PART4「伊賀の残光」はこちら。
直木賞受賞作。6つの短篇が収められています。そのなかの「逢対(あいたい)」はこんなお話。
主人公の泰郎は、役に就くために必死になるという覚悟もなく、日々算学を教えて暮らしている。近所の煮売屋を切り盛りする里という女性といい仲になるけれど、里は泰郎とは身分違いだからいっしょになるつもりはないとそっけない。彼女は妾として暮らした過去をもっていた。
泰郎の友人の北島は、就活に明け暮れている。毎日のように有力者の家を訪れ、顔を覚えてもらうのに懸命だ。冷たくあしらう権力者が多いなか、ある人物だけは厚遇してくれる。しかし、その理由は……
泰郎が武士を捨てる覚悟をするのは、武家というものへの幻滅と、里に代表される女性の強さに感化されたから。この短篇だけでなく、この作品集に収められた作品に登場する女性たちはみんなキャラが立っていてすばらしい。男社会である武士への有形無形の批判になっているのね。直木賞納得。
PART6「約定」につづく。
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