事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

明細書を見ろ!2015年3月号 長いお別れ。

2015-03-19 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2015年2月号「いい話と悪い話とよくわからない話」はこちら

ご愛顧をいただきました「明細書を見ろ!」も今年度最終号。残留組の方々にはひきつづきお楽しみいただく所存ですが、これでお別れの方も多いので、不良事務職員が給料袋に来年度どんな事務だよりを入れるかを予告編ぽく。

◆給与改定
4月から、給料表そのものが見直されます。若手を引き上げ、ベテランを下げる。経過措置はあるものの、しかしまた長い辞令がやってくるのかしら。履歴書に書くのもひと苦労なんだけどな。

◆就学援助とはなにか
子どもの貧困率が先進国中最高と(いつのまにか)なってしまったニッポン。セーフティネットとしての就学援助制度とはどんなものなのか。知っているようで意外に知られていないこの制度を大特集します。

◆年金一元化
平成27年度最大のイベント(事務屋にとっても、あなたにとっても)はこれ。10月1日から、公務員が厚生年金に加入します。どうしてこういうことになったのか、公務員の年金はどう変わるのか(変わらないのか)。まだ不確定な部分も多いので五里霧中。

……とか言いながら、目の前にチョロっとネタがあるとそちらに走るのが見え見え。乞うご期待。

画像は「深夜食堂」
テレビ版よりも泣かせます。特に多部未華子のパート。主演が小林薫なのだから、“あの人”の登場は予想してもよかったのに、「おおお」とびっくり。オダギリジョーの警官がいい味。ネタバレだけど向井理もちょっとだけ出ます。ぜひぜひ。

2015年4月号PART1「赴任旅費」につづく

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冠婚葬祭のひみつ 最終回

2015-03-18 | 社会・経済

Heart - These Dreams

PART7はこちら。さあそろそろ冠婚葬祭ネタもまとめに入りますよ。

新郎新婦が各テーブルを回ってキャンドルに灯をともすキャンドルサービスが話題になるのは1974年。ろうそくメーカーのアイディアというが、ステージと観客席とに分かれた披露宴で、新郎新婦と客が至近距離でふれあえる機会として人気を博したのであろう。
式場併設の教会の増加で牧師の有資格者の就職先が増えたとも聞く一方、じゃあチャペルの牧師はどこで調達するかというと、それ専用の派遣会社がちゃんとあったりするのである。
ちなみに、大手ホテルで最初に仮設のチャペルを設けたのは新宿の京王プラザホテル。1975年のことという。

……これまでの例を見てきたように、冠婚葬祭にはビジネスという側面が冷厳にある。葬式の寺独占はまだ崩れそうにないが、結婚のキリスト教スタイルだってどうなるかわかったものではない。むやみに短いスパンで盛衰はあらわになるわけだから。わたしがしかし思うのは、少子(結婚の減少)高齢化(いずれ高齢層も減少する)のなかで、冠婚葬祭が思い切りシンプルになっていくのではないかということだ。ところがところが

帯祝い(妊娠五ヶ月目)、出産祝い、お七夜(生後七日目、命名)、宮参り(男子は生後30日目、女子は生後31日目)、お食い初め(生後100日頃)、初誕生日、初節句、少し間をおいて七五三。
こうした伝統的な産育行事は形骸化して今ではあまり行われていない……のかと思ったら、あにはからんや、若い世代のほうが熱心だったりするのである。宮参りの実施率は若い世代の母親で40%、シニア世代で15%。子どもに餅をしょわせる初誕生日の行事(一升餅・力餅)は、若い世代の九割が知っていて実施率が八割。シニア世代はほとんどが知っていたものの実施率は半数だったという調査もある。イベント好きな世代はどこまでもイベント好きなのだ。子どもの数が少ないことに加え、これは冠婚葬祭が本で学ぶ「情報」になったことも関係しよう。

……こりゃ、簡単には廃れませんな(笑)。いやビッグビジネスであるかぎり、確実に結婚式は派手になり、同時に“やらない層”も増えるという二極化が待っているのだろう。あ、それは冠婚葬祭にかぎらない話なのか。
【冠婚葬祭のひみつ・おしまい】

