オンエアの日、いつもテレビを見る習慣がないのに(ほんとよ)、たまたま見ていて、驚いた。ものすごく上質のドラマだったので。
気配はあったの。「カーネーション」でブレイクする前の尾野真千子をヒロインに起用したセンスがいい感じだし(というよりこの好演が朝ドラへの抜擢の決め手だったのでは?)、むかしやんちゃだったが(ある理由で)島にひきこもっている老境の作家、こんな役は確かに原田芳雄しかいないと納得できる。つまり傑作の匂いがプンプンしていたの。
しかしドラマはその予想のはるか上を行った。死への怖れを、誰よりも感じていたのが若き編集者の方だったあたりのどんでん返しと、作家がラストで得たものを一発で視聴者に理解させるセリフが泣かせる。
特に、命の象徴である火の魚(金魚)をめぐるやりとりが、そのままうろたえる作家、規格外の量の薔薇、「わたくし、もてた気分でございます」という尾野のセリフにつながるあたりの周到さはどうだろう。原作の室生犀星とは教科書に出てくるだけの存在じゃないんだな。
冷静ぶってますけれど、んもうボロボロ泣きながら見てました。違う時間に妻も見ていたようで(ディスカスで借りたDVDで見直してました)、彼女もボロボロ。脚本渡辺あや、演出黒崎博、そして地方局の底力を見せたNHK広島放送局に感服。