事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「狂った野獣」(1976 東映)

2013-06-15 | 邦画

160572_400_2 公開されたのが1976年の5月だから、わたしが酒田中央座で観たのは高校二年生のときだ。ようやく東映作品にめざめたころだったので、むちゃな映画だなーと思いつつも、これが東映らしさかな、と納得していた。

とにかくこのころの製作事情は劣悪で、予算が少ないうえに撮影日数も短く、エース格だった深作欣二と中島貞夫の不満はたまりまくっていた。そこで出来上がったのが深作の「暴走パニック大激突」「資金源強奪」であり、中島のこの作品だったわけ。

とにかく開き直り、キャストもスタッフも暴走。だから今見ると、スマートさはかけらもないけれども、とにかく画面から熱さだけは伝わってくる。

熱さの代表が主演の渡瀬恒彦。同じ年の「実録外伝 大阪電撃作戦」(これも中島貞夫監督作品)でも、主演の松方弘樹を食いまくって狂犬ぶりを発揮していたが、テストドライバーくずれの宝石泥棒を演じたこの作品では、野獣であるべきバスジャック犯人たち(川谷拓三、片桐竜次)に「止めたってくれやぁ」と逆に懇願されるくらいの狂いっぷり。

この人はとにかく運転好きで、だからバスを横転させるのもスタントなしで自分でやっています。そんなことだから「北陸代理戦争」で大けがしちゃうことになるのですが。

当時は、東映の大部屋にいた悪役たちが「ピラニア軍団」を結成して人気が出始めたころ。この映画でも、川谷、片桐、志賀勝、岩尾正隆が怪演しており、「高知を出て来てからなにもいいことがなかった」と、バスの中で「南国土佐を後にして」を絶唱する川谷が泣かせる。

そしてそして、どうみてもやくざ顔の室田日出男が白バイ警官を演じていて、ダーティハリーばりに歩道橋からバスの上にダイブし、失敗してあっけなく死んでしまうあたりで本領発揮。

金がないことを逆手にとって、東映京都撮影所のなかをバスが暴走する(だから舞台は京都だったんだと思う)悪のりぶりと、ほんとうの野獣とは誰だったかがラストで明らかになるつくりに満足。中島の怒りは、実は劣悪な環境しか用意できない会社に向かっていたのかもしれないですけどね。

ちなみに、バスジャックのニュースを伝えるのはアフロ時代の鶴瓶です。

コメント
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