本日の一曲はハートのThese Dreams。アンとナンシーの美貌は、このころは拮抗していたんだよねえ。キャメロン・クロウはナンシーを選んで正解だったよなー。大きなお世話ですが。え、あの二人はもう離婚していたの?えーと、いちおう離婚も冠婚葬祭のひとつということで……

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冠婚葬祭のひみつPART7

2015-03-17 | 社会・経済

Bruce Springsteen - The River

PART6はこちら

儀式の変容は、それまでの日本の結婚式を支えてきた習慣もあっさり放棄させた。仲人(媒酌人)の消滅である。減少ではなく消滅。媒酌人(結婚式当日だけの仲人)を立てた結婚式は、2005年現在、全国平均で一割未満。首都圏にいたっては1%未満である。首都圏でも95年には60%以上が媒酌人つきだったことを思うと、ジェットコースター並みの落ち込みようだ。

「失礼しまーす」と校長室に入っていく二十代のわたし。

「ちょっと、お話があるんですが」

普通、人事かなにかの話だと思うよね。

「なんだ?嫁でももらうのか?」

いきなりの大正解。なんだよつまらねー。

この当時、うちの業界では仲人は所属校の校長にお願いするのが一般的だった。そのころのうちの学校には若い職員が多かったので、ある披露宴に出たらとなりにすわった同級生かつ元同僚が

「あのさあ、俺が近ごろ出た披露宴って、三回ともあの仲人だぞ

わたしからスタートして三組連続(笑)。校長ありがとうございました。

さて、そんなシステムは現在完全に崩壊しているのだとか。「そういえば今日の披露宴には仲人いなかったな」と疑問を持ったのも今は昔。考えてみれば、本当に結婚の仲立ちをして仲人をやる人って当時からほとんどいなかったわけだから、旧弊として消えていくのも仕方のない話か。

それにしても急激な減少。これまたホール葬と同じように“誰しもがやめたいと思っていた状況”に火がついたわけだろう。冠婚葬祭の姿には、世間の“気分”が正直に反映する。以下次号

本日の一曲は、仲人どころではない結婚の現実。ブルース・スプリングスティーンの「ザ・リバー」。彼のベストチューンだと思う。

Then I got Mary pregnant
and man that was all she wrote
And for my nineteenth birthday I got a union card and a wedding coat
We went down to the courthouse
and the judge put it all to rest
No wedding day smiles no walk down the aisle
No flowers no wedding dress

ここまではまだいい。

But I remember us riding in my brother's car
Her body tan and wet down at the reservoir
At night on them banks I'd lie awake
And pull her close just to feel each breath she'd take
Now those memories come back to haunt me
they haunt me like a curse

……すばらしい詩だ。にしても、結婚ってなんでしょう(T_T)

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「2番打者論」 赤坂英一著 PHP研究所

2015-03-16 | スポーツ

著者の赤坂英一さんというスポーツライターの経歴がまず面白い。巨人たたきが売り物(確かに)の「日刊ゲンダイ」の記者時代から巨人の川相に注目し、のちに「バントの神様」という書にまとめる。

もうあれほどの二番打者には会えないだろうと思っていたら、井端、栗山、田中浩康、本多雄一といった新しいタイプ(ひとくくりには到底できないあたりが新しい)の二番打者が次々に輩出している背景は何かを語ったのが「2番打者論」だ。

まず、2番バッターに向いているのは右打者か左打者かでもう意見が分かれている。川相はこう主張する。

「2番には右バッターの方が向いていると思います。ピッチャーと一塁ランナーの両方が視界に入ってるから。とくに足の速いランナーなら、サインが出ていなくても走るケースがあるでしょう。そういうときにスタートを切るのが見える。見えればわざと遅く空振りをしたりしてキャッチャーの送球を邪魔することもできるんでね」

井端も同意見。

「ぼくの場合、1番の荒木が一塁に出たとき、彼のいろんな仕草で走るか走らないかを判断するんですよ。」

このふたりのコンビネーションはかなりのものだったらしい。今は別チームにいるのが惜しいかな。

しかし近鉄時代に、あの「プロ野球ニュース」でおなじみだった岡本伊三美監督から「もうお前にサインは出さん。お前と大石にまかせるわ」とまでいわれた新井宏昌

「2番は左バッターのほうが面白いですよ。右バッターと違ういろんなことができるから」

と主張する。ノーアウトで一塁か二塁に走者が出ると、左バッターには初球、アウトコースのまっすぐを多くのバッテリーが選択する。インコースを突くとひっぱられて右打者が進塁打をうつのと同じになってしまうから。そこで左バッターは……

