▼シンガー・ソングライターの吉田拓郎(76歳)が、7月21日のテレビ出演を最後に、引退を決意するようだ。
▼拓郎は私より2歳上だ。彼の曲は鼻歌が似合った。♪「結婚しようよ」「旅の宿」「シンシア」「今日までそして明日から」。数えればきりがないが、よく口ずさんだ。
▼それぞれの曲に、私なりの青春のちょっぴり感傷的な思い出があるからだ。拓郎と同年で、デビュー時からフアンクラブに加入していたという私の友人がいた。
▼彼に誘われて拓郎のコンサートを、秋田県まで観に行ったことがある。そこで拓郎の真の魅力に触れた。その夜、ワインバーで飲んで拓郎の魅力について語りあったのは、今でも楽しい思い出だ。
▼友人は当時教育関係の高い地位にいたが、音を隠し撮りしてCDにしてくれた。私の指笛がやけに鳴り響いていた。
▼その友人も拓郎と同じ癌を患い、前年に満開に桜の下でビールを飲んだのだが、翌年の桜の満開の時期に、一足先に旅立ってしまった。
▼彼の家の居間は、太平洋が一望できる大きな窓がある。夕方、左の岬から拓郎の歌の中にもある“苫小牧発のフェリー”が現れる。
▼友人は拓郎の歌で♪「落陽」が一番好きだったのを、あらためて思い出した。
▼7月21日はその友人宅で、最後の拓郎のテレビ出演を観ようと思う。彼が大好きな冷たいビールで乾杯しながら。
▼「END」とは終わりという意味だと思っていたが、最近「目的」という意味もあるということを知った。拓郎がテレビから消えるが、それは何かの始まりなのだと理解したい。
▼「落陽」の歌詞の中に♪「この国ときたら賭けるものなどないさ」というフレーズがある。参議院選挙が盛り上がらない。拓郎節がやけに身にしみてくる。