出版社のさえない営業マンとして松田龍平が登場したとき、誰もがびっくりしたはずだ。あまりにも亡き父親にそっくりだったので。
これまでだって確かに似ている親子ではあったけれど、もうそんなレベルではない。少し猫背で、長身をもてあましている感じが「野獣死すべし」あたりの優作そのまま。
で、龍平はそれでもかまわないと開き直ったのだと思う。それほどに、この作品における松田龍平の演技はすばらしい。あの父親のことだから、そのことに喜ぶよりも先に嫉妬したことだろう。父親に対抗心を燃やさせるレベルまで来たぞ龍平。
三浦しをんの原作は未読。辞書づくりに題材を求めるとはさすがだ。しかし映画化はかなり困難だったはず。「はじめに言葉ありき」とするストーリーは、たとえば
「『右』をどう定義するか」
という部分などでは小説の方がうまく描きやすいし、月の光の下に登場するヒロイン(その名も香具矢)を、実際に登場させるのもきつかったはずだ。
そこを「川の底からこんにちは」で満島ひかりを演技開眼させ(ついでに妻にしてしまった)石井裕也は、的確なキャスティングと丁寧な演出でうまくしのいでいる。
……とか冷静ぶって語ってますけどね、途中からわたしは涙ボロボロだったのである。
他人とうまくコミュニケーションをとることができないことも影響して猫背だった男が、一生の仕事として辞書づくりにまい進するなかで姿勢がよくなっていく。用例採集という形でしか恋愛を実感できないあたりの不器用さは、典型的な“聖なる愚者”のパターン。だから観客はみんな彼を応援する。そしてその恋愛は……
宮崎あおい、オダギリジョー、加藤剛、八千草薫、伊佐山ひろ子(!!)、渡辺美佐子など、役者がみんないい。しかも、意地悪な石井監督は、彼らの老いもまた、うまくドラマに活かしているのだ。必見ですよこりゃあ。
まあ、実際には所用があったついで。
でも二本映画を観たらその“所用”に遅刻。
ふ。いいのさ。そんなヤツなのさ<(_ _)>
4月より劇場及びロビーで予告流れてます。
じっくり待ち、その間、『探偵はBARにいる2』
『人生、ブラボー!』『世界にひとつのプレイブック』
『花のあと』『男はつらいよ 柴又慕情』『追憶』
『オブリビオン』『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』等々
様々鑑賞するつもりです。
松田龍平、TUYの「まほろ駅前番外地」も味有ります。
山形、天童、東根に乱立大丈夫なのかなあ
幸福。加藤剛の憔悴っぷりはしゃれにならないし(健康食品の
CMに出ててだいじょうぶかな)、渡辺美佐子と伊佐山ひろ子
をあれだけリアルに撮ったのはわざとじゃろ。
にしても伊佐山ひろ子はねー、村川透監督の
「白い指の戯れ」をはじめとして、70年代のこしゃくな
映画にはかならず出ていた印象。
いまだに生意気な感じがうれしかった。
「藁の楯」も「プレイブック」ももちろん観ますよ-。
あ、それからイオンの特集も組んでるんでよろしく。
しをんさんの作品には、欠かせない人ですが、まさか龍平ちゃんが来るとは思わなかったなあ。
父親が嫉妬する!
うまい!!
それすごくわかります。
意識するなっって言っても、そりゃ無理ってもんですが、さらっと受け入れ、それでいて流すとことはうまく流す。
父親よりも幅は広いし、安心できる。
あとは長生きすることが大事なことかもですね。
あ、無口だったのは、あたしの相方で、一応娘を嫁に出す父の立ち位置?
「なんであんなにしゃべんなかったの?」と聞いたら、「なんで俺が気使って、しぇべらんなんねの?」という始末。
式はしないというので、入籍だけのようですが、一応相手のとこにも挨拶行かないとねえ。
そんときくらいは、しゃべってもらわないと。
龍平君の強みは主役でも、わき役でも行けるところでしょうね。
有川浩といい、今は「女流作家のお仕事シリーズ」が流行りなんでしょうか
(男性作家だとせいぜい警察モノ、ですから)。
ちなみに、「まほろ」は映画より、ドラマのほうが面白かったです。
のか(笑)
それもわかるなあ。たった今まで義父の27回忌に
出てたんだけど(結婚した翌月に亡くなった)、
「娘さんをください」
と申し出たときに、向こうもなにを言っていいのかわかんなかった
んだと思う。
だから満州の話になったわけで。
とりあえずその男を殴らなかっただけでもめっけものでしょう。
“大きい”娘さんを、きっとそのことだけでも溺愛してる
はずだから。そんな気がする。
あ、松田優作の話になんなかった<(_ _)>