映画「ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」感想

 本日、映画「劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」を鑑賞してきた。
 13・14日にすでに「先行上映」されているものの、正式には今日が公開初日。最近の映画「ドラえもん」は公開翌日の日曜日に観ており、映画を初日に観に行ったのは実に久しぶりだ。



以下、感想。ネタバレあり要注意

 さて、映画本編の感想だが、素直に「面白い」と楽しめる出来だった。
 今年秋から、テレビアニメ本編で「妖怪四十七士」探しの新展開が始まっており、この四十七士が映画にも登場して鬼太郎と共に戦う事が大々的にアピールされていたので、もしかしたら今回の映画は四十七士それぞれに適当な見せ場を与えるだけで中身のない作品になってしまうのではないかと、ちょっと心配していたのだが、無駄な取り越し苦労だった。

 今回の映画は、「ゲゲゲの鬼太郎」という作品の基本に立ち返って、鬼太郎&ねずみ男の二人をメインとして描いており、四十七士も全員登場してはいたが、役目は鬼太郎に力を送る事であり、特に四十七士メンバーにスポットが当てられてはいなかった。それどころか今回は妖怪横丁のレギュラーメンバーですら、出番はそれほど多くない。
 もちろん、劇場版は一種の「お祭り」だから、お馴染みの妖怪達にそれぞれスポットが当てられる場面はあったが、あくまで中心は鬼太郎とねずみ男であり、それが全編通して徹底されていたために、一本芯のある作品になっていたと思うし、それで作品にのめり込む事が出来た。

 主人公の鬼太郎が活躍するのは当然だが、テレビでは現シリーズで過去作より多少出番が減った感のあるねずみ男がいきいきと動いているところが観られたのは、実に嬉しかった。
 例によって、敵になったり味方になったりと変わり身の早いところは健在だし、その行動原理も単にいい加減なのではなく、観ていてねずみ男に共感できるように描かれており、上手い作り方だ。また、お馴染みの屁攻撃に加えて、テレビ版ではお目にかかれない痰攻撃(観ていて、たんたん坊先生を思い出してしまったが)まで披露するなど、戦闘面でもしっかり活躍していたのもポイントだろう。
 それにしても、骨女・寝太りに続き、ねずみ男が女性にもてるとろくな事がないお約束は、映画でも健在だったか。まあ、今回はそれが話の軸の一つになっていたわけだが。


 本編のストーリーは、前半・後半と大きく二つに分ける事が出来るが、プロローグも含めた前半部分の描写の多くが後半部分への伏線になっており、特に前半・後半のつなぎとなる部分での伏線の回収が鮮やかで、構成がよく練られている事が伺える。
 ヤトノカミの一味全員が正体を現す場面は、観ていて本気で「やられた、騙された」と思ってしまった。
 後から考えれば、先生だけ華の事を覚えているのは変だし、華が家に戻った時の京夜の態度は明らかにおかしいのだけれど、まさか二人とも人間でないとは思わず、「京夜も後から記憶を操作されてしまったのだろう」くらいに考えていたので、京夜=ヤトノカミの正体を現した時には、「そうきたか」と唸ってしまった。
 もっとも、この辺の展開はパンフレットにしっかりと書いてある。なので、今回はパンフレットを上映前に読まなくてよかったと、心から思ってしまった。


 また、戦闘面の描写もさすがに劇場版だけあって、見応えある場面が多かった。
 学校の場面で登場した半透明巨大鏡爺は、見た目が新鮮でユニークだったし、序盤での「つかみ」として不気味さをよく表現できていた。また、クライマックスの地獄究極奥義の場面は炎の迫力が満点で、冬なのに観ていて暑苦しくなるような、妙な臨場感を覚えた。
 この場面で、雪女の葵ちゃんが「暑い、暑い」と胸をはだけていたのは「大きいお友達」へのサービスだろうか。

