前からそうだろうとは思ってたんですよ。柳の政治的方向性は、どうやらわたしにとても近い。ジョーカーシリーズのような娯楽小説のなかからでもそれはうかがえる。
そんな柳が正面から東日本大震災を描く。
もちろん生硬にすぎるという評は当たっているだろう。しかし、ストレートをど真ん中に投げ込むことは、いつか誰かがやらなければならなかったのだし、その意図だけでもこの短編集は読む価値がある。タイトルは(クリスティの引用でもあるけれど)「象は恨みを忘れず、かならず報復する」という意。
フクシマに同情的なインテリたちよりも、ヘイトスピーチをかます右翼のなかにいた方が被災者が安心できるくだりなど、なるほどと思わせる。むしろ冷静な書なのだ。
あれから5年経つというのに復興は進まず、5年しか経っていないのに原発は再稼働している。妙にひねった作品にしては、日本人の心には届かないのだという柳の諦念が底にあるんだと思う。だからと言って、やれやれと嘆じてだけいてはいけないんだとわたしも鼓舞されました。
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