うわああ奥が深いなプロ野球。こんな視点できっちり味わえたら楽しそうだ。球春到来。ああ早くペナントレースが見たいです。

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お手軽な脅迫。

2015-03-14 | ニュース

岡村靖幸 友人のふり (スタジオLive)

不可思議な恐喝が全国の教員に広がっているとか。

学校を辞め退職金も収入も失い家族に不安を与え家庭も崩壊するまで私たちは追い込みを続ける

……雑な脅迫。句読点も使えないのか、あるいは脅迫状というのは怪人21面相以来、変な日本語を使うのがトレンドになっているのか?と思えば

厚さの薄い週刊誌の真ん中のページを開き現金を平らにはみ出さないように挟む

……てな具合に手慣れたふうでもある。さてこの脅迫、全国で二千件以上と言われているが、どう考えても送られた数はそれ以上でしょう。だって、もしもあなたの郵便受けにこのような封書が入っていたとして、それを管理職や警察に報告しますか。

わたしならしない。たとえおぼえがあっても(笑)
理由は簡単、振り込め詐欺なのがあまりにもあからさまだし、だいたいめんどくさい。

こう考える人も多いだろうから実はもっともっと送られていたのだと思う。
実際にその脅迫状を見た読者からの報告はこうだ。

・いわゆる脅迫文は、リソグラフとかそんな感じの印刷。(パソコンのインクジェットとかレーザープリンタとか、トナーの必要なコピーじゃない感じ。)

・宛名は、とっても丁寧に書かれている。(ちなみにこちらで見たのは白い封筒。)

・その割には、中の脅迫文は雑に折ってあり、折り目もざっくりした感じ。

……確かにテレビのニュースで見た感じでも、宛名はきれいな字だったし、しかも筆跡は同一ではない。ってことは組織的に雑なのか(笑)バイト雇ったろ。

古い名簿(つまり情報として安い)を使ったことといい、手口が妙に細かいことといい、わたしがこの事件で感じるのは、雑だと同時に、オリジナリティが感じられないなーということ。不祥事が報道される職業を狙い撃ちすれば、ひっかかるタマがいるに違いないというお手軽さが透けて見える。

まあ、振り込め詐欺自体が雑なシロモノなのに、それなりに収益があるというビジネスモデルだからな。

ああ、それにしてもわたしにもそれ送ってほしかった。徹底的にネタにするんだけどなあ。あ、学校事務職員は体罰しないから無理か(笑)

すべての脅迫状の指紋をチェックする(のかな)警察もたいへんだろうけれど、それを防ぐために手袋をしてせっせと宛名書きをしていた犯人たちを考えるとちょっと笑える。いまどき、ブラックメールを郵便で出す人もいるとは……

本日の一曲は岡村靖幸の「友人のふり」ある歌詞のせいで近ごろはまずオンエアされないけれど。

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冠婚葬祭のひみつPART6

2015-03-13 | 社会・経済

大貫妙子 彼と彼女のソネット T'en Va Pas

PART5はこちら

辛気臭い話がつづいたので、今度は結婚式でいきましょう。こちらのブレイクスルーはなんと天皇だった。

神前結婚式のルーツは1900年(明治33年)5月10日の、皇太子嘉仁(大正天皇)と九条節子(貞明皇后)の婚礼である。

これはどういうことかというと、カップルという概念がその当時はなく、嘉仁と節子が並んでお目見えしたことに世間は仰天したという。そして、近ごろでいえば藤原紀香と陣内智則(あ、例えが縁起でもなかった)が生田神社で行ったような神前結婚式が一般化した。

皇族のブレイクスルーはこれにとどまらず、昭和天皇や今上、そして皇太子と雅子妃の結婚も、一種のブームを呼び、世間に浸透する契機となっている。ロイヤルウェディングを、英国に負けずに日本人も大好きなのである。

国家神道の下での神社は「国家の宗祀であって宗教ではない」ため、葬式を行う自由は制限されていた。葬式ビジネスを寺に独占されていた神道界にとっても、結婚式は新たなビジネスチャンスだったにちがいない。

