「テレビの人」篇はこちら。
「歳末助け合い募金が集まったんで保管してくださーい」
夕刻、生徒会担当が事務室にやってきた。事務職員ふたりとも手が放せなかったんで
「金庫、開いてますからどうぞ入れてくださいね。」と相方が。
「………………あれ?開かないですけど」
「え?」
ふたりで金庫の前で苦闘しているみたい。わたしも頭の片隅で参戦はしてるんだけど(笑)。
あ。まさか……
「お前『まわすな』って書いてあるダイヤルを、まさかまわしてないよな」
「……………………い、いやぁ」
こいつはぁ(T_T)
ま、わたしもいけなかったのである、転勤して2年目なのに、鍵以外の金庫の開け方を知らないまんま放置していたのだから。ガムテープかなんかでべっとりふさいどけばよかった。汗かきながらダイヤルと格闘し、予想どおりギブアップ。
「しょうがない。鍵屋を呼ぼう」
学校にはかならず金庫がある。現金などほとんどないにもかかわらず。それは指導要録や卒業台帳など、ガチガチの法定評簿がてんこ盛りにあるから。要するに“燃えさせない”ことが主眼。
盗難予防を考えるならもっとハイテクなシステムにしなければならないはずだけど、警備保障をかいくぐって指導要録を盗みにくる奇特な泥棒ってまずいないし。
だから、学校にはガタイがでかいわりには、鍵がひとつ、ダイヤルがひとつのコンビネーションのシンプルな金庫が多い。っていうかわたしが勤めてきた学校はみんなそうでした。廃校になったら処分に困るだろうなあれって(だからそのまんまってことが多い)。
うちの事務室にあるのもコンビネーションタイプ。でも、基本的に現金をおかないのが学校ってものだから、サイズはちっちゃい。背丈は1メートルぐらいかな。かなり昔っぽいルックス。
さて、鍵屋は翌日にやってきた。以下次号。