▼70年生きて来て、この国に生まれて心底よかったと思うことは、戦争をしない国だということだ。だが、2012年4月27日、自民党は独自の「憲法改正草案」を提出した。
▼その中身は【国民主権】から【国家主権】へと大きく変わる内容だ。大変なことが起きようとしているのだ。現憲法の主役は国民だが、主役が国家となってしまえば、憲法を守らなければならないのは国民になってしまうからだ。
▼(現行憲法)第99条=天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。
▼(改正草案)第102条=全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。2・国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
▼憲法とは国家権力の暴走から国民を守るためにある。国民に憲法遵守の義務はないのだ。アベ総理は憲法の精神を無視しようとするから、我が国の8割もの憲法学者から、憲法解釈が間違っているといわれるのだ。
▼さらにいえば、アベ総理は【憲法破壊主義】の首謀者なので、2017年に施行された「テロ等準備罪」が適用されるというのが私の解釈だ。だが、アベ総理の解釈では、間違っているのは憲法学者であるというから、我が国は「アベコベ」になってしまうのだ。
▼改正草案では、憲法遵守の範囲から「天皇」が消えている。天皇の役割はどこへ行ったかというと、第1条に新たな地位を与えられている。
▼改正草案第1条=天皇は国家元首であり、日本国および日本国民統合の象徴であると。天皇は憲法遵守の対象から外され【国家元首】とはどんな役割を与えられるというのだろうか。
▼憲法は遵守しなくてもいいから、国家元首として何かの責任をとる存在と化すのか。今上天皇が「生前退位」を発表した。この異例の談話を「お言葉」という、奇妙な日本語で政府は処理した。
▼「お言葉」とは、私の世代では聞いたことのない「天の声」というものではないかと考えている。天皇は、自分の新たな役割が、非常に重荷だと感じたから耐えられなくなり「お言葉」を発したのではないだろうか。
▼もしかして、天皇のお言葉に秘められた本意は「自民党憲法改正草案を国民に学んでほしい」という意味なのではないかと、最近の私はそう妄想している。
▼詩人とは、言葉に魂を入れる仕事だと私は考える。詩人谷内修三著【私人が読み解く自民党改憲案の大事なポイント】には、改正草案は【でたらめな文体】と【ずるい文体】をかきまぜて【あいまい】な部分を多く作り出していると指摘する。
▼さらにこれから先、改憲問題がもちあがったとき、どんな問題があるか、テレビはやはり報道しないだろう。報道しないことで、既存の「多数意見」がそのまま「多数派」として通ってしまう。報道しないことは「中立」ではなく「議論」の否定「民主主義」の否定なのであると言い続けようと主張する。
▼アベ総理は憲政史上最長で最強の宰相として、権力の座を盤石のものにしようとしている。自民党総裁3選を果たした時「憲法改正」を声高らかに宣言したからだ。
▼詩人は「憲法改正」についてテレビを始めとするメディアが、あまり伝えていないことを懸念する。【とても静かだ。この静けさが私にはとても異常に感じられる】と。さらに、何かが勝手に動いていることの不気味さを訴えている。
▼総理自身嘘をつく国家は、不気味である。その不気味さが勝手に動いているということがなおさら不気味なのだ。憲法とはその不気味さを国民が監視し、停止できる権力のことだと思うのだが。
▼自分の周囲で憲法改正の話をしよう。これが戦争しない国に生まれた、憲法への恩返しだからだ。