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しかしそんな時代背景を描きながら、「トランボ」は決して告発や批判だけの映画にしていない。娯楽映画としてめちゃめちゃに面白いのだ。
だってこの映画の監督は、あの「オースティン・パワーズ」や「ミート・ザ・ペアレンツ」を監督し、あろうことか「ボラット」を製作したジェイ・ローチなのだ。批判覚悟で開き直っている。
まず、当時絶大な権力を持っていたコラムニスト(というかゴシップライター)ヘッダ・ホッパーをヘレン・ミレンが憎々しげに演じていて、彼女がこの映画最大の悪役を引き受けている。実際に、ヘッダは赤狩りの推進役だったようだ。
彼女はトランボの追放に加担し、それどころか彼の復帰を執拗に妨害する。ここでもうひとつのグループが登場する。この映画が弾むのは彼らの登場による。面白い映画をつくるためなら、政治的なスタンスなど知ったことかという連中。
B級C級映画ばかりつくっていたキング・ブラザーズという会社を経営するフランク・キング(四文字言葉を連発するジョン・グッドマンがいつものようにいい感じ)は、「トランボたちを使うと俳優たちをボイコットさせるぞ」という脅しに、バットをふりまわして激昂し(て見せ)「役者なんぞ素人でいい!どうせうちの映画はゴミだ」と開き直るシーンには笑った。
そして、「栄光への脱出」の原作をもってオットー・プレミンジャーが現れる。この、ハリウッドのタブーを次々に破ってきた監督は、ゴリゴリのオーストリア訛りでトランボを挑発する。ほぼ同時にカーク・ダグラスも、自らが製作する「スパルタカス」の脚本を依頼。
ヘッダ・ホッパーはダグラスを詰問する。
「どうしてトランボを使うの?!」
「大きなお世話だ」
と一蹴。こちらも実際にこういう人だったようです(笑)。なにしろ勝負作の監督にスタンリー・キューブリックを抜擢した人なので狂いっぷりも板についている。以下次号。
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