……冠婚葬祭をビジネスの側面から見れば、その盛衰にはどんなファクターが働くのだろう。神社にとって、結婚式はまことにおいしい存在だったはず。ところが。

ゼクシィの調査によれば(2004年)チャペル式が四分の三を占める。神前式は人前式より少なく一割未満。明治の末に登場し、高度成長期に全国津々浦々まで勢力を広げた神前結婚式は、わずか30~40年で王位を退いた。

……十年前でこうだったのだ。現在はもっとチャペル化が進んでいることだろう。それ以上にすごいのは……以下次号

本日の一曲は大貫妙子の「彼と彼女のソネット」そうだよなあ、恋愛って偶然から生まれるよなー。結婚はその集積だ。この曲はわたしが結婚した年のだったんだね。

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冠婚葬祭のひみつPART5

2015-03-12 | 社会・経済

阿部芙蓉美? : 「群青」??(Abe Fuyumi : "gunjo")

PART4はこちら

地域的な差はあるだろうが、わたしの住むチョー田舎では、すべての葬儀は自宅かお寺で行われた。病院から遺体がもどれば自宅に北枕で安置。通夜・念仏・葬儀・初七日・三十五日、場合によっては四十九日まで自宅か寺。

「やっぱり、仏は自宅から出してやりたい」

こんな建前がなにより優先していた。ホール葬?ふざけんじゃねーよ、と。

でも内心ではみんなこう思っているはずだ。

うわー自宅で葬儀かよ。

・駐車場に苦労しそうだなあ

・暑いんじゃないか(寒いんじゃないか)

・天気が悪かったら外で棺を待つのつらいなあ

そしてなにより

・正座はかんべんしてくれー!

というところだろうか。念仏が長いところだと、あれは拷問ですもんね。近ごろの和尚さんは「どうか足を楽にして」とか言ってくれるけれど。

前にもお伝えしたように、うちの近所ではわたしの母親のが最初のホール葬だった。それは、母親自身が強硬に主張したからだ。というか自分で互助会に入ってました。台所をあずかる身として、自宅葬は女性たちにとって大きな精神的肉体的苦痛がともなう。

さて、あれから十年。近所のお葬式状況はどうなったか。なだれをうってホール葬に移行しているのだ。毎年毎年たくさんの住民が亡くなっている限界集落で、あれ以降に自宅葬をやったのは(わたしの知るかぎり)二回だけだ。

つまり、みんな自宅でなどやりたくなかったのである。うちの母親がブレイクスルーだったので、これはちょっと誇らしい。ありがとう母ちゃん。以下次号

本日の一曲は阿部芙蓉美の「群青」。

ぶっちゃけた話、このシリーズは『死』や『死人』に関連した曲を偶然つづけています。名曲多いなあ。

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「ソロモンの偽証 前篇・事件」(2015 松竹)

2015-03-11 | 邦画

原作の特集はこちら

1990年12月25日早朝、東京の下町にある公立中学校の通用門近くで、生徒の遺体が発見される。学校も警察も飛び降り自殺と判断したが、①学級委員②担任③校長宛に告発状が送られる。自殺ではなく、殺されたのだと……。

宮部みゆきの、あの長大な原作を映画化しようとし、実現したことがまずすばらしい。新歌舞伎座の好調を背景に、松竹が本気で自前の映画製作にとりかかったことが幸運だったし、一万人規模のオーディションで選ばれた33名の中学生たちに、確実に才能があったことはもっと幸運だった。

特に主役の藤野涼子。役名を芸名にしたこの子は確実に大女優になる。賭けてもいい、NHKは朝ドラの主役に抜擢することと思う。それほどのタマ。

彼女の選択はまわりのスタッフから反対されたらしいけれど、成島出監督(「八日目の蝉」「山本五十六」)がつっぱったそうだ。さーすが相米慎二監督(「翔んだカップル」「台風クラブ」)の弟子だけに女の子を見る眼がある。

