田舎ならではの冬の風物詩、「あぜ焼き」が先週の日曜日にありました。
春の扉を開く第一関門ですが、列島は寒波や豪雪に閉ざされる重き門になっています。
暦は私達を置いてドンドン前に進み、明日は節分、明後日は立春。
「ちょっと待って」と裾を掴みます。
人生は色々の思いを残して過ぎ去るものですが、「節分」にもいわく言い難しの思い出があります。
当時幼稚園児だった息子の作ったお面をかぶって、わたくしはJに外へ放おり出されました。
明日に立春を控えた晩とは言え、その日も今日のように寒い日でした。
お面の向こうは母と知っている子供達は、当たるでもない、外すでもないチョロチョロと豆を投げて来ます。
「この野郎!この野郎!鬼め」
夫はいきり立って、私を目掛けてビシビシ豆を投げて来ます。
まだ三十半ばの、悪ガキ野球では将来はプロかと先生をうならせた投手の球威は強烈で、一球も外れることはありません。
あまりの悔しさにその場に泣き伏しました。
演劇部出身のわたくしの演技と見た夫は、勝ち誇ったように雨あられの追い討ちをかけます。
こういう種類の男はここまで来ると救いようがありません。
面の向こうで、本当に鬼と化したわたくしの情念を知る由もなかったのです。
その後の顛末は門外不出と致します。
別れることもなく来た私達の星霜は「ね」「うん」で終(しま)える、記憶の彼方に沈もうとしています。
その時が来たなら「右腕(うわん)をさすってやろう」 そんな別れでいいと思っています。
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