リリー・フランキーが登場したとき、「あ、これちょっと違うんじゃないか」と思ってしまった。わたしは彼のファンだから登場自体はうれしい。でもこのシリーズとは合わないんじゃないかと。
古沢良太が脚本で、東映三角印の映画だから、どうしたって作風としては「相棒」に近くなるのに、常に想定外の演技をするリリーがいて大丈夫なのか?
そんな心配をするほどやわなシリーズではございませんでした。同僚が「今年見たなかでいちばんよかった」とつぶやいたのもうなずける。そうなのか、と急いで劇場へ向かった甲斐あり。
おなじみススキノの名無し探偵のお話。携帯電話を持たず(あ、違った。今回からはさすがに持ってはいるけれども携帯はしないんですって)、クルマの運転もできず、原作ではウォシュレットでしか大きいほうができない探偵。ハードボイルドとは、やせがまんが肝心ですからね。
で、今回は北海道らしさが前2作よりもぶちこまれている。毛ガニにしこまれた覚醒剤、日ハムの栗山監督と札幌市長の対談の場が修羅場と化すサービス。大好きな札幌の、あのススキノの風情がまずうれしい。なにより、徹底的に雪があるのよ街に。特別出演の原作者の東直巳が次第に仙人みたいになっているのもサービスですか。
キーとなるのは北川景子。彼女への探偵の優しい言葉によって大騒ぎになる。とても納得できる話。ネタバレになるのでなかなか言えないけれども、病院から出てきた大泉洋の吐き捨てたセリフには確かに泣けました。
そして、やはりこのシリーズに不可欠なのは相棒である松田龍平。過剰になりがちな探偵を、彼のコメントと視線が(いろんな意味で)救う。そうか、彼は違うステージに旅立つんだな。学者であるニュージーランドでの彼の将来に乾杯だ……エンドタイトルが始まっても絶対に席を立ってはいけません。
確実に今回モデルにしたのは、オリジナルの「ブレードランナー」だと思います。レイチェルの行く末を知りながら、「知ったことか」と突っ走るデッカードと名無しがダブる。ハリソン・フォードと大泉洋は、だいぶイメージが違うけれども。
いやそれにしても一作目にカルメン・マキ。二作目がムーン・ライダーズ。そして今回ははちみつぱい!って選曲はなんだあ?
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