第22章はこちら。
神のこの凶暴さを観客に納得させるためか、この映画では神は意外な姿であらわれる。幼児なのだ。子どもだから神の無謬と矛盾しないと思わせたかったのかもしれないし、成人でのちに聖人となるモーゼとの対比をねらったのかもしれない。カトリック教徒がどう感じたのか聞いてみたいところだ。
子を失ったラムセスは、結局モーゼの申し入れどおり、ヘブライ人を解放する。しかし、どうにも気持ちを抑えられず、“乳と蜜の流れる場所”カナンをめざす数十万人のヘブライ人を追撃する。
ラムセスを演ずるのはジョエル・エドガートン。北村一輝そのまんまのルックスでスキンヘッド。狂気と弱気の共存をねらったキャスティングだと思います。でも、ファラオとして自らが神だと豪語する貫禄は、「十戒」のユル・ブリンナーにはもちろんおよばない。原題で、唯一神のはずのGodに複数形が用いられているのは、ファラオという世俗の神との対比かな。
さて、問題の紅海が割れるシーン。モーゼが祈ったら海の水が逆シャワーのように退いていく、という「十戒」並みのスペクタクルは狙わない。ま、やろうと思えばやれたんでしょうけどね(気持ち的にはカエルの襲来よりこっちに傾注してほしかったっす)。
「十戒」は、オープニングに監督のセシル・B・デミルが登場してユダヤの歴史を語る。だから、悲劇的なあの民族に、これくらいの奇跡はあってもいいだろうと観客は思う(というか画面の迫力で圧倒される)。
しかしエクソダスにおいては、物理的にこうだったらありえたかも、という前提でこのシーンは描かれる。紅海の前で絶望するモーゼ、そこへカモメの大群があらわれ、海が浅くなっていることを暗示、そして次第に……
このあたりはさすがエイリアンの監督です。もっとも、現代のCGを使ったむちゃくちゃなスペクタクルをみんな期待してたと思うけどね。なんせほら、日本映画でも「偉大なるしゅららぼん」で琵琶湖割れてたわけじゃないですか。ただし、東北人としては……以下次号。
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