだろう。
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雑感

2006年01月09日 | Weblog
どうも最近、時間速度が増しているように感じられてならない。現場では介護保険法改正や障害者自立支援法への対応が慌しい。提供側もそうだが、高齢者や障害者等のサービス利用者側の理解が追いついていないようだ。今年から医療保険制度改革も大変であろう。地域保健の現場では、老人保健、職域保健の抜本的な転換が起きそうである。一方、健康危機の場面はどうであろう。新型インフルエンザがどうなるか、大規模な自然災害や人的災害もあるかもしれない。果たして一年後、このブログには何を書いているであろうか。
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保健所

2006年01月07日 | Weblog
保健所の今後はどうなるであろうか。昨年の地域保健対策検討会で協議(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/dl/s0523-4a.pdf)されたように地域の健康危機管理拠点はいうまでもない。警察署と同様に、全国ネットワークの強化がますます求められるであろう。人的、物的交流が広域化している中で、一都道府県で完結しない事例が多くなっているからである。例えば、全国から国立感染症研究所にO157等の検体が送付されているが、遺伝子が同一なものが度々検出されていることからもうかがえる。自然災害、人的災害、紛争など広域的な対応が必要になるケースが今後もでてくるであろう。しかし、それだけではない。市町村、民間事業所、地域・産業保健の調整・支援がますます重要になっている。例えば、児童福祉法改正による市町村の要保護児童対策は非常に心許ない(要保護児童対策地域協議会設置済みは4.6%;17年6月1日現在)。精神保健福祉法改正により、精神保健福祉相談員の市町村配置が規定され、精神福祉相談が義務付けられるとはいっても、直ちに対応できるとは思えない。精神障害者居宅支援事業の市町村ごとの実績をみれば明らかである。また、介護保険法改正による本年4月からの地域支援事業・新予防給付については全国的な混乱が避けられないように感じる。市町村における特定高齢者把握や地域包括支援センターにおける介護予防ケアマネジメントはどうなるか。市町村や通所事業所において、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能のサービスが円滑に提供されるのか、不安に感じている地域が少なくないであろう。さらに、医療保険制度改革(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/s1130-6.html)による医療保険者に対する健診・保健指導の義務付け(被保険者、被扶養者)に関して、中小事業所を中心に悲鳴をあげざるを得ない事態が予想される。それらの不安・不満の軽減・吸収役として、保健所の存在が必然的に脚光を浴びるように感じられてならない。
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