事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「殉愛-原節子と小津安二郎」 西村雄一郎著 新潮社

2013-12-22 | 港座

T02200305_0400055412771718070 「お嬢さん乾杯」(昭和24年 松竹)にはたまげた。画面に主演女優が出てきた途端に、なんというか、映画館の温度が上昇したような気さえした。映画という媒体にもっとも愛された女優とは、原節子なのだと思い知った。それほどの美貌。

監督したのが、女性を愛することの少なかった木下恵介だったのは皮肉だけれど、彼の映画的センスが、原節子をおれがいちばん美しく撮ってやる!と主張しているかのようだった。

この映画では、没落した上流階級の娘が、亡き婚約者の思い出を抱きながら、成金ではあるけれども気のいい若手経営者(佐野周二)を愛せるかが語られる。脚本は新藤兼人。

原はこの映画で、彼女の後半生を予感させるような、“気持ちが隠遁している”女性を演じている。その真逆の存在がバーのマダムを演じた村瀬幸子(この人って昔からおばあちゃんだったわけじゃないんですね)。マダムは原に向かってこうからむ。

「愛してます?そんなお上品な言葉で……」

対して原がラストで語るセリフがふるっているのだが、しかし私生活で原節子が“惚れた”相手は誰だったのか。「殉愛-原節子と小津安二郎」には、三人の男性が登場する。

一人目は姉の夫である熊谷久虎。映画監督として、そして実はファシズムに傾倒していた彼のことは一度ふれましたね?

二人目はもちろん小津安二郎。日本映画界において、黒澤明&三船敏郎、溝口健二&田中絹代とともに語られる監督&俳優のベストマッチ。

三人目については初耳だった。東宝の藤本真澄プロデューサー。この高名な製作者が、完全に隠遁した原節子の生活をフォローしていたのだ。

いまも鎌倉の寺の片隅で、一世を風靡した女優は静かに暮らしている。93才になった彼女は、いまどんな思い出を胸に抱いて生きているのだろう。

殉愛: 原節子と小津安二郎 殉愛: 原節子と小津安二郎
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2012-08-24
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あぶさん終了。 | トップ | 4月1日生まれPART6 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

港座」カテゴリの最新記事