 細かいところでは、「土に埋めて毒を抜く」ネタが出てきた時には、第4作・第9話「爆走!鬼太郎機関車」を思い出して懐かしくなった。
 本放送当時にこの話を観た時には、「「まぼろしの汽車」が元ネタなのに、土に埋めるなんて全然原作と話が違うじゃないか」と、半ば呆れてしまったものだが、それから12年経って、また毒を抜く為に鬼太郎を埋める場面を観る事になろうとは思わなかった。今思えば、「爆走!鬼太郎機関車」の唐突な毒抜きも、いかにも雪室俊一脚本回らしくて味わい深い。


 ちょっと話がそれてしまった。
 この他にも色々とネタが仕込まれていたし、気付かずに私がスルーしてしまったネタもあるかもしれない。じっくりと画面の隅々を見返す為に、また劇場に足を運びたい。それも、なるべく「別の地域」の映画館で見たいものだ。現実として、一番手軽なのは関西地区か。

 地域別のネタは、中部地区ではよりによってご当地ゲストが中日ドラゴンズの「ドアラ」だった。九州バージョンだと東国原知事本人が登場して声もあてているそうだが、こちらはドアラなので、当然セリフはなし。
 ナゴヤドームでドアラが登場する場面は、テレビでも予告で流れていたので事前に分かってはいたが、実際に観てみると、この部分だけ妙に浮いている。しかも、BGMは「燃えよドラゴンズ!」なので、名古屋と言うよりはどこか異世界に迷い込んだように見えてしまった。

 他に、妖怪横丁へ帰る灯籠を探す場面も中部地区版になっていたが、前述のドアラ登場部分も含めて、「地域別」のつなぎ目部分は「ああ、ここからここまでが中部版だな」と、結構わかりやすかった。
 6地域、どのバージョンをつないでも前後の話が繋がるようにとスタッフが苦心したのだろう。他地域バージョンも全て観たいものだが、ソフト化された時は全地域版が収録されるのだろうか。関東や関西ならともかく、北海道や九州までは観に行けないから、収録してくれないと困る。



 最後になったが、本編前に流れた「ゲゲゲまつりだ!! 五大鬼太郎」についても触れておこう。
 と言っても、特にストーリーはない超短編だが、歴代の鬼太郎が一堂に会してしゃべっているのを観るだけで十二分に楽しい映像だった。「父さんは変わりませんね」なんてセリフは、この「五大鬼太郎」ならではの重みのある一言だ。
 セリフと言えば、四期鬼太郎が次回予告の決めゼリフ「君の後ろに黒い影!」を言ってくれたのは嬉しかった。せっかくだから「扉の向こうで何かが起こる」も聞きたかったが、さすがにこのセリフを組み込むのは流れとして無理があったか。
 最後は五人揃っての「リモコン下駄!」で締めていたが、一期・二期の鬼太郎がセリフとして「リモコン下駄!」と叫んだのは初めてではないだろうか。その点でも、貴重な映像だ。



 繰り返しになるが、今回の「日本爆裂!!」は素直に楽しめた面白い作品だった。
 ストーリーも盛り上がりのある内容だったし、ゲストキャラに「声優初挑戦!!」などと言う芸能人を使っていなかったのもよかった。ベテラン・中堅の実力ある声優が多数出演していたので、作品本編に没入する事が出来たし、声の演技も十分に楽しめた。
 少なくとも、今もテレビ版「ゲゲゲの鬼太郎」を毎週楽しんで観ている人には、迷わずお薦めできる作品だ。
 ただ、四十七士の活躍を期待して観に行くと、ちょっとがっかりするかもしれないが。個人的には、出番はのくらいでもよかったと思うが、横丁レギュラー以外で夜道怪にしかセリフがなかったのは残念だった。葵ちゃんに期待していたのだが。

 あと1クールほどでテレビの2年目も終わるが、もし「3年目」があるのなら、映画の新作もまた作って欲しいものだ。
 まあ、時系列的にテレビ版第100話の後に来ると言う今回の劇場版で四十七士が揃っておらず、パンフレットに「映画で覚醒していない妖怪はこのあとテレビで覚醒するぞ」と書いてあるので、ほぼ「3年目もあります」と言っているようなものだが。
 とりあえず、来年3月までに確実に描かれるであろう、アカマタや輪入道の覚醒回が楽しみだ。
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