事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「たましいのふたりごと」穂村弘・川上未映子 筑摩書房

2017-10-06 | 本と雑誌

村上春樹に果敢に攻撃した(笑)川上未映子が、インテリのび太くんとでも言うべき穂村弘と対談するとどうなるか。いやもうこれが金言至言のオンパレード。ちょっと紹介します。

川上:不思議なのは、親子だと子どもが成長したら家を出ていくわけですけど、夫婦はなんでずっと一緒に住んでいるんだろう。

穂村:かなりラディカルなところに踏み込んでるね(笑)。

川上:最近、卒婚って流行ってますけど、これってすごく理にかなってる。

穂村:たしかに、周囲で五十代とかの離婚は増えてる。

川上:子どもが成長して家を出てくと、もう二人でいる理由がなくなるんです。

……旦那の阿部和重はハラハラしているかも。

穂村:老化について思うのは、あるひとの表情のうちのひとつがまず老いたと気づくんだよね。100個表情があったとしたら1/100だけど、それが2/100になり3/100になり、半分くらいになると、誰が見てもはっきり老けたって印象になる。

……うわあこれは確かに。

川上:「昭和」と言えば、「昭和体型」(笑)。平成生まれの子はみんな足が長くて、同じ日本人って思えない。でもたまに足の短い子どももいて、ちゃんと昭和が生き延びてるなと、思っちゃいます(笑)

穂村:昭和までは元号で考えたけど、終わったら西暦になったよね。子どものころ、祖父母は明治生まれで、明治・大正・昭和と三代生きたから年寄りなんだと思っていたけど、このまま行くとぼくらも昭和・平成・その次と三代生きるわけだよね。そのとき、明治生まれ=年寄り、みたいな感じで、昭和生まれ=年寄りって思われるんだろうね。

……膝を打ちました。実際には打たないけど。なるほど次の元号生まれの人間にとって、昭和生まれはわたしが爺ちゃんに対して抱いていたイメージをもつのか。まあ、昭和が64年までつづいたのが異例だとしても、改元はまもなく。考えちゃうな。以下次号

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青山文平でいこうPART5 「つまをめとらば」 文藝春秋

2017-10-06 | 本と雑誌

 

PART4「伊賀の残光」はこちら

直木賞受賞作。6つの短篇が収められています。そのなかの「逢対(あいたい)」はこんなお話。

主人公の泰郎は、役に就くために必死になるという覚悟もなく、日々算学を教えて暮らしている。近所の煮売屋を切り盛りする里という女性といい仲になるけれど、里は泰郎とは身分違いだからいっしょになるつもりはないとそっけない。彼女は妾として暮らした過去をもっていた。

泰郎の友人の北島は、就活に明け暮れている。毎日のように有力者の家を訪れ、顔を覚えてもらうのに懸命だ。冷たくあしらう権力者が多いなか、ある人物だけは厚遇してくれる。しかし、その理由は……

泰郎が武士を捨てる覚悟をするのは、武家というものへの幻滅と、里に代表される女性の強さに感化されたから。この短篇だけでなく、この作品集に収められた作品に登場する女性たちはみんなキャラが立っていてすばらしい。男社会である武士への有形無形の批判になっているのね。直木賞納得

PART6「約定」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする