第壱部はこちら。
第弐部はこちら。
第参部はこちら。
第四部はこちら。
あー、ついに終わってしまった。悲しい。「陋巷に在り」(全13巻)のように、ひょっとしたらいつまでも終わらないんじゃないか(笑)と思っていたのに。まあ、第四部で主要なメンバー(曹操、劉備、関羽、張飛)が退場してしまったので、そういうわけにはいかないのだが。
でも、(なにしろ化けものぞろいだから)諸葛孔明が一歩ひいた形になっていたのに比べ、完結編だけに孔明の独壇場なのはうれしい。ましてや、彼が実際に蜀軍をひっぱって南へ北への大活躍。三国志に熱中するファンの気持ちがようやく理解できました。
歴史知らず&三国志知らずのわたしなので、
「泣いて馬謖を斬る」
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」
を単に言葉でしか知らなかったけれど、そうかこの巻のこういうエピソードが背景にあったのかと得心。とても、お勉強になりました。
実は三国志自体は孔明の死後も語られているとのこと。しかしこの小説がひたすら諸葛孔明という人物の奇矯さに依っていたことを考えれば、確かに彼の死とともに幕を引くという選択は正しかったのだと思う。これだけのボリュームで諸葛孔明を描きながら、彼の子についての描写がほとんどないことや、みんなが好きにならずにいられない妻の黄氏の行く末も語られないあたり、徹底している。
キャラを思いっきりデフォルメし、ギャグ満載でありながら、化けものキャラたちと作者の距離は常に均等だ。酒見賢一が博覧強記であることは歴然だし、歴史をもっともっと長いスパンで、遠い遠い場所から見ているあたりも含めて、こりゃ司馬遼太郎のやり方じゃないかと気づく。
となれば、酒見版「項羽と劉邦」や「韃靼疾風録」を読んでみたくなる。酒見が描く、項羽やヌルハチの物語……考えただけでゾクゾクする。大期待。