その76「機龍警察完全版」はこちら。
もしもあなたの家に、刑事を名のる人間が複数名やってきて、「明日、署に来ていただけませんか」と言われたとする。なにも心当たりがないのに、とりあえず任意で出頭すると「このあいだの県議選で現金を配った(受け取った)だろう」と指摘される。
絶対にやっていないし、根拠のない話なのだから簡単に否認し、すぐにうちへ帰れると思うでしょう?でも警察はこんな手を使うかもしれない。
・「早く正直なじいちゃんになって」と家族からのメッセージに見立てた紙を取調室に置き、刑事が両脚を持ってその紙を踏みつけさせる「踏み字」を強いられる。
・「(買収を)認めれば逮捕はしない」と言われ、窓を開けて大声で罪を認めさせられる。
・「否認をつづけると家族も全員逮捕する」と恫喝される。
・勾留がひたすら長期化し、他の人は認めたぞと言われつづける……
こんな状態で、ずっと否認する自信がおありだろうか。これらすべてが、鹿児島県志布志町で行われた。いわゆる「志布志事件」である。
あからさまなでっちあげであることは聞いていたけれど、まさかここまでひどかったとは。「違法捜査」は、冷静な筆致で事件の異様さと背景を描いて見せている。これが平成の世にあった事件なのかと気が遠くなった。
事件の発端はきわめて政治的だ。ガチガチの保守王国鹿児島の県議選。定数3を自民党現職が独占することが当然だった曽於郡選挙区に、ひとりの新人が立候補する。その新人は結局3位で当選するのだが、県警のある警部が、ある現職県議と情報交換していたことがのちにわかる。そして、新人議員のまわりを警察が動き始める。
しかしその議員は容疑を完全否認したために(なにしろアリバイまであったのだ)、容疑は、今度は志布志町のある地域の住民になぜかシフトする。以下次号。
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