事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その78 志布志事件

2015-06-12 | 日本の警察

その77「違法捜査」はこちら

選挙違反で摘発された住民たちは困惑する。なにしろまったく身に覚えがないので。しかし刑事は絶対にやったに違いないと恫喝。この本でははっきりと断定はされていないが、現職県議のブレーンが、ある意図をもって警察にガセネタを提供したことがうっすらと察せられるつくりになっている。

捜査を主導したのは志布志署長と、鹿児島県警のなかでエリートとされる捜査二課(知能犯担当)の警部。彼らふたりは、とても優秀な警察官だとそれまで見なされていた。勘が鋭く、名刑事だと。しかし裏を返せば、見込みが違った場合にはこの事件のように悲惨なことになってしまう。彼らは自分たちの描いた構図に現実を当てはめ、無理矢理に立件したのだ。

しかし捜査する刑事たちも途中で気づき始める。わずか十数名の票を“買う”ために二百万近い金を出す値打ちがあるのか。その金をねん出した形跡も使われた形跡もないのだ。これはひょっとして無理筋なのでは?と。

それでも、止まらないのだ。

日本警察の最大の欠点がここにある。上の決定は絶対で、それに刃向かうことは許されないとする風土。この事件の捜査においても、異論をはさんだ捜査員は捜査本部を外されている。

鹿児島県警といえば、日本の警察を作り上げた薩摩藩士、川路利良初代大警視のおひざ元。東京都の警察(つまり警視庁)などをのぞけば他県よりもワンランク上の存在と見られている。いわば日本の警察の象徴。そこで起こったこの陰惨な捜査は、だから重い意味を持つといえるだろう。

救いは、この事件をすっぱ抜いた朝日新聞の熱意と、命を賭して事件に取り組んだ弁護士がいたこと。そして取り調べの可視化が検討されていることだろうか。どんな理屈があるにせよ、可視化、しかも100%の可視化は絶対に実現するべきだとつくづく思い知らされた。

さあ夜だ。ノックの音がする……

その79「やがて警官は微睡る」につづく

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