しかし中学生がすばらしいだけではこの作品は成立しない。後篇で明らかになるであろう“真犯人”の邪悪さは、彼らだけでは受け止めきれるはずがないからだ。

そこで登場するのが実力派俳優たち。未熟で逃避をくりかえす担任に黒木華、子どものためという善なる思いが最悪の結果を招く校長に小日向文世、生徒が“覚醒”することに我慢できずに涼子をたたいてしまう学年主任に安藤玉恵(体型・姿勢までいかにも学年主任っぽい!)、太っていることは悪いことじゃないと松子ちゃん(いいキャラでした)をさとす母親に「湯けむりスナイパー」の池谷のぶえ、夫の暴力のために身体の蝶番が外れたかのような市川美和子、江口のりこ……んもう数えきれないくらいだ。

特に、冷静な女性刑事を演じた田畑智子と、無邪気さがかえって怖い永作博美はすごい。

批判もあるようだけれど、後篇へのつなぎはあれで大正解だと思う。ギリギリとひきしぼられたギターの弦が、音を立てて断裂する感じ。おみごと。

キャラが徹底的に描きこまれた原作のなかで、ただひとり“和服を着ている”としか描写されない人物は、はたして後半登場するだろうか。わたし、原作では彼女で号泣でしたが。

もちろん後篇につづく。ああ待ち遠しい。

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冠婚葬祭のひみつPART4

2015-03-10 | 社会・経済

The Clash - London Calling

PART3はこちら

(仏教の教えには葬式という発想がないにもかかわらず)なぜ葬式仏教とよばれるような存在に変わったか。すべてのはじまりは、1635年(寛永12年)ごろ、江戸幕府がキリシタン弾圧のためにもうけた寺請(てらうけ)制度である。日本人全員を近くの寺に帰属させ、寺には寺請証文(キリシタンではないことを証明する身分証書)を発行し、宗門人別帳に捺印する権限を与えた。
近世の寺は、宗教施設である以上に、警察(キリシタンの摘発)と役所(檀家の管理)を兼ねた、末端権力の一部だった。

……つまり葬式を請け負う以前に、寺が住民を“管理”しているのだ。そう考えれば、過去帳という存在に、違った性格も見えてくるじゃないですか。
 そんなお寺が主導する葬儀は、本式にやれば延々と行列を組むなど、かなりめんどくさいものだったらしい。そこで生まれたのが『告別式』という制度だ。

告別式のルーツもほぼ特定されている。1901年(明治34年)12月17日に行われた思想家中江兆民の葬儀。無神論者だった兆民は、大げさな葬列を組んで練り歩く仏式の葬式を好まず、遺体は解剖の後、すぐ火葬にするようにと遺言。遺族と友人、弟子らが相談し、「告別式」の名で、今でいうお別れ会みたいなものを青山斎場で開いたのである。

……またもやびっくり。ここで中江兆民の名が出てくるとはなあ。逆に言うと、中江兆民以前には告別式って存在しなかったのだ。新しい。

あとで結婚式の項でも紹介するけれど(あっちは皇族だ)、このように冠婚葬祭には、システムを無視する(それまでの常識からすれば)とんでもない事例がまずあって、しかし世間の大半が内心では変えたいと思っている方向に一気に誘導するのだ。徹底した唯物論者であり、奇行で知られた兆民が始めたことであったとしても。

現代におけるホール葬をそれでは考えてみよう。以下次号

本日の一曲はクラッシュ「ロンドン・コーリング」。ジョー・ストラマーが死んでから、もう十年以上になる。

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日本の警察 その73 「憂いなき街」

2015-03-09 | 日本の警察

その72「ストロベリーナイト」はこちら

道警シリーズ第7弾。

「笑う警官(うたう警官)」の延長線上に、ここまで変奏曲をつむげるとは、さすが佐々木譲さんは警察小説の手練れですね(本人はそう言われるのは嫌そうだけれど)。

今回も安定安心の一作。警察小説というより、ジャズ小説の色合いが強い。愛した女に覚せい剤の過去があることで自分の思いをふり切る津久井。彼はその女性のライブの会場から静かに去っていく……

あれ?おれはこういう場面を見たことがあるぞ。まんま「ストリート・オブ・ファイヤー」じゃん!津久井の私生活にも

「おい、誤解すんなよでかいの。もう言ったでしょ?あんたはあたしのタイプじゃない

なーんてにくい言葉でくどいてくれる女性が現れてくれるといいねえ。佐伯と小島はついにそういうことになってしまうんだし。

その74「造花の蜜」につづく

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