第三十二回「応酬」はこちら。
前回の視聴率は15.8%と予想よりも下がった。お盆の定例であると同時に、リオオリンピックが影響しているんでしょう。他の番組も軒並み下がっている。
4年に一度の、あの祝祭に勝つのはなかなか。女子レスリングの軽量級の金メダリストが、インタビューで上唇をぴくぴくさせながら答えているのを見て、ああ人間が本気で泣くのをこらえるときって、確かにこうだよなあと感動。これにフィクションが勝つのはしんどい。
でも今回はフィクショナルに突っ走った回。史実はどうあれ、三谷幸喜が造型した石田三成(山本耕史)なら、こうせざるをえなかったであろう展開が描かれている。
もはや1599年のお話なのだから関ヶ原前夜。専横がいちじるしい家康に三成は危機感をおぼえ、政治的には前回で圧倒されたものだからテロに走る。しかし人望のなさ(とお腹の弱さ)は決定的で、豊臣恩顧の大名たちが次々に徳川についてしまう。
伏見の徳川屋敷が、宇喜多(だっけか)の屋敷と隣り合わせで、お互いが不穏な動きを見せる……ってこれは歴然と黒澤明の「椿三十郎」じゃないですか(笑)。紅い椿や白い椿が流れる川が間に流れている……わけはないです。
勢いにのる徳川と、追いつめられる石田。こういう構図にだけはするなと主張した大谷吉継の懸念したとおりの展開になってしまう。こういうにっちもさっちもいかない状態になると薄笑いをうかべる昌幸の出番。
まるで学級会のようになってしまう(みんないちいち名乗るのがおかしい。挙手まではしませんが)軍議の場を、不満げな加藤清正(新井浩文)を蹴散らして昌幸がイニシアチブを握る。
「あれは、さみしい男なんじゃ」
と秀吉が予言したように、佐吉(石田三成)は孤立していく。義は三成にある。それは確かだけれど、お味方するのがあの人とあの人とあの人では(笑)。
本来であれば前田利家がそこをうまくまとめるはずだったのに、もう彼に命は残されていない。思えば椿三十郎における伊藤雄之助の家老が、みずからを
「乗った人より、馬が丸顔」
と笑わせて三十郎(三船敏郎)の放浪を不可避のものだと描いたような“いい意味での年寄り”はいなくなった。あとは激突あるのみ。今回は16%台後半と読みました。
第三十四回「挙兵」につづく。
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